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【1】ちーとにゃんこと世界樹の茶畑ドタバタドラゴン大戦争!

79にゃん

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 「エアルベスしゃん、わたちたちも戦えるにゃっ!」

 「チカラはにゃいけどかみちゅいたりツメでひっかくくらいの事はできるにゃっ!」

 ケット・シー達がエアルベスさんに近づいて来て次々に口にする。
 職員さんの一人がコップを差し出した。

 「世界樹のお茶です。水で濾しただけのものですが、少しはお力が回復されるかと」

 「エアルベス様だけに戦わせられません。私達も盾になる事くらいは出来ます!」

 その場にいる全員が、決意の目をしていた。

 「みなさん……」

 エアルベスさんが涙ぐむ。

 「――命の瀬戸際にあっては王も民もあるまい。ケット・シーでさえ戦おうというのだ。余こそが戦わずして何が王か」

 見ると、イシュラエア王レグザックが木の棒を手に入り口に立っていた。
 職員さんが慌てて道を開け頭を下げる。

 「よい、礼なぞ要らぬ。エアルベス、そなた一人に大きな負担を強いてすまなかった」

 頭を下げるイシュラエア王。

 「これよりは余も共に戦おう! レグザック=ギル=ヴィンザーク=イシュラエアは自身の死を以て王子アルベルト=ザック=クラリノア=イシュラエアに王位を譲る事を宣言す!」

 レグザック王は背後にいる青年を振り向いた。「――よいな、アルベルト。そなたは地下洞窟に戻り、その剣で母と妹姫を守るがよい。余が戻らねば、そなたが王となるのだ」

 「しかし、父上!」

 突然の王位の譲渡。
 不安と驚愕の混乱で言い募る、どこか気弱で頼りなさそうなアルベルト王子を王は睨み付けた。

 「しかしも案山子もないわ! そなたらをなかなか顧みてやれなんだが、王として十分な教育は与えて来たつもりだ。守るべき者がおる、しゃんとせい! いざとなれば――覚悟は出来ておるな?」

 言外に万一の事があれば自害せよと王様は言う。王子様は辛そうに項垂れた。

 「余には光と闇の御子もついておる――武器などこの棒切れ一つで十分よ。久々の戦、血が滾るわ!」

 王様はぶおん、と音を立てて棒をしならせる。

 ――王様も、みんなも、死ぬ気だ。死ぬ気で戦おうとしている。

 敵兵は外にもいっぱいいる。大神殿の中の兵士を倒しても次が湧いてくるだろう。
 いっそ食中毒魔法を使おうかと思ったけれど、こんな光景を見ていると皆の気持ちを無駄にはしたくない。
 それに――二度とクーデターなんか起こせないように心を完璧に折る方がいいだろう。
 私はそう思って計画を変更することにした。

 「王しゃまっ、わたちにグンのトウソツケンをちょーらいにゃっ!!!」

 突然の申し出にイシュラエア王はにやりと笑った。

 「ふふふ、何とも頼もしき事よ。ここにいる者のほとんどがケット・シーばかり、ならば将もケット・シーで良かろう――ニャンコ=コネコ。そなたをイシュラエア王国元帥に抜擢する」

 「王しゃま、ありがとうにゃっ!」

 私はぴょこんと一礼すると、エアルベスさんの隣に立ち皆の注意をひきつける。

 「……ケット・シーのみんな。命は惜しくないのかにゃ?」

 エアルベスしゃんを守れるなら死んでも本望にゃ! 等と口ぐちに言う。

 「よく言ったにゃ! なら、わたちがみんなに戦える力をあげるにゃっ!」

 私はケット・シー達に整列するように言う。
 落ちていた木の枝を拾って宙に浮き上がると、仰々しく両手を広げて全員に呪文にほんごを使った。

 「『大神殿内に入ったギュンター公爵に味方する人間は全員酷い猫アレルギーになる』にゃ! 『ケット・シー達全員とイシュラエア王は刀と魔法をはじく強化肉体と敵を全員倒し切るまで続くスタミナと一撃で軍人を気絶させる力を持つ』にゃ! ――これでケット・シーのみんなと王しゃまは敵をやすやすと打ち破れるようになったにゃっ!」

 木の枝を采配に見立てる。ミミとその周辺にいるケット・シーに先端を向けた。

 「ミミと他数人はエアルベスしゃんを守ってちょーらいにゃ!」

 ミミたちが「わかったにゃっ!」と返事をする。
 続いて敵がいる方向をぴっと指し示した。

 「みんな、わたちがセンジンを切るにゃ! 王しゃまはわたちの後ろに!タレミミとハチクロは左右に分かれてついてきて、他のみんなも適当にタレミミとハチクロに続いてちょーらいにゃっ!」

 言い終わって地に足を付ける。
 職員さん達が慌てて口を開いた。

 「――ニャンコちゃん、私達はどうすれば!?」

 おおっと、忘れてた!

 「『ケット・シー保護区の職員全員は刀と魔法をはじく強化肉体と人を癒せる光の神イーラ様の力を全ての敵を倒し切るまで与えられる』にゃ! ――職員しゃん達はケット・シーのみんなの後ろから傷ついた人を探してイーラしゃまに癒しをお願いしてほしいにゃっ! 今わたちがイーラしゃまにお願いしたから、使えるはずなのにゃ!」

 「――分かりました。」

 これで、よし!

 私は姿勢を低くしてスタートダッシュの構えを取る。

 「さあ、ツメとキバの用意はいいかにゃ? ――ケット・シーが近づいたらクシャミをする人間がテキにゃっ! さあ行くにゃっ!!!」

 私は言うなり駆け出した。
 魔法をかけたといっても、目に見えない。
 その効果を先陣という形で実践してやらないと皆も安心して存分に動けないだろう。

 "じゃあわしらはマニュエル軍を呼び出す事に専念しますじゃー!"

 ノームの言葉に兵士を飲み込もうとしている泥がストップする。
 埋まっている兵士をすり抜け、ケット・シーを捕まえようとしてきた十数人もの兵士。

 「にゃああああああああっ!!!!」

 鬨の声を上げながら私は近づき――

 「真のネコパンチ! カツモクして見るのにゃあああああああっ――!!!」

 ぱああああん!

 高速ネコパンチを繰り出して、まとめて吹き飛ばしてやった!
 兵士達がうぎゃあああ、と情けない悲鳴を上げながら高く宙を舞う。

 ケット・シー達が凄いにゃー! と歓声を上げて。

 ケット・シー+α無双がここに開幕した。
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