27 / 74
第2章 調査
遭遇
しおりを挟む
アリスたちは封印を解いた後、セントラルの中に入って調査をしていた。しかし、ファフニールが封印されていた場所は正確にはわかっていなかった。
早くも調査に飽き始めていたアレクシアが声を上げる。
「あー! 退屈!」
アレクシアが叫ぶのも無理はない。なにしろアリスたちが調査を開始して、手がかりどころか精霊の一体にも遭遇していない。
「あー! 手がかりなんていいから精霊でも来い! なんでもいいからストレス発散したい!」
「”水神”! 不謹慎ですよ!」
アレクシアの叫びに注意するシェリル。しかし、アリスに二人のやりとりは全く気にせずに別のことを考えていた。
(……おかしい。こんなに長時間セントラルに侵入して精霊に会わないなんて……)
アリスが思っている通り、セントラルで精霊に遭遇しないのはおかしい。なぜなら、セントラルが普段、閉鎖されているのは危険な精霊がたくさん生息するからだ。この世界エデンではギルドがあり、冒険者のランクも低い方からFからAランクまで存在する。そして、最高位に位置するのがSランクであり、このランクは人外レベルの冒険者がなることができる。エルフリーデも冒険者ではないが、Sランクの称号が与えられる。だから、実質Aランクが一般の人間が到達できる最高ランクである。そんな中でも、セントラルに入るにはAランク以上が条件である。Bランクでも十分一流なのだが、そんな彼らでさえ入れない場所であるのだ。言い換えればAランクでも死ぬ確率は高いのだ。しかし、今のところ精霊に全く遭遇していない。
(本当に人為的なものなのか? 俺たちでもここの精霊を複数体倒すのに苦労するのに。もしできるやつがいたら……)
大変なことになるのは明らかであった。最低でもここにいる精霊以上は実力があるということになるわけなのだから。
突然、何かを思い出したかのように、アレクシアはアリスに声をかける。
「そういえば。アリスって今日は仮面を付けてないの? もしかして忘れちゃったとか?」
アレクシアがおちょくってくるように言うが、実際に忘れたわけではない。
「違うわよ。今回の事件は人間が犯人だって言われているでしょ? だからあえて顔をさらしているの。そうすれば、相手も何か行動を起こすかも知れないでしょ?」
「ふーん。ちゃんと考えているんだ」
「誰でもあなたよりは考えているわ」
「なんですと!?」
アレクシアはアリスの言葉に不満を持ったが、シェリルもアリスと同意見だったのか否定せずに頷いていた。
「……しっ! 静かに」
アリスは何かの気配を感じ取り、アレクシアたちに声をかける。しかし、二人は何も気配を感じなかったので不思議に思った。
アレクシアたちが魔力を感じられないのも無理はない。クロノスの吸収の能力を使っているアリスでさえ、微かにしか魔力を感じ取れないのだ。ということは、その存在までの距離はかなりあるはずなのだがアリスは油断しなかった。いくら距離が空いていてもセントラルの精霊に対して油断すれば命はないからだ。
「……近づくわよ」
しかし、アリスに逃げるという選択肢はなかった。やっと手がかりが見つかるかも知れないのだ。そんなチャンスを逃すアリスではない。
アリスの言葉にアレクシアたちも無言で頷き、アリスが感じ取った存在の元へ向かった。
しばらく歩いてアリスたちは、その存在の元へたどり着いた。しかし、アリスたちには後悔しかなかった。
「……ねえ? あれって麒麟よね?」
「はい。そうだと思います……」
アレクシアは間違いであってほしいと願っていたが、シェリルの言葉で否定される。アリスもこの状況が理解できずに黙り込んでいる。それは目の前の存在によってだ。
麒麟――セントラルの守り神の象徴の精霊である。それと同時に伝説の存在でもある。サウスにもその伝説が残されていたが、その姿を見た者はいなかった。目の前の麒麟は身体を金色と緑色に輝く鱗で覆われていて、さらに頭と尻尾からは金毛が生えており、頭からは一本の青く光り輝く角が神々しく輝いている。そして、その全身を雷が包み込んでいた。
そして、冷静になったアリスがアレクシアたちに確認を取る。
「……撤退するわよ」
「ええ。そうしましょ」
「はい。あれはさすがに無理です」
アレクシアたちは考えるまでもなく撤退を選択した。
いくらアリスたちが”エルフリーデ”だとしても麒麟は別だ。王級精霊と契約しているアリスでも勝てるかわからない。それは麒麟や四神がもつ特別な能力があるからだ。
アリスたちは麒麟にばれないようにゆっくりと去ろうとするがそれは叶わなかった。
パキッ
どうしてだろうか。アレクシアが足下の枝を踏んでしまったのだ。その音に反応して麒麟がこちらに顔を向ける。
「「「……」」」
「……」
見つめ合う三人と一匹? この空気を打ち破るために、アリスが声を出そうとすると――
”汝ら、何をしに来た”
「「「……っ!?」」」
アリスたちは麒麟が話せることに驚いた。サウスの守り神である朱雀は話すことができない。
精霊が話せるか話せないかは知能による。話せるということはそれだけの知能があり、戦闘でも思考しながら戦うので対処しづらい。
”……もしや、封印を解き放った輩か”
思いがけない言葉にアリスたちが驚愕する。
「……っ! いや、私たちは!」
”戯言たわごとはいい! 汝らは我がここで始末する!”
