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【2】ちーとにゃんことカミを巡る奇しき不可思議大冒険!

12にゃー

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 魔王国と、獣人部族連合国家クースゥーとの国境――転移でそこまで飛んだ私達は、早速入国審査を受けることとなった。
 スカーレットさんが用意してくれた書簡を魔王国の使者――かつてスカーレットさんと共に人間国を回っていた顔見知りの紫の瞳のお姉さんで、ヴァイオレットさんという――が、入国審査を受け付けている役人の人に書簡を渡す。
 役人の人はそれを持って一度引っ込み、暫くした後また姿を現した。

 「……確かに魔王国の正式な書簡で間違いありません。入国を許可致します。ただし、その後ろの、魔王国出身ではない方々――特に人間族の方達は、くれぐれも問題を起こされぬように」

 役人さんの視線に、ライオットは片眉を上げて溜息を吐く。

 「……分かったよ。カマエルの時もそうだったけど、人間て嫌われてるなぁ」

 「人間の王国に魔族が現れた場合も似たようなものですよ、ライオット」

 「分かってるよ、サミュ」

 そんなやり取りを横に、役人さんは今度はこちらに視線を向けた。

 「ところでそちらのケット・シーは……? 我が獣人部族連合国家には、ケット・シーもおりますが、そちらの出身ではないのですかな?」

 「違うにゃ。ニャンコは人間のイシュラエア王国にあるケット・シー保護区の方から来たのにゃ」

 本当は野良である私は、詐欺師のようなぼかした言い方で誤魔化す。
 役人さんは気付かなかったようで、「保護区……人間の国にそういうものがあるのですね」と頷いていた。

 「ケット・シーの方は人攫いに気を付けて下さい。嘆かわしい事ですが、獣人部族連合国家内でも人身売買目的でケット・シーを攫う犯罪者が居るのですから」

 最初、ライオット達人間に攫われた自国民だと思っていたそうだ。
 成程、先程のライオット達への忠告はそれもあったのかと理解。

 遠く離れた人間達の国々との交流は、船で細々と行われており。
 国内でかどわかされたケット・シー達ももそれに乗せられて売られて行くのだとか。

 「特にニャンコさんのような愛らしい見た目であれば尚更危険です。高値が付くでしょうから」

 と言われ、気を引き締める私。
 何という事だ、可愛いは罪……。

 「愛らしいと思って近付いたが最後。危険なのはむしろ誘拐犯の方では……」

 ティリオンがボソッと呟く。
 こんなに可愛いケット・シーに何を言うのだ。私はジト目で睨みつける。

 一言多いと思うが、まあその通りではあるけれども。
 私を誘拐して売り飛ばそう等と言う不埒な者は、外へ出て歩けない程のトラウマを植え付けてやる。


 そう。
 ざっと、こんな風に――

 「……ニャンコなら、大丈夫そうですね」

 目の前ではいきなり私を誘拐して馬に飛び乗り逃げようとした男が、全身の毛を脱毛された挙句――風の精霊王シルフィードの竜巻に高い高いされて服を切り裂かれきりもみ状態になった後、白目をむいてアガアガ言っていた。

 そんな光景を目の当たりにしてドン引きしている国境の役人さん。私への敬称が何時の間にか様に格上げされている。
 容赦ない仕打ちに恐怖を感じたのか、蒼白になって震えているカマエルが恐る恐る声を掛けて来た。

 「あ、あんた……本当は、ケット・シーの姿をした伝説の神竜アイギューンとかじゃなくて? 闇の神を呼んだ事と言い、規格外過ぎるんだけど……」

 「勿論違うにゃ、エンシェントドラゴンのアイギューンしゃんはお友達なのにゃ!」

 「と、友達……!?」

 カマエルはポカンとした。
 スィルが助け舟を出す。

 「神竜は死んでいたのだけれど、なりゆきでニャンコが生き返らせてしまったの。彼女は今、この世界でケット・シー達と戯れながらのんびり過ごされているわ」

 「ちょっと、何が起こったの!? どこから突っ込むべきか……脳内処理が追い付かないんだけど!」

 ガシガシと頭を掻くカマエルに、マリーシャが苦笑いを浮かべた。

 「まあまあ。時間もありますし、ゆっくり理解を深めて行けば良いと思いますよ」

 誘拐犯が連れて行かれた後、私達は晴れて獣人部族連合国家クースゥーへの入国を果たしたのだった。
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