41 / 74
第3章 交流戦
イースト到着
しおりを挟む
馬車に揺すられること数時間、アリスが目を覚ますと、アリスたちを乗せた馬車はすでに隣国イーストの中へと入っていた。
イーストの町並みはサウスと比較しても対して変わらなかったが、すれ違う人々のほとんどが黒髪で、ここがサウスではないことを明確に示していた。
「さあ、着いたわよ」
リンに促され、アリスたちは馬車から降りる。そして目の前には――
「――ここが、イースト学園よ!」
リンが声高らかに叫ぶ。アリスが視線を移すと、サウス学園と同等の広さ、しかし見た目はサウスとは違った学園が目の前に立ちはだかっていた。
リーゼロッテはイースト学園を初めて見たのか、目の前の光景を見て息を呑んでいた。対するリンたちは一度来たことがあるのか特に驚いた様子はなかった。よくよく考えれば、彼女たちはかなり優秀であり、1年生の時も代表に選ばれたのであろうとアリスは納得する。
「寝泊まりはここの学園の寮を使ってね……女子寮はあっちで男子寮はこっちよ。くれぐれも間違えないでね、アリス?」
「間違えませんし、そんな目でこっちを見ないでください」
にやつきながら自分を見つめてくるリンを、うっとうしそうにアリスは見つめる。
「じゃあ、いったん自分の寮に行って準備を済ませてきて。この後、イーストの生徒との顔合わせのパーティーがあるから」
リンがそう言うと、アリスたちは準備をするために自分たちの部屋へと向かった。
アリスたちが話しているのを、学園の屋上から眺めている生徒がいた。しかし、アリスたちとその生徒の距離はかなり離れており、肉眼で確認するのは不可能であった。だが、その生徒の瞳は確かにアリスを見据えていた。
「あれが”精霊殺し”かぁ。”エルフリーデ”には見えないけど、金髪の子はサウスの王女様で他の生徒も去年見たしね……あの黒髪の子しか可能性がないよね? でも“精霊殺し”は女の子とも言っていたし……ああ! もう、わかんない!」
ついに理解が追いつかなくなり、その生徒――以前に”炎帝”と呼ばれた少女は叫ぶ。しかし、その表情はどこか嬉しそうであった。
(どちらにしろ、”精霊殺し”が参加していることは確実。サウスも”精霊殺し”を参加させたって言ったしね)
”精霊殺し”が参加していることは確実。その情報を握って、あとは本人を特定するだけだ。しかし、本人もすでに特定されたも同然であった。
感情が高ぶったのか、”炎帝”は無意識に手を握りしめていた。
(さて、どうするか……)
自分の部屋にたどり着いたアリスは今後のことについて考えていた。
(交流戦は所詮、遊びみたいなものだ。それよりもイーストから寄せられた任務がな……)
もちろん、そんな任務など存在しておらず、”炎帝”がアリスと戦いがために作ったものだ。そんなことを知らないアリスは一所懸命、任務について考えている。
(ファフニールの封印を解いた奴ならばいいのだがな。もし、そうであったら……)
ありもしない任務に対して、アリスは対策を練る。そこで一つの考えが浮かぶ。
(確か、このあとに顔合わせのパーティーがあったな。その時に”神無月”と接触を図るか?)
リーゼロッテの情報では、”神無月”のメンバーの参加は確実である。それに――
(明らかに他の生徒と格が違うはずだ)
ならば、”神無月”と接触を測ることは、そう難しくはない。他の生徒と雰囲気の違う生徒を見つければよいだけなのだから。
(とりあえず、リンさんたちと合流するか)
準備を終えたアリスは、そのまま部屋を後にするのだった。
イーストの町並みはサウスと比較しても対して変わらなかったが、すれ違う人々のほとんどが黒髪で、ここがサウスではないことを明確に示していた。
「さあ、着いたわよ」
リンに促され、アリスたちは馬車から降りる。そして目の前には――
「――ここが、イースト学園よ!」
リンが声高らかに叫ぶ。アリスが視線を移すと、サウス学園と同等の広さ、しかし見た目はサウスとは違った学園が目の前に立ちはだかっていた。
リーゼロッテはイースト学園を初めて見たのか、目の前の光景を見て息を呑んでいた。対するリンたちは一度来たことがあるのか特に驚いた様子はなかった。よくよく考えれば、彼女たちはかなり優秀であり、1年生の時も代表に選ばれたのであろうとアリスは納得する。
「寝泊まりはここの学園の寮を使ってね……女子寮はあっちで男子寮はこっちよ。くれぐれも間違えないでね、アリス?」
「間違えませんし、そんな目でこっちを見ないでください」
にやつきながら自分を見つめてくるリンを、うっとうしそうにアリスは見つめる。
「じゃあ、いったん自分の寮に行って準備を済ませてきて。この後、イーストの生徒との顔合わせのパーティーがあるから」
リンがそう言うと、アリスたちは準備をするために自分たちの部屋へと向かった。
アリスたちが話しているのを、学園の屋上から眺めている生徒がいた。しかし、アリスたちとその生徒の距離はかなり離れており、肉眼で確認するのは不可能であった。だが、その生徒の瞳は確かにアリスを見据えていた。
「あれが”精霊殺し”かぁ。”エルフリーデ”には見えないけど、金髪の子はサウスの王女様で他の生徒も去年見たしね……あの黒髪の子しか可能性がないよね? でも“精霊殺し”は女の子とも言っていたし……ああ! もう、わかんない!」
ついに理解が追いつかなくなり、その生徒――以前に”炎帝”と呼ばれた少女は叫ぶ。しかし、その表情はどこか嬉しそうであった。
(どちらにしろ、”精霊殺し”が参加していることは確実。サウスも”精霊殺し”を参加させたって言ったしね)
”精霊殺し”が参加していることは確実。その情報を握って、あとは本人を特定するだけだ。しかし、本人もすでに特定されたも同然であった。
感情が高ぶったのか、”炎帝”は無意識に手を握りしめていた。
(さて、どうするか……)
自分の部屋にたどり着いたアリスは今後のことについて考えていた。
(交流戦は所詮、遊びみたいなものだ。それよりもイーストから寄せられた任務がな……)
もちろん、そんな任務など存在しておらず、”炎帝”がアリスと戦いがために作ったものだ。そんなことを知らないアリスは一所懸命、任務について考えている。
(ファフニールの封印を解いた奴ならばいいのだがな。もし、そうであったら……)
ありもしない任務に対して、アリスは対策を練る。そこで一つの考えが浮かぶ。
(確か、このあとに顔合わせのパーティーがあったな。その時に”神無月”と接触を図るか?)
リーゼロッテの情報では、”神無月”のメンバーの参加は確実である。それに――
(明らかに他の生徒と格が違うはずだ)
ならば、”神無月”と接触を測ることは、そう難しくはない。他の生徒と雰囲気の違う生徒を見つければよいだけなのだから。
(とりあえず、リンさんたちと合流するか)
準備を終えたアリスは、そのまま部屋を後にするのだった。
0
お気に入りに追加
550
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!
七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ?
俺はいったい、どうなっているんだ。
真実の愛を取り戻したいだけなのに。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる