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【2】ちーとにゃんことカミを巡る奇しき不可思議大冒険!
6にゃー
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「……あれかにゃ?」
私の視線の先には、真っ白な翼の生えた男性が櫛を売っていた。身形は古代ギリシャっぽい服装で質素だが、金髪の長い髪をゆったりと編み込んで肩に流している。なかなかの美男子である。
しかしそんな美貌にも関わらず、人々は素通りして行く。
彼は行き交う人々をじっと観察しているようだった。
そこへスィルが戻って来る。
「ニャンコ、どこを見ているの?」
「あの翼の生えた人にゃ」
指差すと、スィルは串焼きを渡してくれながらそちらを見、「ああ、翼人ね」とクスリと笑った。
「天使じゃないのかにゃ?」
「あまり獣人と交流の無い時代はそう思われていたらしいわ。でも今は鳥の獣人って分かっているから翼人って言うのよ。翼人は翼がある分獣人の中でも独立して国を作っているの。天空の浮島で暮らしているんですって」
「天空の浮島……行ってみたいにゃー」
ラ〇ュタみたいなものだろうか。翼が無ければ行けない場所なのだろうと思う。
パクリと串焼きをほうばると、少しピリ辛で香ばしい肉の味が口いっぱいに広がった。
近くではおっさん二人がお酒らしきものを片手に同じ串焼きを食べながら上機嫌にくっちゃべっている。
「その内機会があれば皆で行きましょ。それで、あの翼人がどうかしたの?」
「シルフィードが言ってたにゃ……あの人が櫛を売ってるらしいのにゃ」
「な、何ですって!?」
私とスィルは串焼きを食べつつ、共に翼人のイケメンを観察する事にした。
暫くすると、スィルも違和感に気付く。
「……おかしいわね。あの人、他の人には見えていないのかしら?」
「そうにゃ。皆ちらりとも見ないのにゃ」
不思議に思っていると、ある瞬間に動きがあった。
彼が通行人に声を掛けたのだ。
手に櫛らしき物を持っている。売り込みをしているようだ。
声を掛けられた通行人は例に漏れず薄毛のおっさんだった。
翼人のイケメンがおっさんと話している間、通行人――特に若い女性達が翼人の美貌にきゃあきゃあ言っていたりしている。
おっさんは結局櫛を買ったようで、幾ばくかの金をイケメンに渡した後大事そうに櫛を包んだものを懐に入れて去って行く。
しかしその後、再び彼は通行人から見えなくなったようで、若い女性達も狐につままれたような表情で立ち去って行った。
「……全く認識されない訳ではないみたいね」
スィルが独り言ちる。
動いた時だけ認識されるという事だろうか? それも変だ。どうしてだろう? あんなに光り輝くような美形なのに。
「ニャンコ、櫛を誰が売っていたのか、記憶に残らないって言ってたわよね。記憶操作。確か光か闇の――」
――そうだった! もしかして。
慌てて目を凝らすと、成る程小さな光の羽虫みたいなものが翼人の周囲に沢山飛び交っているのが見えた。
あれが光の精霊だろうか、と首を傾げた時。
"ニャンコ、聞こえるか……? あの者は光の精霊王の愛し子であり、その加護を得ている。
光の精霊の幻術で自分を認識し辛くしているのだ。もっとも、弱いものだから精霊の愛し子には見えているが"
唐突に、光の神イーラ様の声が脳内の木霊した。
いきなり過ぎてビックリした私は思わず。
「『光の精霊』にゃ!?」
"あっ――"
うっかり魔術言語でそれを口にしてしまった瞬間、M84スタンネグレードばりの閃光がその周辺一帯を支配したのだった。
***
"ちょっとー! ニャンコ、いきなり光の精霊王呼ぶなんて危ないじゃないー! 危うくスィルの目がやられるところだったわー!"
風の精霊王シルフィードが激おこである。あの瞬間、咄嗟に大風を吹き付けてスィルの目を閉じさせたらしい。
光の神の唐突な声掛けに驚いたとはいえ、流石に悪い事をした。私は素直に頭を下げる。
「ご、ごめんなさいにゃ……」
"まあまあ、シルフィード。私もいけなかったのですわ。蜜のような魔力に力の制御をうっかり忘れてしまって。だからその辺で"
凛とした玲瓏なる声が取り成す。
スィルはと言えば、ポカンと呆けたように顕現した光の精霊王を見つめていた。
「お初にお目にかかりますわ。イーラ様から直接加護を受け取られていたので、これまでお会いする機会に恵まれずご挨拶が遅れました。私、光の精霊王リュミーネと申しますの。よしなに"
光そのものを織りなした髪に黄金の瞳――光の精霊王はどこぞの貴族令嬢かと言わんばかりのロココ調ドレスを身に纏っていた。
彼女はドレスを摘まみ、腰をかがめて華麗な所作でカーテシーを決めている。
お嬢様気質のミミと気が合いそうだ。
「初めましてにゃ! ご丁寧にありがとうございましゅにゃ。わたくちはニャンコ=コネコ、よろしくお願いしましゅにゃ!」
気を取り直してこちらも負けじと幼児ドレスでカーテシー返しだ! と言っても摘まみ上げる程の布的な余裕は無いがな!
