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全て自筆の願書記入
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幸かフコーカ野々下 灯枇には普通科高校を受験させることが、親達の脳内では確定済みであった。
灯枇がそれに歯向かったが最後、猛烈な人格否定と、親達の脳内願望とは大きく異なる、灯枇自身が希望した進学先への罵倒の嵐、そしてそもそも国立口之津海上技術学校への進学を希望するという事は、普通の道では無く、それはどうせ、辛い受験勉強から生じた灯枇の逃避願望に過ぎないのだと決め付けた。
更には、「何の為にさくら塾へ行かせたと思っているのか、それなら今すぐさくらを辞めろ」と、立場の弱い灯枇を脅迫した。
心底驚いた事に、この親達には決して不可能な、まともな大人像という範を灯枇に示し続けてくれた先生達と、中学校では灯枇をヤヤゲと呼んでからかいつつも、時折気に掛けてくれる塾生達の居る、絶対に手放してはならない環境を人質に取ったのだ。
親達は、こうして灯枇に渋々若草市立必由館高等学校と、万が一、学費が安いので県内では軒並み人気な公立高校を落ちた場合の滑り止めや保険として、尚絅高等学校の特待生や、ルーテル学院高等学校の綜合コースや、熊本マリスト学園を受験させた。灯枇は学校の提出物より塾の宿題を優先した為、内申点こそ悪かったが、さくら塾の受験指導が功を奏し、その全てに合格した。
ちなみに灯枇は普通科高校の入試が余りに嫌過ぎて、受験願書を親達に見せるのを提出期限ギリギリになっても忘れ、仕方なく塾の休み時間にこっそりと、全て自筆で保護者署名欄も記入した。印鑑は、ヒヲス小学校の卒業記念品がたまたま各生徒の苗字印鑑だったので、それを使った。
しかし月500円しか貰えない小遣いは全て漫画代に消え、朱肉は持っていないので、赤の油性ペンのインクを使ってハンコを押した。中学校の先生達は、生徒が勝手に書いたらバレると脅していたが、灯枇の署名は一切バレず、無事受験までこぎ着けた。
親達は、お互いがいつの間にか願書を記入したとでも思っていたのだろうか? 最初の1校位は、たしか署名した筈だが、それ以降の灯枇の願書について気に留めて訊ねて来た事はついぞなかった。
灯枇がそれに歯向かったが最後、猛烈な人格否定と、親達の脳内願望とは大きく異なる、灯枇自身が希望した進学先への罵倒の嵐、そしてそもそも国立口之津海上技術学校への進学を希望するという事は、普通の道では無く、それはどうせ、辛い受験勉強から生じた灯枇の逃避願望に過ぎないのだと決め付けた。
更には、「何の為にさくら塾へ行かせたと思っているのか、それなら今すぐさくらを辞めろ」と、立場の弱い灯枇を脅迫した。
心底驚いた事に、この親達には決して不可能な、まともな大人像という範を灯枇に示し続けてくれた先生達と、中学校では灯枇をヤヤゲと呼んでからかいつつも、時折気に掛けてくれる塾生達の居る、絶対に手放してはならない環境を人質に取ったのだ。
親達は、こうして灯枇に渋々若草市立必由館高等学校と、万が一、学費が安いので県内では軒並み人気な公立高校を落ちた場合の滑り止めや保険として、尚絅高等学校の特待生や、ルーテル学院高等学校の綜合コースや、熊本マリスト学園を受験させた。灯枇は学校の提出物より塾の宿題を優先した為、内申点こそ悪かったが、さくら塾の受験指導が功を奏し、その全てに合格した。
ちなみに灯枇は普通科高校の入試が余りに嫌過ぎて、受験願書を親達に見せるのを提出期限ギリギリになっても忘れ、仕方なく塾の休み時間にこっそりと、全て自筆で保護者署名欄も記入した。印鑑は、ヒヲス小学校の卒業記念品がたまたま各生徒の苗字印鑑だったので、それを使った。
しかし月500円しか貰えない小遣いは全て漫画代に消え、朱肉は持っていないので、赤の油性ペンのインクを使ってハンコを押した。中学校の先生達は、生徒が勝手に書いたらバレると脅していたが、灯枇の署名は一切バレず、無事受験までこぎ着けた。
親達は、お互いがいつの間にか願書を記入したとでも思っていたのだろうか? 最初の1校位は、たしか署名した筈だが、それ以降の灯枇の願書について気に留めて訊ねて来た事はついぞなかった。
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