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【2】ちーとにゃんことカミを巡る奇しき不可思議大冒険!

2にゃー

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 「スカーレットしゃん、大丈夫かにゃー!?」

 私はノームの転移術である泥から飛び出すと、チリチリ、と首の鈴を鳴らしながら一目散にスカーレットさんに駆け寄った。
 こないだ魔王国の経済状況良くないって相談受けてたから、人間との交易をお勧めしておいたんだけど、その事で詰め寄られていると思ったからだ。
 直ぐに廊下を走って来る数人の足音。

 「スカーレットさん、助太刀は必要か!?」

 「魔族至上主義者の反乱ってところなのかしら」

 「ライオット、他に仲間は居ない様です。しかし油断しないでください」

 「私は魔族と人族は分かり合えると信じています、こんな馬鹿な事はおやめなさい!」

 「……ん?」

 剣士のライオット=コルト、エルフのスィル=イシュランドール、魔術師サミュエル=シード、光の神官マリーシャ=メドセナ、ダークエルフのティリオン=ギルミアース。
 私の仲間が少し遅れて駆けつけて来たのだ。

 「待て、落ち着けお前ら!」

 ティリオンの冷静なツッコミ。
 私を含む一同、大臣達を見詰めた。

 奇妙な静寂の後。

 「「「「ぎゃああああああ――っっっ」」」」

 大臣達は阿鼻叫喚と言った態で頭を腕で庇った。
 まるでこの世の終わりが来たかのような発狂ぶりである。

 しかし面積的に庇いきれていない。

 「にゃー…ハゲてるのかにゃー?」

 腕の隙間から見えているのは、円形ハゲ、バーコードハゲ、ツルッパゲ……色んなハゲの博覧会。
 私の言葉に大臣達はシクシクとすすり泣きを始めた。

 "なんだよ、何も泣く事ないだろー?"
 "ごめんなさい、ちょっとやりすぎたわー? そうだっ! ハゲをハゲまそ、ハーゲッ! ハーゲッ!"

 シルフィードとサラマンダーがタッグを組み、精霊達とマイムマイムを踊りだす。

 「ぐふっ…ゴホッ……ゲホン、ゲホン!」

 この中で私以外に唯一精霊の声が聞こえるスカーレットさんは、必死に笑いを誤魔化していた。


***


 「髪が抜ける奇病……?」

 「そうです、この私も、ここにいる皆全員髪の毛が抜けて行っておるのでございます!うう……」

 大臣達の啜り泣きとスカーレットさんの我慢が落ち着いた後で彼らの訴えを改めて聞く。
 どうも髪の毛が抜ける変な病気らしい。

 何だろうな、でも髪の毛が抜ける病気って。

 「髪の毛が抜けるってヤバくないか?」

 「ちょっと、ライオット!」

 ライオットとスィルの会話に大臣達の顔色が悪くなる。

 「魔族と人族の病気は違うのでは?」

 「髪が抜ける以外で何か他に症状はあるのでしょうか?」

 サミュエルとマリーシャが問いかけると、貴族の一人が思案して、「……酷く疲れやすくなって魔力が減退した事、でしょうか」と答えた。

 疲れやすくなって、ってストレスだろうか。
 私が知っているものは、

 「もちかして、ストレシュからくるダツモウショウとかかにゃー?」

 円形脱毛症。それなら命には関わらないだろうけど。
 私が言うと、スカーレットさんが憐みと申し訳無さが綯交(ないま)ぜになった表情を浮かべた。

 「……申し訳なかったわ、あなた達がそんなに仕事にストレスを感じているとは知らなかったものだから。代替わりして隠居する?」

 言って、目を伏せるスカーレットさんに魔王国財務大臣は「違います!」と泣き叫ぶ。

 「私共だけではございません、市井からも髪の毛が抜けている奇病が流行っているとの報告が上がっております。しかも、ここ数か月で、です!!!」

 「流行って、感染うつるの、それ!?」

 近衛のお姉さんの一人が言うと、皆がずざっと一斉に引いた。
 スカーレットさんも顔を引き攣らせたが、咳払いをして気を取り直す。

 「……それは確かにおかしいわね。調査はしているの? 原因の究明は? 心当たりはあるのかしら?」

 「それが……恐らくこれだと思うのですが……」

 大臣は懐から布で覆われた小さなものを取り出した。
 布を広げて見せると、そこには。

 「櫛……?」

 「はい……私も、この者らも皆、これと同じような櫛を数か月前に手に入れているのでございます」

 「良く見せてくれるかしら?」

 「はい、では失礼を……」

 アントム財務大臣は言って、それを持ってスカーレットさんに近づこうとし――

 「おっ、お待ちください、陛下! この櫛が原因であるとはまだ分かりません。感染するのであれば危険です!」

 近衛のお姉さんに止められていた。

 「ひ、酷い……!」

 涙目になる大臣その他。エンガチョ扱いである。
 近衛のお姉さん達は誰が櫛を受け取って陛下に近づくかで凄い形相でジャンケンを始め。

 結局、大臣達がおんおん声を上げて泣き始めて可哀想になったので、チートである私が「しょうがないにゃー」と手を挙げることにした。
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