"それにしてもニャンコ様の魔力は底なしで驚きましたわ。心地良さの余り、うっかりこんな事になってしまって……"
「そっ、そうにゃ! 何とかしないといけないのにゃ!」
その辺一帯に居た人達は何が起こったのかも分からず突然の閃光に見舞われて盲目になってしまったらしい。
通行人達があちこちで呻きながら蹲っている。
私は一筋の冷や汗が背中に流れるのを感じた。
こ、これは……早急なる治療と証拠隠滅が必要だ。
私の視線の先には、真っ白な翼の生えた男性が櫛を売っていた。身形は古代ギリシャっぽい服装で質素だが、金髪の長い髪をゆったりと編み込んで肩に流している。なかなかの美男子である。
しかしそんな美貌にも関わらず、人々は素通りして行く。
彼は行き交う人々をじっと観察しているようだった。
そこへスィルが戻って来る。
「ニャンコ、どこを見ているの?」
「あの翼の生えた人にゃ」
指差すと、スィルは串焼きを渡してくれながらそちらを見、「ああ、翼人ね」とクスリと笑った。
「天使じゃないのかにゃ?」
「あまり獣人と交流の無い時代はそう思われていたらしいわ。でも今は鳥の獣人って分かっているから翼人って言うのよ。翼人は翼がある分獣人の中でも独立して国を作っているの。天空の浮島で暮らしているんですって」
「天空の浮島……行ってみたいにゃー」
ラ〇ュタみたいなものだろうか。翼が無ければ行けない場所なのだろうと思う。
パクリと串焼きをほうばると、少しピリ辛で香ばしい肉の味が口いっぱいに広がった。
近くではおっさん二人がお酒らしきものを片手に同じ串焼きを食べながら上機嫌にくっちゃべっている。
「その内機会があれば皆で行きましょ。それで、あの翼人がどうかしたの?」
「シルフィードが言ってたにゃ……あの人が櫛を売ってるらしいのにゃ」
「な、何ですって!?」
私とスィルは串焼きを食べつつ、共に翼人のイケメンを観察する事にした。
暫くすると、スィルも違和感に気付く。
「……おかしいわね。あの人、他の人には見えていないのかしら?」
「そうにゃ。皆ちらりとも見ないのにゃ」
不思議に思っていると、ある瞬間に動きがあった。
彼が通行人に声を掛けたのだ。
手に櫛らしき物を持っている。売り込みをしているようだ。
声を掛けられた通行人は例に漏れず薄毛のおっさんだった。
翼人のイケメンがおっさんと話している間、通行人――特に若い女性達が翼人の美貌にきゃあきゃあ言っていたりしている。
おっさんは結局櫛を買ったようで、幾ばくかの金をイケメンに渡した後大事そうに櫛を包んだものを懐に入れて去って行く。
しかしその後、再び彼は通行人から見えなくなったようで、若い女性達も狐につままれたような表情で立ち去って行った。
「……全く認識されない訳ではないみたいね」
スィルが独り言ちる。
動いた時だけ認識されるという事だろうか? それも変だ。どうしてだろう? あんなに光り輝くような美形なのに。
「ニャンコ、櫛を誰が売っていたのか、記憶に残らないって言ってたわよね。記憶操作。確か光か闇の――」
――そうだった! もしかして。
慌てて目を凝らすと、成る程小さな光の羽虫みたいなものが翼人の周囲に沢山飛び交っているのが見えた。
あれが光の精霊だろうか、と首を傾げた時。
"ニャンコ、聞こえるか……? あの者は光の精霊王の愛し子であり、その加護を得ている。
光の精霊の幻術で自分を認識し辛くしているのだ。もっとも、弱いものだから精霊の愛し子には見えているが"
唐突に、光の神イーラ様の声が脳内の木霊した。
いきなり過ぎてビックリした私は思わず。
「『光の精霊』にゃ!?」
"あっ――"
うっかり魔術言語でそれを口にしてしまった瞬間、M84スタンネグレードばりの閃光がその周辺一帯を支配したのだった。
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"ちょっとー! ニャンコ、いきなり光の精霊王呼ぶなんて危ないじゃないー! 危うくスィルの目がやられるところだったわー!"
風の精霊王シルフィードが激おこである。あの瞬間、咄嗟に大風を吹き付けてスィルの目を閉じさせたらしい。
光の神の唐突な声掛けに驚いたとはいえ、流石に悪い事をした。私は素直に頭を下げる。
「ご、ごめんなさいにゃ……」
"まあまあ、シルフィード。私もいけなかったのですわ。蜜のような魔力に力の制御をうっかり忘れてしまって。だからその辺で"
凛とした玲瓏なる声が取り成す。
スィルはと言えば、ポカンと呆けたように顕現した光の精霊王を見つめていた。
「お初にお目にかかりますわ。イーラ様から直接加護を受け取られていたので、これまでお会いする機会に恵まれずご挨拶が遅れました。私、光の精霊王リュミーネと申しますの。よしなに"
光そのものを織りなした髪に黄金の瞳――光の精霊王はどこぞの貴族令嬢かと言わんばかりのロココ調ドレスを身に纏っていた。
彼女はドレスを摘まみ、腰をかがめて華麗な所作でカーテシーを決めている。
お嬢様気質のミミと気が合いそうだ。
「初めましてにゃ! ご丁寧にありがとうございましゅにゃ。わたくちはニャンコ=コネコ、よろしくお願いしましゅにゃ!」
気を取り直してこちらも負けじと幼児ドレスでカーテシー返しだ! と言っても摘まみ上げる程の布的な余裕は無いがな!
"それにしてもニャンコ様の魔力は底なしで驚きましたわ。心地良さの余り、うっかりこんな事になってしまって……"
「そっ、そうにゃ! 何とかしないといけないのにゃ!」
その辺一帯に居た人達は何が起こったのかも分からず突然の閃光に見舞われて盲目になってしまったらしい。
通行人達があちこちで呻きながら蹲っている。
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