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【1】ちーとにゃんこと世界樹の茶畑ドタバタドラゴン大戦争!
57にゃん
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「――遅い。エアルベスは何をしているのでしょう」
光の最高司祭ヴォードは少し苛々していた。
ニャンコ=コネコを連れてくるように命じてから、既に二時間は経過している。
闇の教皇クリステルに茶を饗していたが、それの限界がある。
「私が見てまいりましょうか」
マリーシャが申し出る。
しかし、クリステルがそれには及びませんと言って立ち上がった。
「ここでじっとしているよりは直接行った方が早い。ティリオン、行きましょう」
「は」
「い、いや、しばしお待ちを! 客人一人に行かせる訳にはまいりません。私も案内がてら、参りましょう――」
最高司祭は慌てて目配せをして立ち上がった。
神殿騎士が集い、扉を開ける。
一行が保護区の廊下まで来ると、職員やケット・シーが入り乱れて騒がしい様子だった。
「何事ですか!?」
神殿騎士が近くに居た職員を捕まえて聞くと、ニャンコ=コネコが行方不明であり皆で大捜索をしているとの事だった。
他の場所は探しつくしたし、残るは世界樹の畑であると言う。
「行方不明…?」
「ここは光の神殿――闇の神の御力を発するものは私を含めて限られている筈――探れば方向なりとも分かるかも知れません」
クリステルは祈りを捧げて闇の神力を探りだす。
「二つ――世界樹の畑の方に、一つ。残りは…こちらに近づいている?」
言って、教皇は瞼を上げるとその方向に目を向ける。
確かに何者かの足音が聞こえる――その場に居た全員もつられてそちらを見つめた。
***
一人はイシュラエア王国の貴族ギュンター公爵、もう一人はローブがはだけ、神官服が露わになっている――闇の神官であった。
恰幅の良いギュンター公爵と細身の神官。
彼らは何故かワルツを踊りつつ、実に軽やかなステップを踏みながらこちらへやってくる。
ちなみに女役はギュンター公爵であった。
何故ワルツを踊っているんだろう。
貴族と闇の神官の奇妙な組み合わせ――しかも、男同士。
その場に居た全員、あまりの光景に呆気に取られていた。
「これはギュンター公爵殿。神殿はダンスホールではございません。闇の神官と、何をしていらっしゃるのか」
自分達を見ても尚踊り続ける彼ら。
真っ先に我を取り戻したヴォードが問いただす。
なのに彼らは汗をかき息が上がりながらも一向にダンスを止めない。
「――スロー、スロー、クイック、クイック、クイック、はい、スロー、スロー、スロー、クイック、そこでターン!――ははは、なかなか上手いですね」
パン・パン・パン・パン……。
さながらダンスを教えている教師のように踊るリズムに合わせて教皇が手を叩きだす。
確かに上手である。
しかし男同士だからその上手さも却って滑稽だった。
クリステルの手拍子や声があまりにダンスに合っていた為、職員やケット・シー達はクスクスと笑い出した。
「ほう…その顔には見覚えがある。追放になった過激派の一員――確か、ヴァラースではないか。このようなところで王国の貴族と優雅にダンスとは、イーラ教に宗旨替えでもするのかな?」
ティリオンがせせら笑う。
闇の神官――ヴァラースは怒りの叫びを上げた。
「貴様、ティリオン! そもそも貴様が裏切らなければロドリゲス殿は!」
「ヴ、ヴォード殿! 我は忌まわしき闇の呪いにかかっておるようだ! 何とか助けてくだされ!」
このイシュラエア王国ではイーラ教が国教であり、貴族もそれに準じなければならない。
破門されれば一巻の終わりである。
ギュンター公爵はヴァラースを切り捨てることにしたようだ。
「はぁ!? 何を言われるのです――これはそもそもドラゴンの呪いではないですか!」
突然の公爵の裏切りに闇の神官は悲鳴を上げた。
そこへエアルベスが駆けて来る。
「――エアルベスさん!?」
エアルベスは最高司祭や教皇達の姿には目もくれず、一目散に集団の脇をすり抜けて世界樹の畑へ通じる出口に飛び込んで行った。
続いてライオット達が走ってきた。
ライオットはそのままエアルベスを追い、サミュエルがマリーシャの所で止まる。
「マリーシャ殿! ニャンコは世界樹の畑の地下洞窟に居ます――それもドラゴンと一緒に!」
