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第三章

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 トッポさんからの話のあった後も三日間は何事もなく、素材の納品や一角兎等の駆除をする依頼をこなし両親が帰ってくるのとショウ達の帰省日がほぼ一緒の日となるのが分かっていたので、とりあえず、帰ってくる日は依頼を入れずゆっくりすることにしようとギルドの依頼板の前で話をしていると、たれ目でちょっと小太りの人がやってくる。 
「話の途中すまないな。ちょっと君らにお願いがあるんだ。私はギルドの職員でザギーと言うんだが、君達に依頼をお願いしたいんだ。」 
「依頼ですか?それは構いませんけど、どういった内容です?」 
「配達依頼をお願いしたいんだ、この都市から一日と半日ぐらい行った先の場所にここの守備隊の見張り台があるんだが、そこに調味料を持っていって貰いたいんだ、普段なら交代の時に持っていくんだが忘れたらしいんで持って来てほしいとね。モンスターとかもほとんど出ない場所だから報酬も安くてね。お願いできそうなランクの冒険者がいないというのもありどうしようかと思っていたら、君達を見かけたんでお願いしたってわけさ。」 
気候的に熱くなり始める時期ではあったがもの凄く汗をかいており、タオルで顔に首を拭きながら言ってくる。そのタオルがあっという間に湿っていくのが分かる。あまりお近づきになりたくない感情になり、早く話を切って去ろうと思ったので、 
「渡してくるだけの依頼ならいいですよ。な、亮」と聞くと、 
「うん、往復で三日なら見送りに間に合うように帰ってくればいいしね。」と亮も賛同してくれたので、 
「その依頼受けますね、今からですか?」と受領の返事をすると 
「いや、明日の朝またここに来てくれないか。昨日の夕方に来たからまだ今から準備するものがあるんでね。」 
「分かりました、また明日朝伺います。」そう答えるとありがとうと言ってザギーさんは去っていくのであった。 
俺達はギャリソンさんに通信の道具を使って依頼の内容を話し暫く離れることを報告し今日の依頼を消化しに行くのだった。今日受けた依頼は薬草を取ってくるというものにしたのだった。 
 
 ザギーは別の部屋に入っていくとそこには冒険者が三人おり話しかけてくる。 
「どうだうまくいったか?」三人の内一人が声をかけてくる。 
「ええ、うまく行きましたよ。明日の朝出発して貰うようになっています。そして仕掛ける日の昼過ぎに着くような感じになると思います。」 
「そうか、じゃあ俺の方は呼び掛けておく。それとあいつもそいつらがついたら開放して一緒に始末となる。そして、何事もなかったようにお前がサブマスに着くって言う算段だ。」 
「分かってますよ。余計なことをしなければよかったと後悔しながら言ってもらいましょう。」 
「ちげえねぇ」「ああ」そう相槌をうってくる。 
「とりあえず、準備だけは怠るなよ。」そう言うと各々部屋から出て行くのであった。 
 
 俺達は宿のルラさんに依頼の内容を簡単に説明し、ギルドに赴き荷物を預かり出発すると、ビリーさんと出会う。 
「ビリーさんお久しぶりです。」「お久しぶりです。」 
「お、利久に亮か、今日はどこに行くんだ?」と質問されたので、ギルドの依頼で荷物を見張り台に渡しに行くことを説明する。 
「そうか、あそこはとりあえず置いてある見張り台だが、一応人は置いてあるもんな。まぁ、モンスターもほとんど出ないとは思うが注意が必要だぜ。その途中にある草原で何人か死んでるからな。しかも、遺体が全然見つからないって言うおまけ付きだ。」 
「そうなんですね。注意して往復します。あ、それと明後日には父さん達が帰って来るって言ってましたから、もし父さん達の方が早かったなら俺達の事を伝えておいて下さい。一応、宿のルラさんにも伝えてはいますけど。」 
「ああ、分かった。気を付けて行けよ。」 
と簡単な会話をして出発するのだった。門の検問は依頼書だけを見せれば簡単に出れるようになっているのと、ほぼ顔パスに近い状況となっていたのだった。 
 
 その日はいつもより人が出て行くのが多くビリーは疑問に思い知り合いの商人に聞いてみる。 
「なぁ、今日はいつもより人の出入りが多いようだが何かあるのか?」 
「ン、ビリーかここだけの話だけどな、ウヲンゴって知ってるだろう。」 
「あぁ、付き合いはないが知らないってことはない。」苦虫をつぶしたような顔になり応えると、 
「そんな顔するなよ、あいつの息がかかった奴が出て行ってるようだ。」 
「そうなのか、しかし、多くないか出て行くやつ。」そう疑問を投げかけると、 
「大きな声で言えないから耳を貸せ」そう言うので屈んで聞くと 
「ウヲンゴの奴、どうやら誘拐したり禁止薬物を販売してたらしくてな、それをつぶされたらしい。まぁ、誘拐した人物がお偉方の子女だったのでサブマス自体が動いていたしそれを手伝った二人を教育するらしいんだ。だから、あいつはギルマスが不在の時と所属している組織のリーダーがいない時を狙ったようだ。まぁ、サブリーダーぶっているけど金で繋がってるだけみたいだけどな。」 
「そうか、その邪魔した奴って言うのは誰なんだ?」 
「詳しくは聞いてないが、一三か一四ぐらいの二人って聞いたな。たしか、一人は狼人だったと思うが、、、また聞きだから怪しいけどな。」その二人の事を分かったのか、 
「情報ありがとうな。俺はちょっと用事を思い出したんで行くわ。」そう言うとその商人から離れて行き急いで、セクシーダイナマイツに行き、 
「ルラいるか?」 
「おや、どうしたんだいそんなに慌てて、珍しい。」 
「ああ、大変なことが分かった。さっき聞いたことだが、琢磨さん達の子供が危ない」 
「危ないって何が危ないのさ、中身を言わないと分からないよ。」 
そう言われたビリーは、先程聞いた内容を説明すると、ルラはビリーの説明、あの二人が依頼で出かけた事、そしてギルマス達が今日帰って来ることを合わせると合致するのが分かる。 
「それはやばいね。」 
「ああ、だがどうしたらいいか俺も分からないんだ。」 
「なら、あんたはウエストフォール商会に行きな。そこにあの子の兄さんがいる。もしいなくてもギャリソンって言う人に話をしな、そうすれば少しは違うさ。」 
「ああ、分かった、それでお前さんはどうするんだ?」 
「私かい?私は琢磨達が帰ってきているルートに向かい状況を話してくるよ。おそらくだけど、あと一時間もすれば着くところまで帰ってきているはずさ。昔行った事がある場所からの帰還だからね。」 
「そうか、分かった、じゃあ、そっちは頼んだぞ。俺はそちらに行ってくるから。」そう言うとビリーは走って出て行く。 
「さて、それじゃ私も久々にやりますかね。ウルル店番頼んだよ。」そう言うと裏からは~いと言った声が聞こえてきたので、急いで部屋に行き最低限の装備を準備しに向かうのであった。 
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