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野々下 妍護 まだつづく
墓場まで持って行けない
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実のところ、野々下 灯枇に陰ながら多大な影響を及ぼしたのは、あの不機嫌でアイス好きな祖父だった。その名は奇しくも野々下 妍護であり、その名の通り孫の灯枇を妍しく護ったのかも知れない。
あるいは単に、腹を立てて唸った時の祖父そっくりなディズニーキャラクター、ドナルド・フォントルロイ・ダックこと、通称・ドナルドダックが、自身とはドタバタ喜劇を繰り広げる間柄のリス2匹・チップとデールを意外と気に入っているように、祖父宅をうろちょろ遊び回って、ウッカリ障子紙に穴を開けるような孫の灯枇と森次姉弟を、祖父なりに可愛がっていただけなのだろうか?
というのも、「タイマヲマイタ 【園児・小学生時代】」では、泥団子の一件のみにぼかしてあるが、泥団子だって一所懸命手間暇を掛けて作った人間が存在する。それと実際は一時期、保育園時代の野々下 灯枇は窃盗症だったからだ。これは結局発覚はせず、灯枇本人が未成年者かつ、どんな事情があったとしても、結局やってしまったからには当然悪である。だからここから先は弁解では無く、単なる灯枇自身による窃盗症発症に至るまでの分析だ。
まず単純に、灯枇には自由に使える金がなかった。自宅の家計を握るのは灯枇の母親であるが、その母親が産まれ育った郡部の実家周辺には、徒歩圏内に駄菓子屋どころか、スーパーさえ一軒も無い。従って恐らく母親は、小学生になっても普段からの小遣いは一切無く、それに不便を感じる事も全く無かったのだろう。遊び場は豊かな自然環境にいくらでも存在し、遊び相手は近所の子。おやつは現物支給だったのだろう。
小遣いが一切無いのなら、代わりにねだって買って貰うという手がある。しかし灯枇はボーイッシュかつ似非淑女的ペドファイルな従姉と違って、末っ子パワーには恵まれておらず、おねだりも下手だった。しかも従姉贔屓なその叔父は、何故かその当時マクドナルドを不健康であると、元々運動もしない癖に目の敵にして、当時は安物のハッピーセットでさえ買ってはくれず、もちろんその配偶者たる母親も同意見だった。
しかし従姉は比較的マシな両親に恵まれている為、極普通にマクドナルドでハッピーセットを買って貰い、当時コラボしていたファービーの簡易的な玩具を、祖父宅で灯枇に見せびらかして自慢するのだ。
だからといってこれは許されない話だ。なのに灯枇は一線を越え、保育園で同じ様なハッピーセット玩具をバッグに着けて来ていた同級生の女の子が、ウッカリその留め具を外した事に気づかず、その場を一時離れた際に、今しか無いと思って自身のナップザックに放り込んで持ち帰った。
迎えの祖父母の車で何故かハッピーセット玩具を所持している灯枇に対し、口煩い祖母は、灯枇の保育園で貰ったという説明だけで納得した。その後も、ちびた鉛筆やら交通標語の書かれたボールペン、あるいは落し物入れの髪飾りを、灯枇が担任保育士の机や、りす組部屋から持ち去ろうと全て保育園で貰ったという説明に納得し、気にもとめなかった。まあ窃盗症が発覚していた場合、その方が余程恐ろしい目にあったのは間違い無いのだが。
やった後はとてつもない罪悪感にさいなまれるだけなのに、何故か急にその時々、目に付いた物がどうしても欲しくなり、誰も見ていないすきに窃盗症を実行してしまうのだ。
口煩い祖母は無免許なので、灯枇の保育園送迎時、車を運転するのは必然的に祖父だった。ということは、当然祖父も気付いていたはずなのである。しかし祖父は一切何も言わなかったので、果たしてどう思っていたのかは分からずじまいである。
謎を解く鍵は、祖父の灯枇に対するパトロン行為がいつ始まったのかだが、残念ながらそれもよく分からない。しかも祖父の買い物先は、用のあるスーパーかホームセンターに限られており、マクドナルドは全然含まれていなかった。
だから灯枇は、いつの間にか親達からマクドナルドを解禁されるまでは、ハッピーセットの玩具を手に入れる事など不可能だった。まあ買い物かごに放り込めば、貴重なパトロンである祖父から、おねだりしなくても買って貰える、スーパーの食玩でも色々と種類があってかなり満足していたのは確かだが。
しかも、灯枇が窃盗症を何とか思い留まるに至ったのは、保育士達も鉛筆やらボールペン紛失で物が無くなることに気が付き、その対策だったのかは不明だが、やがて保育園の門に「警察官立寄所」のステッカーが貼られたからだ。灯枇も流石に警察官が来るようになったらヤバイ、捕まる。という焦りから、ようやく窃盗症を脱却した。
また、灯枇はまだ保育園児なのに漢字が読めた訳ではなく、おそらくは口煩い祖母か保育士あたりに、ステッカーには何と書いてあるのかと質問して分かったのだ。
あるいは単に、腹を立てて唸った時の祖父そっくりなディズニーキャラクター、ドナルド・フォントルロイ・ダックこと、通称・ドナルドダックが、自身とはドタバタ喜劇を繰り広げる間柄のリス2匹・チップとデールを意外と気に入っているように、祖父宅をうろちょろ遊び回って、ウッカリ障子紙に穴を開けるような孫の灯枇と森次姉弟を、祖父なりに可愛がっていただけなのだろうか?