「――何ですって!?」
その場に居たものは息を呑み、廊下は静まり返る。
ただ、約二名がワルツを踊り続ける足音だけが空しく響いていた。
光の最高司祭ヴォードは少し苛々していた。
ニャンコ=コネコを連れてくるように命じてから、既に二時間は経過している。
闇の教皇クリステルに茶を饗していたが、それの限界がある。
「私が見てまいりましょうか」
マリーシャが申し出る。
しかし、クリステルがそれには及びませんと言って立ち上がった。
「ここでじっとしているよりは直接行った方が早い。ティリオン、行きましょう」
「は」
「い、いや、しばしお待ちを! 客人一人に行かせる訳にはまいりません。私も案内がてら、参りましょう――」
最高司祭は慌てて目配せをして立ち上がった。
神殿騎士が集い、扉を開ける。
一行が保護区の廊下まで来ると、職員やケット・シーが入り乱れて騒がしい様子だった。
「何事ですか!?」
神殿騎士が近くに居た職員を捕まえて聞くと、ニャンコ=コネコが行方不明であり皆で大捜索をしているとの事だった。
他の場所は探しつくしたし、残るは世界樹の畑であると言う。
「行方不明…?」
「ここは光の神殿――闇の神の御力を発するものは私を含めて限られている筈――探れば方向なりとも分かるかも知れません」
クリステルは祈りを捧げて闇の神力を探りだす。
「二つ――世界樹の畑の方に、一つ。残りは…こちらに近づいている?」
言って、教皇は瞼を上げるとその方向に目を向ける。
確かに何者かの足音が聞こえる――その場に居た全員もつられてそちらを見つめた。
***
一人はイシュラエア王国の貴族ギュンター公爵、もう一人はローブがはだけ、神官服が露わになっている――闇の神官であった。
恰幅の良いギュンター公爵と細身の神官。
彼らは何故かワルツを踊りつつ、実に軽やかなステップを踏みながらこちらへやってくる。
ちなみに女役はギュンター公爵であった。
何故ワルツを踊っているんだろう。
貴族と闇の神官の奇妙な組み合わせ――しかも、男同士。
その場に居た全員、あまりの光景に呆気に取られていた。
「これはギュンター公爵殿。神殿はダンスホールではございません。闇の神官と、何をしていらっしゃるのか」
自分達を見ても尚踊り続ける彼ら。
真っ先に我を取り戻したヴォードが問いただす。
なのに彼らは汗をかき息が上がりながらも一向にダンスを止めない。
「――スロー、スロー、クイック、クイック、クイック、はい、スロー、スロー、スロー、クイック、そこでターン!――ははは、なかなか上手いですね」
パン・パン・パン・パン……。
さながらダンスを教えている教師のように踊るリズムに合わせて教皇が手を叩きだす。
確かに上手である。
しかし男同士だからその上手さも却って滑稽だった。
クリステルの手拍子や声があまりにダンスに合っていた為、職員やケット・シー達はクスクスと笑い出した。
「ほう…その顔には見覚えがある。追放になった過激派の一員――確か、ヴァラースではないか。このようなところで王国の貴族と優雅にダンスとは、イーラ教に宗旨替えでもするのかな?」
ティリオンがせせら笑う。
闇の神官――ヴァラースは怒りの叫びを上げた。
「貴様、ティリオン! そもそも貴様が裏切らなければロドリゲス殿は!」
「ヴ、ヴォード殿! 我は忌まわしき闇の呪いにかかっておるようだ! 何とか助けてくだされ!」
このイシュラエア王国ではイーラ教が国教であり、貴族もそれに準じなければならない。
破門されれば一巻の終わりである。
ギュンター公爵はヴァラースを切り捨てることにしたようだ。
「はぁ!? 何を言われるのです――これはそもそもドラゴンの呪いではないですか!」
突然の公爵の裏切りに闇の神官は悲鳴を上げた。
そこへエアルベスが駆けて来る。
「――エアルベスさん!?」
エアルベスは最高司祭や教皇達の姿には目もくれず、一目散に集団の脇をすり抜けて世界樹の畑へ通じる出口に飛び込んで行った。
続いてライオット達が走ってきた。
ライオットはそのままエアルベスを追い、サミュエルがマリーシャの所で止まる。
「マリーシャ殿! ニャンコは世界樹の畑の地下洞窟に居ます――それもドラゴンと一緒に!」
「――何ですって!?」
その場に居たものは息を呑み、廊下は静まり返る。
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