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【1】ちーとにゃんこと世界樹の茶畑ドタバタドラゴン大戦争!

23にゃん

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 ダークエルフの言葉に、闇の神官ロドリゲスは忌々しそうに舌打ちをした。

 「戦ってもいない奴が偉そうな口を利くな、ティリオン! お前達、こやつらを逃がさぬように囲め! ティリオン、お前は魔狼を解放し、エルフを狙え!」

 「本当にいいのか?」

 「構わん、やれ!!」

 ロドリゲスは山賊達に近い所に移動した。そして何やら精神を集中し、唱え始める。
 魔狼を繋いでいた鎖が消えうせ、戦いの火蓋が切られた。

 スィルは女だてらにダークエルフの男と白兵戦を繰り広げていた。ライオットはエルフの加勢をしたいと思うも、傷を増やしながら魔狼の攻撃をなんとかかわす事だけで精一杯だった。
 サミュエルはスィルやライオットの隙を狙う山賊達をもぐら叩きの如く攻撃し続けている。しかし、魔狼はライオットの努力も空しく確実にマリーシャや子供達に近づいていた。
 やがて、魔狼の口から涎が流れ始めた。子供の匂いを嗅ぎ取っているのだろう。ライオットは体力の限界を感じ始めていた。
 とうとうその瞬間が訪れた。

 苛立ちを覚えた魔狼がライオットを渾身の力で払い飛ばしたのだ。

 「ライオット!」

 彼が地面に叩き付けられると同時にスィルの悲鳴が響き渡った。ライオットの方へ向かおうとする彼女にティリオンが立ち塞がる。激昂と共にスィルは風の精霊の力を暴発させた。

 「よくも……お前達、絶対に許さない、私の全力で叩き潰してやる!! 風の精霊王シルフィード、召喚に応じて!!!」

 轟、と局地的な竜巻が吹き荒れた。


***


 闇の神アンシェラ様は、召喚に応じようとした闇の精霊王及びその他一同を力づくで押しのけて出てきたそうだ。

 「要は闇の精霊の真似事すれば良いのであろ。それに、あやつだけズルいではないかや?」

 ズルい、と言っているのはイーラ様にフルモッフされた一件である。
 今後も闇の神及び精霊の力を借りたくば、もふもふさせろ、と言う訳だ。はぁ…。
 イーラ様もそうだったけれど、この人もまともに見えて実は性格がちょっとアレそうな臭いがプンプンする。ここは早々に用件を済ませてお帰り願ったほうが良さそうである。

 「……わかったにゃ。じゃあ子供達とマリーシャしゃんを教会の中庭にでも運んで欲しいにゃ」

 マリーシャも運んでもらう事にした。子供達だけでは心許ないだろうと思い直したのだ。
 ふと闇の神官が敵なんだけどいいのかと聞くと、精霊の代わりをするだけだしあれは割とどうでもいい部類だから構わないと言う。神官、哀れ。
 戦場に視線を戻すと、魔狼がライオットを弾き飛ばす所だった。
 彼が地面に叩き付けられると同時にスィルの悲鳴。

 "てことはニャンコの護衛はここで終わりね、行ってくるわー!"

 早口で捲し立てながら張り切ったシルフィードが消える。
 同時に部屋中を飛び交っていた風の精霊達も跡形も無くなる。一気に静かになったな。
 視聴覚情報を自前に切り替える。背後にぞわぞわとしたものを感じるのは気のせいったら気のせいだ。

 「……うふふふ、これで水入らずよな。毛の柔らかさ、この肉球の匂いがたまらぬの」

 すーはーすーはー、くんかくんか。

 やっぱりアレなひとだった。
 猫の肉球の匂いがたまらないなんて、何とハイレベルなんだ…。
 アンシェラ様、少しは自重してください。ほら、あちらはえらい事になってます。

 ――ティリオン!エルフを何とかしろ!!

 ――くっ、地の精霊王ノームよ! この暴風を食い止めよっ!!!

 ダークエルフが慌てて地の精霊王ノームを呼ぶ。
 風はやや治まったものの、そのノームがシルフィードと取っ組み合いをしているのだろう、そこ彼処でバリバリと紫の放電が発生するのが見えた。

 ――し、しまった、エルフの所為で魔狼の制御が!

 ロドリゲスの慌てた声。魔狼が子供達とマリーシャに向かって!

 やばい。

 ああ、でも魔狼も操られてるっぽいよね。
 殺さず食欲を無くさせかつ無力化させるってどうすればああああ!?

 そんな思いが去来した一瞬。
 私の無意識は驚異的な早さで記憶を探ったようだった。

 「『あの魔狼は食中毒になる』にゃっ!」


 ……キューン、キューン…ゴフェ、ゴブファッ…エ゛ロエ゛ロエ゛ロエ゛ロエ゛ロエ゛ロ……

 ――ぎゃー、突然どうしたというのじゃ!?


 突如盛大にリバースを始めた魔狼。
 ああ、本当に苦しいんだよね。仕方がなかったとは言え、ごめん……。
 牡蠣に当たった時の事を思い出しながら、私はそっと合掌した。
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