アリスは慌てて否定するが麒麟は聞く耳を持たない。麒麟との戦闘は避けることができそうになかった。
「……仕方ないわ。”水神”、”女神”。麒麟を倒すわよ」
「はあ、仕方ない。結局こうなるのね……」
「はい、わかりました!」
原因はアレクシアなのだが、ここに来ようといったのはアリスだった。自分にも責任を感じていたためにアレクシアを責めることができなかった。
「じゃあ、やるわよ!」
「「了解!」」
「”クロノス! メーティス”!」
現れた〈闇を貫く王剣〉と〈光を滅する王剣〉を握りしめ、アリスは魔法を放った。
「”ソウルイーター”!」
早くも調査に飽き始めていたアレクシアが声を上げる。
「あー! 退屈!」
アレクシアが叫ぶのも無理はない。なにしろアリスたちが調査を開始して、手がかりどころか精霊の一体にも遭遇していない。
「あー! 手がかりなんていいから精霊でも来い! なんでもいいからストレス発散したい!」
「”水神”! 不謹慎ですよ!」
アレクシアの叫びに注意するシェリル。しかし、アリスに二人のやりとりは全く気にせずに別のことを考えていた。
(……おかしい。こんなに長時間セントラルに侵入して精霊に会わないなんて……)
アリスが思っている通り、セントラルで精霊に遭遇しないのはおかしい。なぜなら、セントラルが普段、閉鎖されているのは危険な精霊がたくさん生息するからだ。この世界エデンではギルドがあり、冒険者のランクも低い方からFからAランクまで存在する。そして、最高位に位置するのがSランクであり、このランクは人外レベルの冒険者がなることができる。エルフリーデも冒険者ではないが、Sランクの称号が与えられる。だから、実質Aランクが一般の人間が到達できる最高ランクである。そんな中でも、セントラルに入るにはAランク以上が条件である。Bランクでも十分一流なのだが、そんな彼らでさえ入れない場所であるのだ。言い換えればAランクでも死ぬ確率は高いのだ。しかし、今のところ精霊に全く遭遇していない。
(本当に人為的なものなのか? 俺たちでもここの精霊を複数体倒すのに苦労するのに。もしできるやつがいたら……)
大変なことになるのは明らかであった。最低でもここにいる精霊以上は実力があるということになるわけなのだから。
突然、何かを思い出したかのように、アレクシアはアリスに声をかける。
「そういえば。アリスって今日は仮面を付けてないの? もしかして忘れちゃったとか?」
アレクシアがおちょくってくるように言うが、実際に忘れたわけではない。
「違うわよ。今回の事件は人間が犯人だって言われているでしょ? だからあえて顔をさらしているの。そうすれば、相手も何か行動を起こすかも知れないでしょ?」
「ふーん。ちゃんと考えているんだ」
「誰でもあなたよりは考えているわ」
「なんですと!?」
アレクシアはアリスの言葉に不満を持ったが、シェリルもアリスと同意見だったのか否定せずに頷いていた。
「……しっ! 静かに」
アリスは何かの気配を感じ取り、アレクシアたちに声をかける。しかし、二人は何も気配を感じなかったので不思議に思った。
アレクシアたちが魔力を感じられないのも無理はない。クロノスの吸収の能力を使っているアリスでさえ、微かにしか魔力を感じ取れないのだ。ということは、その存在までの距離はかなりあるはずなのだがアリスは油断しなかった。いくら距離が空いていてもセントラルの精霊に対して油断すれば命はないからだ。
「……近づくわよ」
しかし、アリスに逃げるという選択肢はなかった。やっと手がかりが見つかるかも知れないのだ。そんなチャンスを逃すアリスではない。
アリスの言葉にアレクシアたちも無言で頷き、アリスが感じ取った存在の元へ向かった。
しばらく歩いてアリスたちは、その存在の元へたどり着いた。しかし、アリスたちには後悔しかなかった。
「……ねえ? あれって麒麟よね?」
「はい。そうだと思います……」
