精霊殺しの学園生活

はる

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第3章 交流戦

イースト到着

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 馬車に揺すられること数時間、アリスが目を覚ますと、アリスたちを乗せた馬車はすでに隣国イーストの中へと入っていた。
 イーストの町並みはサウスと比較しても対して変わらなかったが、すれ違う人々のほとんどが黒髪で、ここがサウスではないことを明確に示していた。

 「さあ、着いたわよ」

 リンに促され、アリスたちは馬車から降りる。そして目の前には――

 「――ここが、イースト学園よ!」

 リンが声高らかに叫ぶ。アリスが視線を移すと、サウス学園と同等の広さ、しかし見た目はサウスとは違った学園が目の前に立ちはだかっていた。

 リーゼロッテはイースト学園を初めて見たのか、目の前の光景を見て息を呑んでいた。対するリンたちは一度来たことがあるのか特に驚いた様子はなかった。よくよく考えれば、彼女たちはかなり優秀であり、1年生の時も代表に選ばれたのであろうとアリスは納得する。

 「寝泊まりはここの学園の寮を使ってね……女子寮はあっちで男子寮はこっちよ。くれぐれも間違えないでね、アリス?」

 「間違えませんし、そんな目でこっちを見ないでください」

 にやつきながら自分を見つめてくるリンを、うっとうしそうにアリスは見つめる。

 「じゃあ、いったん自分の寮に行って準備を済ませてきて。この後、イーストの生徒との顔合わせのパーティーがあるから」

 リンがそう言うと、アリスたちは準備をするために自分たちの部屋へと向かった。





 アリスたちが話しているのを、学園の屋上から眺めている生徒がいた。しかし、アリスたちとその生徒の距離はかなり離れており、肉眼で確認するのは不可能であった。だが、その生徒の瞳は確かにアリスを見据えていた。

 「あれが”精霊殺し”かぁ。”エルフリーデ”には見えないけど、金髪の子はサウスの王女様で他の生徒も去年見たしね……あの黒髪の子しか可能性がないよね? でも“精霊殺し”は女の子とも言っていたし……ああ! もう、わかんない!」

 ついに理解が追いつかなくなり、その生徒――以前に”炎帝”と呼ばれた少女は叫ぶ。しかし、その表情はどこか嬉しそうであった。

 (どちらにしろ、”精霊殺し”が参加していることは確実。サウスも”精霊殺し”を参加させたって言ったしね)

 ”精霊殺し”が参加していることは確実。その情報を握って、あとは本人を特定するだけだ。しかし、本人もすでに特定されたも同然であった。

 感情が高ぶったのか、”炎帝”は無意識に手を握りしめていた。





 (さて、どうするか……)

 自分の部屋にたどり着いたアリスは今後のことについて考えていた。

 (交流戦は所詮、遊びみたいなものだ。それよりもイーストから寄せられた任務がな……)

 もちろん、そんな任務など存在しておらず、”炎帝”がアリスと戦いがために作ったものだ。そんなことを知らないアリスは一所懸命、任務について考えている。

 (ファフニールの封印を解いた奴ならばいいのだがな。もし、そうであったら……)

 ありもしない任務に対して、アリスは対策を練る。そこで一つの考えが浮かぶ。

 (確か、このあとに顔合わせのパーティーがあったな。その時に”神無月”と接触を図るか?)

 リーゼロッテの情報では、”神無月”のメンバーの参加は確実である。それに――

 (明らかに他の生徒と格が違うはずだ)
 
 ならば、”神無月”と接触を測ることは、そう難しくはない。他の生徒と雰囲気の違う生徒を見つければよいだけなのだから。

 (とりあえず、リンさんたちと合流するか)

 準備を終えたアリスは、そのまま部屋を後にするのだった。
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