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情報収集
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まずは相手のことを知らなければとクリスティーナは情報を集めることにした。王子としてのアルベルトのことはある程度知っているが、アルベルトという個人を知っているわけではなかった。最初は自分との接点を探そうとした。
(とは言っても、私自身は何もないのだけれど……)
自分との接点がわかっていれば、情報を集めようとはしないのだが。とりあえず、片っ端から調べることにしたのだが……
「……何もわからなかったのだけど?」
結果は惨敗。生徒たちに聞いてもやはり自分でも知っているような王子としてのアルベルトの情報。それよりも、どうして告白されたのかと逆に質問をされた。いや、逆にこっちが知りたいと思うクリスティーナであった。
「全く、あの人が何を考えているかがわからない……」
「でも、何も無しに告白なんてしないでしょ? 仮にも、この国の王子様なんだし」
「それはそうだけど……」
マリアの言っていることはクリスティーナ自身、よくわかっている。
優秀なアルベルトが何の考えも無しに、増しては一目惚れなど、ふざけた理由で告白するはずがない。何か裏があるようにクリスティーナは思えた。
「……よし、決めた」
何かを決心したかのように、クリスティーナはゆっくりと椅子から立ち上がる。
「決めたって何を?」
「アルベルト様に直接聞いてくるわ」
「ええぇっ!?」
クリスティーナの言葉に思わずびっくりして、マリアも勢いよく椅子から立ち上がった。
「それ、本気で言ってるの!?」
「ええ」
「でも、もしかしたら――」
マリアの言いたいこともわかる。もしかしたら、アルベルトと会っていたことを理由に無理矢理、結婚させられるかもしれない。しかし、こうでもしないと、いつまで経っても理由がわからないであろう。いや、いずれ告白の返事もしなければならない。この前の告白は生徒の前で、だ。そのせいでアルベルトの恋人かという噂が流れてしまっている。返事も生徒の前でするなんてことはクリスティーナにとっては避けたいことである。そうであればいっそ二人きりで。クリスティーナはそう考えた。
「こういうことは後手に回った時点で負けよ」
「いや、告白された時点で後手に回ってるでしょ」
……マリアの言うことは正しい。しかし、クリスティーナのやることは変わらない。
「……今日の放課後に会いに行くわ」
時は放課後――いざ、出陣と席を立ち上がったクリスティーナ――
「クリスティーナ嬢はいるか!」
声高らかに響くアルベルトの声。クラスメイトは突然現れたアルベルトを一瞬見て、クリスティーナに視線を向ける。
「……後手に回ったらなんだって?」
マリアがバカにするようにクリスティーナに告げる。勢いよく立ち上がったクリスティーナは衝撃のあまり固まったままだ。
「……流石に早くないですかね?」
少し冷静になり、ポリスと呟く。
確かアルベルトは二年生でアルベルトの教室はこの階の一つ上の二階であったはずだ。この学園は時間に厳密であり、授業も時間ちょうどに終わる。それを考えると、アルベルトもついさっき授業が終わったはずなのだが、どうしてか今ここにいる。
「どうやってここに――」
「転移石を使った」
「しょうもないことに使わないでください!」
クリスティーナは声を大にして叫ぶ。
転移石とはその名の通り、魔力をこめることでイメージした場所に転移することが出来る便利な魔法石のことだ。しかし、便利な反面、大変貴重であり値段もそこそこする。それこそ、平民では買うことすらためらうくらいに。ましては二階から一階に移動するために使う者なんていない。目の前の少年を除けば。
「しょうもないことではない! 僕は君の返事を聞くために転移石を自分の小遣いで買っていち早く――」
(あっ、王子様ってお小遣い制なんだ)
思わぬところでアルベルトの情報を手に入れた。自分でも親に頼んでお金を出してもらうのに、アルベルトはお小遣い制のようだ。豚の貯金箱にコツコツお金を貯めているアルベルトを想像すると少し笑えてくる。クリスティーナの中でアルベルトの完璧超人の像が崩れていく。
「――というわけだ、返事を聞かせてもらおうではないか!」
熱弁を終えたアルベルトの言葉によって再び視線がクリスティーナに向けられる。
「目立ちたくないのに目立っちゃったね」
クスクスとクリスティーナの隣で笑うマリア。クリスティーナはマリアにガンを飛ばすがマリアは知らん顔だ。
はぁ、と少しため息をつき、クリスティーナはアルベルトに視線を向ける。
「――わかりました。返事を言います。ただし、一つ条件があります」
返事を聞けると知った瞬間、アルベルトはだらしない表情をしたが、それは無視だ。条件があると言ってアルベルトの表情は強ばる。
「……条件とはなんだ?」
クリスティーナはフフッ、と微笑み――
「私と二人で話しませんか?」
(とは言っても、私自身は何もないのだけれど……)
自分との接点がわかっていれば、情報を集めようとはしないのだが。とりあえず、片っ端から調べることにしたのだが……
「……何もわからなかったのだけど?」
結果は惨敗。生徒たちに聞いてもやはり自分でも知っているような王子としてのアルベルトの情報。それよりも、どうして告白されたのかと逆に質問をされた。いや、逆にこっちが知りたいと思うクリスティーナであった。
「全く、あの人が何を考えているかがわからない……」
「でも、何も無しに告白なんてしないでしょ? 仮にも、この国の王子様なんだし」
「それはそうだけど……」
マリアの言っていることはクリスティーナ自身、よくわかっている。
優秀なアルベルトが何の考えも無しに、増しては一目惚れなど、ふざけた理由で告白するはずがない。何か裏があるようにクリスティーナは思えた。
「……よし、決めた」
何かを決心したかのように、クリスティーナはゆっくりと椅子から立ち上がる。
「決めたって何を?」
「アルベルト様に直接聞いてくるわ」
「ええぇっ!?」
クリスティーナの言葉に思わずびっくりして、マリアも勢いよく椅子から立ち上がった。
「それ、本気で言ってるの!?」
「ええ」
「でも、もしかしたら――」
マリアの言いたいこともわかる。もしかしたら、アルベルトと会っていたことを理由に無理矢理、結婚させられるかもしれない。しかし、こうでもしないと、いつまで経っても理由がわからないであろう。いや、いずれ告白の返事もしなければならない。この前の告白は生徒の前で、だ。そのせいでアルベルトの恋人かという噂が流れてしまっている。返事も生徒の前でするなんてことはクリスティーナにとっては避けたいことである。そうであればいっそ二人きりで。クリスティーナはそう考えた。
「こういうことは後手に回った時点で負けよ」
「いや、告白された時点で後手に回ってるでしょ」
……マリアの言うことは正しい。しかし、クリスティーナのやることは変わらない。
「……今日の放課後に会いに行くわ」
時は放課後――いざ、出陣と席を立ち上がったクリスティーナ――
「クリスティーナ嬢はいるか!」
声高らかに響くアルベルトの声。クラスメイトは突然現れたアルベルトを一瞬見て、クリスティーナに視線を向ける。
「……後手に回ったらなんだって?」
マリアがバカにするようにクリスティーナに告げる。勢いよく立ち上がったクリスティーナは衝撃のあまり固まったままだ。
「……流石に早くないですかね?」
少し冷静になり、ポリスと呟く。
確かアルベルトは二年生でアルベルトの教室はこの階の一つ上の二階であったはずだ。この学園は時間に厳密であり、授業も時間ちょうどに終わる。それを考えると、アルベルトもついさっき授業が終わったはずなのだが、どうしてか今ここにいる。
「どうやってここに――」
「転移石を使った」
「しょうもないことに使わないでください!」
クリスティーナは声を大にして叫ぶ。
転移石とはその名の通り、魔力をこめることでイメージした場所に転移することが出来る便利な魔法石のことだ。しかし、便利な反面、大変貴重であり値段もそこそこする。それこそ、平民では買うことすらためらうくらいに。ましては二階から一階に移動するために使う者なんていない。目の前の少年を除けば。
「しょうもないことではない! 僕は君の返事を聞くために転移石を自分の小遣いで買っていち早く――」
(あっ、王子様ってお小遣い制なんだ)
思わぬところでアルベルトの情報を手に入れた。自分でも親に頼んでお金を出してもらうのに、アルベルトはお小遣い制のようだ。豚の貯金箱にコツコツお金を貯めているアルベルトを想像すると少し笑えてくる。クリスティーナの中でアルベルトの完璧超人の像が崩れていく。
「――というわけだ、返事を聞かせてもらおうではないか!」
熱弁を終えたアルベルトの言葉によって再び視線がクリスティーナに向けられる。
「目立ちたくないのに目立っちゃったね」
クスクスとクリスティーナの隣で笑うマリア。クリスティーナはマリアにガンを飛ばすがマリアは知らん顔だ。
はぁ、と少しため息をつき、クリスティーナはアルベルトに視線を向ける。
「――わかりました。返事を言います。ただし、一つ条件があります」
返事を聞けると知った瞬間、アルベルトはだらしない表情をしたが、それは無視だ。条件があると言ってアルベルトの表情は強ばる。
「……条件とはなんだ?」
クリスティーナはフフッ、と微笑み――
「私と二人で話しませんか?」
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