アレクシアは間違いであってほしいと願っていたが、シェリルの言葉で否定される。アリスもこの状況が理解できずに黙り込んでいる。それは目の前の存在によってだ。
麒麟――セントラルの守り神の象徴の精霊である。それと同時に伝説の存在でもある。サウスにもその伝説が残されていたが、その姿を見た者はいなかった。目の前の麒麟は身体を金色と緑色に輝く鱗で覆われていて、さらに頭と尻尾からは金毛が生えており、頭からは一本の青く光り輝く角が神々しく輝いている。そして、その全身を雷が包み込んでいた。
そして、冷静になったアリスがアレクシアたちに確認を取る。
「……撤退するわよ」
「ええ。そうしましょ」
「はい。あれはさすがに無理です」
アレクシアたちは考えるまでもなく撤退を選択した。
いくらアリスたちが”エルフリーデ”だとしても麒麟は別だ。王級精霊と契約しているアリスでも勝てるかわからない。それは麒麟や四神がもつ特別な能力があるからだ。
アリスたちは麒麟にばれないようにゆっくりと去ろうとするがそれは叶わなかった。
パキッ
どうしてだろうか。アレクシアが足下の枝を踏んでしまったのだ。その音に反応して麒麟がこちらに顔を向ける。
「「「……」」」
「……」
見つめ合う三人と一匹? この空気を打ち破るために、アリスが声を出そうとすると――
”汝ら、何をしに来た”
「「「……っ!?」」」
アリスたちは麒麟が話せることに驚いた。サウスの守り神である朱雀は話すことができない。
精霊が話せるか話せないかは知能による。話せるということはそれだけの知能があり、戦闘でも思考しながら戦うので対処しづらい。
”……もしや、封印を解き放った輩か”
思いがけない言葉にアリスたちが驚愕する。
「……っ! いや、私たちは!」
”戯言たわごとはいい! 汝らは我がここで始末する!”
アリスは慌てて否定するが麒麟は聞く耳を持たない。麒麟との戦闘は避けることができそうになかった。
「……仕方ないわ。”水神”、”女神”。麒麟を倒すわよ」
「はあ、仕方ない。結局こうなるのね……」
「はい、わかりました!」
原因はアレクシアなのだが、ここに来ようといったのはアリスだった。自分にも責任を感じていたためにアレクシアを責めることができなかった。
「じゃあ、やるわよ!」
「「了解!」」
「”クロノス! メーティス”!」
現れた〈闇を貫く王剣〉と〈光を滅する王剣〉を握りしめ、アリスは魔法を放った。
「”ソウルイーター”!」
0
お気に入りに追加
550
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
幼馴染から奴隷のように扱われていた俺、誰でも奴隷にできる最強スキル<奴隷化>が覚醒! 勇者も魔王もみんな奴隷にして可愛がります
ねこ鍋
ファンタジー
光の勇者として幼い頃から横暴の限りを尽くしてきたエリー。荷物持ちの俺は奴隷のように扱われていたが、それでも彼女の力になれるのだからとガマンしてきた。しかしある日、エリーの気まぐれで俺は命を落としてしまう。
その後、勇者の力で復活させられたが、それを見ていた女神様がついに愛想を尽かし、エリーから勇者の資格を剥奪してしまった。
世界最強の勇者から、一転して世界最弱の無能冒険者に成り下がったエリー。このままでは死んでしまうと怯えるエリーに、俺はこう提案した。
「俺と奴隷契約を結ぶなら助けてやろう」
こうして横暴幼馴染を奴隷にした俺は、さらに<奴隷化>という伝説のスキルが発現していたことも発覚する。これは相手を屈服させれば勇者でも魔王でも奴隷にできる最強スキル。しかも奴隷と仲良くなるほど俺も奴隷も強くなるため、エリーを愛しまくっていたらエリーも俺が好きだと発覚した。
これは奴隷にした勇者を愛しまくり、やがて嫁にするまでの物語。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる