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【2】ちーとにゃんことカミを巡る奇しき不可思議大冒険!
11にゃー
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「……という事が分かったのにゃ」
ライオット達が戻った後、私は見たことを話した。
闇の神アンシェラ様が、「行き先はゴトゥ島であろうの」と静かに告げる。
「あの者共は邪神信仰集団よ。彼奴らが持っていた装置に見覚えがあると思うたが、あれは古代の遺物。まさかまだ残っていたとは思いも寄らなんだ。精霊王であろうとも封じることが出来る代物での――光の精霊王も、封じられてしまっておる」
その言葉にカマエルがムンクの叫びを上げた。
「では、ハニエル殿下は今、碌な攻撃手段も防御手段も無く、無防備な状態に!」
そこへ、ティリオンが邪神信仰集団については文献で読んだ事がある、と発言する。
「ただ、何百年も昔に活動していたが、危険視されて徹底的な排斥・弾圧の末に消えたという歴史上の話だ」
本当は消えたのではなく逃げて生き残っていたのだな、と続けるティリオン。
アンシェラ様が頷いた。「古代装置で神や精霊の目を欺いて、グンマールやゴトゥ島のような魔力渦巻く特殊な地に潜んでいたのであろうな」
「ゴトゥ島に捕まって居るなら、助けに行けば良いにゃ」
「ニャンコ。問題は、かの地は精霊王はおろか、我もイーラもおいそれと手が出せぬということじゃ。魔力が満ち過ぎていて与える影響力が大き過ぎる故に」
グンマールでも精霊は使い物にならなかったであろ、と言うアンシェラ様。
今更ではあるが、私も相当な魔力持ちだが大丈夫なのだろうか?
ふと不安になって訊ねると、神や精霊と私とでは力の振るい方が違うから大丈夫なのだと言う。
ふーん、そんなもんなのか。
「我に出来る事はもうない。後はそなた達の頑張り次第じゃ」
気を付けて行くがいい。神界より見守っておるぞ――そう言って私の頭を一撫でして姿を消すアンシェラ様。
それを引き留めるように伸ばしかけたカマエルの手が、宙に彷徨った。
「ああ……神でさえ手が出せない場所……よりによって精霊の転移術が効かない厄介な場所に」
カマエルが絶望の色に染まった顔で床に膝をついた。マリーシャさんが気遣わし気にその方に手を置く。
「絶望するにはまだ早いと思いますよ……彼らの目的は、闇の精霊の愛し子を取り込む事。であるならば、母親の女性とハニエルさんは人質として利用価値があります。直ぐに殺される事は無い筈……」
「まだ希望がある……?」
呟くカマエルの背中を、ライオットがバシンと叩いた。
「当たり前だろ、元気出せって! 俺達皆協力するからさ!」
「ええ、私達も手を貸しますから。皆で協力すれば、きっとハニエルさんを助けられますよ」
微笑むサミュエル。カマエルは一瞬泣きそうな顔になった。
「そうね……ありがとう」
皆の励ましを受けて、のろのろと立ち上がるカマエル。
スカーレットさんが溜息を吐いた。
「ここに居ても仕方ないわ。一旦、魔王城に戻りましょう」
***
"ふふん、それでこの猛き炎アラグノールの出番という訳なのだな!"
「ジュゲム、よろしくにゃー!」
誇らしげに胸を張ったドラゴンに、私は容赦無く現実を突き付ける。ジュゲムジュゲム……(略)……チョウキュウメイノチョウスケは、秒で沈んだ。
「呼び名だけでもアラグノール、アラグノールで!」と選挙のように連呼して涙目になっている。
そう、グンマールを通り抜けられるドラゴンならば、ゴトゥ島へ急ぐのにうってつけだ。
あれから魔王城に戻った後――私達一行、カマエル、魔王国の使者というメンバーで獣人国家クースゥーに向かうという結論になった。
転移で国境へ移動、正式に入国してからクースゥーの都へ再度転移。
獣人国家の王に協力を求め、クースゥー内でのハニエル・モミジ母娘の捜索の許可を得た後――可能な限りギリギリのラインに転移し、そこからドラゴンに乗ってゴトゥ島へと向かう。
「それが一番早くて問題が起こり難いだろう」と言ったのはスカーレットさん。
カマエルは許可を差し置いてでも探しに行きたいようだったが、皆に諭されて渋々承諾した。
クースゥーへはドラゴンの背に乗って向かう、という建前である。
人数分のドラゴン含め結構大所帯なので、転移術はティリオン、そして私と契約をした闇の精霊王が共同で力を合わせて行うことが決まった。
ライオット達が戻った後、私は見たことを話した。
闇の神アンシェラ様が、「行き先はゴトゥ島であろうの」と静かに告げる。
「あの者共は邪神信仰集団よ。彼奴らが持っていた装置に見覚えがあると思うたが、あれは古代の遺物。まさかまだ残っていたとは思いも寄らなんだ。精霊王であろうとも封じることが出来る代物での――光の精霊王も、封じられてしまっておる」
その言葉にカマエルがムンクの叫びを上げた。
「では、ハニエル殿下は今、碌な攻撃手段も防御手段も無く、無防備な状態に!」
そこへ、ティリオンが邪神信仰集団については文献で読んだ事がある、と発言する。
「ただ、何百年も昔に活動していたが、危険視されて徹底的な排斥・弾圧の末に消えたという歴史上の話だ」
本当は消えたのではなく逃げて生き残っていたのだな、と続けるティリオン。
アンシェラ様が頷いた。「古代装置で神や精霊の目を欺いて、グンマールやゴトゥ島のような魔力渦巻く特殊な地に潜んでいたのであろうな」
「ゴトゥ島に捕まって居るなら、助けに行けば良いにゃ」
「ニャンコ。問題は、かの地は精霊王はおろか、我もイーラもおいそれと手が出せぬということじゃ。魔力が満ち過ぎていて与える影響力が大き過ぎる故に」
グンマールでも精霊は使い物にならなかったであろ、と言うアンシェラ様。
今更ではあるが、私も相当な魔力持ちだが大丈夫なのだろうか?
ふと不安になって訊ねると、神や精霊と私とでは力の振るい方が違うから大丈夫なのだと言う。
ふーん、そんなもんなのか。
「我に出来る事はもうない。後はそなた達の頑張り次第じゃ」
気を付けて行くがいい。神界より見守っておるぞ――そう言って私の頭を一撫でして姿を消すアンシェラ様。
それを引き留めるように伸ばしかけたカマエルの手が、宙に彷徨った。
「ああ……神でさえ手が出せない場所……よりによって精霊の転移術が効かない厄介な場所に」
カマエルが絶望の色に染まった顔で床に膝をついた。マリーシャさんが気遣わし気にその方に手を置く。
「絶望するにはまだ早いと思いますよ……彼らの目的は、闇の精霊の愛し子を取り込む事。であるならば、母親の女性とハニエルさんは人質として利用価値があります。直ぐに殺される事は無い筈……」
「まだ希望がある……?」
呟くカマエルの背中を、ライオットがバシンと叩いた。
「当たり前だろ、元気出せって! 俺達皆協力するからさ!」
「ええ、私達も手を貸しますから。皆で協力すれば、きっとハニエルさんを助けられますよ」
微笑むサミュエル。カマエルは一瞬泣きそうな顔になった。
「そうね……ありがとう」
皆の励ましを受けて、のろのろと立ち上がるカマエル。
スカーレットさんが溜息を吐いた。
「ここに居ても仕方ないわ。一旦、魔王城に戻りましょう」
***
"ふふん、それでこの猛き炎アラグノールの出番という訳なのだな!"
「ジュゲム、よろしくにゃー!」
誇らしげに胸を張ったドラゴンに、私は容赦無く現実を突き付ける。ジュゲムジュゲム……(略)……チョウキュウメイノチョウスケは、秒で沈んだ。
「呼び名だけでもアラグノール、アラグノールで!」と選挙のように連呼して涙目になっている。
そう、グンマールを通り抜けられるドラゴンならば、ゴトゥ島へ急ぐのにうってつけだ。
あれから魔王城に戻った後――私達一行、カマエル、魔王国の使者というメンバーで獣人国家クースゥーに向かうという結論になった。
転移で国境へ移動、正式に入国してからクースゥーの都へ再度転移。
獣人国家の王に協力を求め、クースゥー内でのハニエル・モミジ母娘の捜索の許可を得た後――可能な限りギリギリのラインに転移し、そこからドラゴンに乗ってゴトゥ島へと向かう。
「それが一番早くて問題が起こり難いだろう」と言ったのはスカーレットさん。
カマエルは許可を差し置いてでも探しに行きたいようだったが、皆に諭されて渋々承諾した。
クースゥーへはドラゴンの背に乗って向かう、という建前である。
人数分のドラゴン含め結構大所帯なので、転移術はティリオン、そして私と契約をした闇の精霊王が共同で力を合わせて行うことが決まった。
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