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第1章 始まり
入学2
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司会に呼ばれて出てきたのは、この学園の生徒会長、リン・シルフィードであった。
リン・シルフィード――サウス学園の生徒会長であり、3年生最強――つまり、この学園の最強の称号を持つ人物でもある。
リンは腰まで伸びる水色を揺らしながら全校生徒の前に立った。
「入学生の皆さん、入学おめでとうございます。ここでは、貴族も平民も関係ありません。互いに切磋琢磨し、己の力を磨いてください」
生徒会長らしい、堂々とした態度で挨拶をする。その姿に会場の生徒たちは見惚れていたが、アリスだけは違うことを考えていた。
(……彼女が生徒会長か……。確かに学生にしては魔力の扱いがうまいな……)
通常、魔力は意識していなければ勝手に体から漏れ出してしまう。もっとも、意識しても漏れてしまう者が大半だが。しかし、目の前の少女は特に意識することもなく魔力を扱っていた。それだけでも、かなりの実力を持っていると判断することができた。
(これだと護衛はいらないんじゃないか……?)
生徒のレベルがこれほど高いのだ。教師のレベルはもっと高いだろう。アリスは本気で護衛はいらないんじゃないかと思い始めていた。
(そろそろ眠たくなってきたな……)
アリスは再び眠りにつこうとしていたが、司会の言葉によって完全に目が覚めた。
――最後はリーゼロッテ・フォン・エルフリーデさんです。
司会に呼ばれたリーゼロッテは新入生の席から立ち上がり、自身の髪を揺らしながら全校生徒の前へと歩いて行った。彼女の持つ美しい金髪は見る者すべてを惹きつけていた。
そんなリーゼロッテの様子をアリスは目を細めながら見つめていた。
(……どこかであったことがあるか?)
アリスはそんな疑問を持ったが、すぐに振り払う。
(……いや、あいつの髪は短かったな)
アリスが思い出していたのは過去に出会った少女のことだった。しかし、今、目にしているリーゼロッテの髪は肩より少し伸ばしているセミロングである。あの時の少女はショートカットであり、リーゼロッテの髪型とはかけ離れていた。
アリスは何かの間違いだと、すぐに疑問を消し去り、リーゼロッテに意識を戻す。
「新入生代表リーゼロッテです。本校に通えることを光栄に思います。王族という立場ですが、みなさん気軽に話しかけてくださいね」
リンと同様に、堂々とした態度で挨拶をするリーゼロッテ。さすが王族の人間といったところだろうか。
ちなみに、リーゼロッテという少女はアルベルトの娘というだけあってかなり優秀な人間であった。王族としての風格はもちろんのこと、この学園の入学試験でも筆記は満点、実技もかなり上位の成績であり、ランクも3位とかなり優秀なランクをたたき出している。
(確かに優秀だが、陛下と同じでどこか残念なところがありそうだな……)
それだけがアリスが心配するところであった。
(全く陛下には困ったものだ。これなら本当に護衛なんていらないだろうに)
アリスは嘆息しながら生徒の前に立つ少女を見ていた。
しかしアリスはリーゼロッテの護衛が本当の任務ではないと気づかずにいた……
「陛下、怪しい奴らは現在、ノースにいるとのことです」
「そうか……」
王宮の謁見の間では宰相とアルベルトのやりとりが行われていた。
アルベルトがアリスを学園に通わせたのはリーゼロッテの護衛のためではない。いや、実際はリーゼロッテのことが心配だったのもあるが、学園を守るという役目が本命であった。
現在エデンでは不審な者の動きがあると連絡が入っている。そいつらから将来有望な生徒たちを失わないためにアリスを学園に通わせたのだ。
宰相が謁見の間から出て行くのを確認すると、アルベルトは頭を抱える。
「……はぁ、面倒くさいことになりそうだ……」
謁見の間にアルベルトの声だけが響いた。
リン・シルフィード――サウス学園の生徒会長であり、3年生最強――つまり、この学園の最強の称号を持つ人物でもある。
リンは腰まで伸びる水色を揺らしながら全校生徒の前に立った。
「入学生の皆さん、入学おめでとうございます。ここでは、貴族も平民も関係ありません。互いに切磋琢磨し、己の力を磨いてください」
生徒会長らしい、堂々とした態度で挨拶をする。その姿に会場の生徒たちは見惚れていたが、アリスだけは違うことを考えていた。
(……彼女が生徒会長か……。確かに学生にしては魔力の扱いがうまいな……)
通常、魔力は意識していなければ勝手に体から漏れ出してしまう。もっとも、意識しても漏れてしまう者が大半だが。しかし、目の前の少女は特に意識することもなく魔力を扱っていた。それだけでも、かなりの実力を持っていると判断することができた。
(これだと護衛はいらないんじゃないか……?)
生徒のレベルがこれほど高いのだ。教師のレベルはもっと高いだろう。アリスは本気で護衛はいらないんじゃないかと思い始めていた。
(そろそろ眠たくなってきたな……)
アリスは再び眠りにつこうとしていたが、司会の言葉によって完全に目が覚めた。
――最後はリーゼロッテ・フォン・エルフリーデさんです。
司会に呼ばれたリーゼロッテは新入生の席から立ち上がり、自身の髪を揺らしながら全校生徒の前へと歩いて行った。彼女の持つ美しい金髪は見る者すべてを惹きつけていた。
そんなリーゼロッテの様子をアリスは目を細めながら見つめていた。
(……どこかであったことがあるか?)
アリスはそんな疑問を持ったが、すぐに振り払う。
(……いや、あいつの髪は短かったな)
アリスが思い出していたのは過去に出会った少女のことだった。しかし、今、目にしているリーゼロッテの髪は肩より少し伸ばしているセミロングである。あの時の少女はショートカットであり、リーゼロッテの髪型とはかけ離れていた。
アリスは何かの間違いだと、すぐに疑問を消し去り、リーゼロッテに意識を戻す。
「新入生代表リーゼロッテです。本校に通えることを光栄に思います。王族という立場ですが、みなさん気軽に話しかけてくださいね」
リンと同様に、堂々とした態度で挨拶をするリーゼロッテ。さすが王族の人間といったところだろうか。
ちなみに、リーゼロッテという少女はアルベルトの娘というだけあってかなり優秀な人間であった。王族としての風格はもちろんのこと、この学園の入学試験でも筆記は満点、実技もかなり上位の成績であり、ランクも3位とかなり優秀なランクをたたき出している。
(確かに優秀だが、陛下と同じでどこか残念なところがありそうだな……)
それだけがアリスが心配するところであった。
(全く陛下には困ったものだ。これなら本当に護衛なんていらないだろうに)
アリスは嘆息しながら生徒の前に立つ少女を見ていた。
しかしアリスはリーゼロッテの護衛が本当の任務ではないと気づかずにいた……
「陛下、怪しい奴らは現在、ノースにいるとのことです」
「そうか……」
王宮の謁見の間では宰相とアルベルトのやりとりが行われていた。
アルベルトがアリスを学園に通わせたのはリーゼロッテの護衛のためではない。いや、実際はリーゼロッテのことが心配だったのもあるが、学園を守るという役目が本命であった。
現在エデンでは不審な者の動きがあると連絡が入っている。そいつらから将来有望な生徒たちを失わないためにアリスを学園に通わせたのだ。
宰相が謁見の間から出て行くのを確認すると、アルベルトは頭を抱える。
「……はぁ、面倒くさいことになりそうだ……」
謁見の間にアルベルトの声だけが響いた。
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