というのも、「タイマヲマイタ 【園児・小学生時代】」では、泥団子の一件のみにぼかしてあるが、泥団子だって一所懸命手間暇を掛けて作った人間が存在する。それと実際は一時期、保育園時代の野々下 灯枇は窃盗症だったからだ。これは結局発覚はせず、灯枇本人が未成年者かつ、どんな事情があったとしても、結局やってしまったからには当然悪である。だからここから先は弁解では無く、単なる灯枇自身による窃盗症発症に至るまでの分析だ。
まず単純に、灯枇には自由に使える金がなかった。自宅の家計を握るのは灯枇の母親であるが、その母親が産まれ育った郡部の実家周辺には、徒歩圏内に駄菓子屋どころか、スーパーさえ一軒も無い。従って恐らく母親は、小学生になっても普段からの小遣いは一切無く、それに不便を感じる事も全く無かったのだろう。遊び場は豊かな自然環境にいくらでも存在し、遊び相手は近所の子。おやつは現物支給だったのだろう。
小遣いが一切無いのなら、代わりにねだって買って貰うという手がある。しかし灯枇はボーイッシュかつ似非淑女的ペドファイルな従姉と違って、末っ子パワーには恵まれておらず、おねだりも下手だった。しかも従姉贔屓なその叔父は、何故かその当時マクドナルドを不健康であると、元々運動もしない癖に目の敵にして、当時は安物のハッピーセットでさえ買ってはくれず、もちろんその配偶者たる母親も同意見だった。
しかし従姉は比較的マシな両親に恵まれている為、極普通にマクドナルドでハッピーセットを買って貰い、当時コラボしていたファービーの簡易的な玩具を、祖父宅で灯枇に見せびらかして自慢するのだ。
だからといってこれは許されない話だ。なのに灯枇は一線を越え、保育園で同じ様なハッピーセット玩具をバッグに着けて来ていた同級生の女の子が、ウッカリその留め具を外した事に気づかず、その場を一時離れた際に、今しか無いと思って自身のナップザックに放り込んで持ち帰った。
迎えの祖父母の車で何故かハッピーセット玩具を所持している灯枇に対し、口煩い祖母は、灯枇の保育園で貰ったという説明だけで納得した。その後も、ちびた鉛筆やら交通標語の書かれたボールペン、あるいは落し物入れの髪飾りを、灯枇が担任保育士の机や、りす組部屋から持ち去ろうと全て保育園で貰ったという説明に納得し、気にもとめなかった。まあ窃盗症が発覚していた場合、その方が余程恐ろしい目にあったのは間違い無いのだが。
やった後はとてつもない罪悪感にさいなまれるだけなのに、何故か急にその時々、目に付いた物がどうしても欲しくなり、誰も見ていないすきに窃盗症を実行してしまうのだ。
口煩い祖母は無免許なので、灯枇の保育園送迎時、車を運転するのは必然的に祖父だった。ということは、当然祖父も気付いていたはずなのである。しかし祖父は一切何も言わなかったので、果たしてどう思っていたのかは分からずじまいである。
謎を解く鍵は、祖父の灯枇に対するパトロン行為がいつ始まったのかだが、残念ながらそれもよく分からない。しかも祖父の買い物先は、用のあるスーパーかホームセンターに限られており、マクドナルドは全然含まれていなかった。
だから灯枇は、いつの間にか親達からマクドナルドを解禁されるまでは、ハッピーセットの玩具を手に入れる事など不可能だった。まあ買い物かごに放り込めば、貴重なパトロンである祖父から、おねだりしなくても買って貰える、スーパーの食玩でも色々と種類があってかなり満足していたのは確かだが。
しかも、灯枇が窃盗症を何とか思い留まるに至ったのは、保育士達も鉛筆やらボールペン紛失で物が無くなることに気が付き、その対策だったのかは不明だが、やがて保育園の門に「警察官立寄所」のステッカーが貼られたからだ。灯枇も流石に警察官が来るようになったらヤバイ、捕まる。という焦りから、ようやく窃盗症を脱却した。
また、灯枇はまだ保育園児なのに漢字が読めた訳ではなく、おそらくは口煩い祖母か保育士あたりに、ステッカーには何と書いてあるのかと質問して分かったのだ。
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