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【1】ちーとにゃんこと世界樹の茶畑ドタバタドラゴン大戦争!

38にゃん

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 「……先程は雇い主が失礼致しました」

 スカーレットさんがライオット達に優雅に一礼する。

 「雇い主?」

 「はい。私達は、正確にはあの方のお父上との雇用契約を結んでおります」

 「成る程、そういう事ですか」

 サミュエルが納得したように呟く。
 問題児である息子の面倒を見るために雇われた――他の皆も同じ事を思ったのだろう、疑問が解けたような表情になった。

 「せめて、お詫びと申しては何ですが…もし宜しければ、ダンスを楽しまれている間、私がこのお嬢様のお相手をさせて頂きたいのですが…。勿論、皆様の目の届く場所にいる事はお約束致します」

 冒険者達は顔を見合わせる。
 スィルとマリーシャの表情には、少し心配が残っているようだった。

 「お言葉に甘えてはどうでしょうか? 私もおりますし」

 マニュエル様が助け舟を出した。
 ちらり、とスカーレットさんを見上げる。

 "俺もニャンコと話してみたいんだけどな!"

 サラマンダーの言葉。スカーレットさんの琥珀の瞳と視線が交わりあう。
 何だろう、彼女は私と話したがってるのかな?
 ひとまずお誘いに乗ってみる事にする。

 「わたち、お姉しゃんと一緒にいい子にして待ってるにゃっ! 踊ってきて欲しいにゃっ!」

 私の言葉に、彼らは分かった、と言ってようやくダンスの輪に混じるべく動き出した。
 その時を見計らって、給仕の人が私への食事を持ってきてくれた。
 受け取って彼にお礼を言ってから、私達はマニュエル様からよく見える、あまり人が居ない食事スペースへ移動した。
 マニュエル様は私達が腰を下ろしたのを見ると、安心したように他の客の応対をし始める。

 「……さて、これでゆっくりお話が出来るわね」

 "ニャンコについててって愛し子に言われちゃったー!"

 シルフィードが飛んできた。
 スカーレットさんは「どうぞご自由に――あのエルフの女性は風の愛し子だったのね」とシルフィードに会釈してみせる。

 "そう言ってくれると助かるわー。ところで、火の愛し子は魔族って聞いてたけどー、何で人間の国にいるのー?"

 風の精霊王によって、特大級の爆弾が落とされた。


***


 「にゃっ!? マゾク?」

 私は思わず飛び上がった。
 魔族って、人間と敵対してるという、あの?

 「ええ、彼女の言うとおり私は魔族よ。今は人間に化けているの」

 "本当の姿は牙と角があるけどな"

 でも、外見的には人間と変わらない…?
 マジマジと見詰めたら、彼女らはそう説明した。

 「人間の国にいるのは、ちょっと探し物をしているの」

 「何を探しているのにゃ?」

 "――ドラゴンだ。魔族が管理しているドラゴンが一匹居なくなっちまったんだ。ある日、突然に"

 「力の強すぎる生き物だから慣らして飼育管理しているの。魔族領はほうぼう探したわ。だけど居なかった――目撃情報さえなかったの。まさかと思って火の精霊このこたちの力を借りたら、ドラゴンを手に入れたという人間を見つけてね。それが――」

 "あの馬鹿男の親父だったって訳だ。"

 なんと!

 「…それで私達は人間に身をやつしてこの国に来たんだけど、ギュンター公爵は警戒心が強くてね。だから、信頼を得るためにまずその息子に近づいたの。ご子息を危険から守りますって言ってね。
 碌でもない男だけど、父親の信頼を得るためには利用できる。ただ、ずっと皆無表情でいたのは、そうしないとあのクズ男に対する殺意を我慢できないからよっ!」

 「そういう事だったのにゃー…」

 説明している内に、ヒートアップしていくスカーレットさん。
 相当フラストレーション溜まっていたんだね…。

 私は彼女の肩をポンと叩いて労わってあげた。
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