上 下
12 / 105
【1】ちーとにゃんこと世界樹の茶畑ドタバタドラゴン大戦争!

12にゃん

しおりを挟む
 「――という事があったのですよ」

 「何てブッソウなのにゃ」

 宿の一階にある酒場兼レストランにて。
 私達はサミュエルからその話を聞かされた。

 「孤児ばかりを狙ったもの…」

 孤児を攫い、奴隷として奴隷商や娼館――果ては過酷な労働を強いられる鉱山などに売り飛ばす事は、王国の法律では禁じられているが、現実としてそれが100%守られた例は無い。
 痛ましい表情のマリーシャ。攫われた孤児達の行く末を憂いているのだろう。
 スィルは思案しているようだった。

 「どちらにせよ、碌でもない目的なのは変わらないわね」

 「他の、親の居る子供達は攫われなかったのですか?」

 マリーシャがそう問いかけた時。

 「あんた達ッ、茶髪に紫の瞳の、小さな男の子を見なかったかッ!?」

 血相を変えた二人の男が宿に飛び込んできた。



***



 酒場には結構お客さんが居て、突然の闖入者に騒然となる。
 私は咄嗟にサミュエルに抱き上げられていた。
 ライオットが腰をやや浮かせて右手が剣の柄に掛かっているのが見える。
 孤児、誘拐、などという言葉がざわめきの中に聞こえた。

 「親が居る子供にまで手が伸びた…という事は、子供そのものが必要…まさか、魔族か?」

 サミュエルの呟きが耳朶を打つ。魔族――そんな種族がいるのだろう。
 そして彼の口調からすると人間とはきっと敵対関係にある。
 表に出ていた宿の女将さんが旦那さんを呼ぶ。厳つい男が厨房の奥から顔を出した。

 「どうした!? ――お前は朝露亭の」

 「ドットンの旦那、エルマ坊ちゃんを見ませんでしたか? ――ああ、どうしよう――エルマ坊ちゃん。おいらがちゃんと見ていれば」

 「落ち着け――エルマ坊がどうしたんだ!?」

 半泣きになった男に宿の主人が問いただしている間に、もう一人の男が酒場を見渡した。

 「お食事中のところ、突然押しかけて大変申し訳ありません。私達は朝露亭の者です。皆様方の中に、茶髪に紫の瞳の男の子をご覧になられた方はいらっしゃいませんか? 丁度――そちらの猫のお嬢さんぐらいの背丈の子です」

 そちらの、で酒場の客の視線が一気に自分に集中した。恥ずかしさをぐっと耐える。
 しかし酒場の客の中には心当たりのある者は居なかったようで、男は肩を落として落胆した。

 「エルマ坊ちゃんは朝露亭のたった一人の跡取り息子なんです……」

 「自警団には勿論届けているよな。ギルドには捜索依頼を出したのか?」

 「ええ。出しましたし、情報提供もお願いしました。自警団の方も探してくださってはいますが、街の警備もありますし、割ける手は限られています。ギルドの依頼とて、すぐに受けて頂ける訳もなく……こうしている間にも坊ちゃんが危ない目に遭っているかと思うと」

 客の一人の問いに力なく項垂れる朝霧亭の男達。
 もし、エルマ坊ちゃんらしき子供を見かけたら宜しくお願いしますと言って出て行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【BL】おねがい…はやくイって【R18】

NichePorn
BL
街中で具合が悪くなって・・・。 街で噂の絶倫と噂されるイケメンに声をかけられた。 ちゃんと警戒していたのに、いつの間にかえっちな流れになって…。 彼が満足する(イク)までカラダをあずけつづけることに。 性感なんか信じていなかったノンケ × 優しくて真剣(に変態)な医師

醜い孤児で奴隷の男娼だったけど、引き取られた先で蝶よ花よと愛されまくる話

うらひと
BL
この国での綺麗の基準は艶やかな黒髪に大きな黒い瞳の人をいう。 その中で1人だけ明るい茶色の髪の翡翠の色のような瞳の孤児がいた。それがタダだ。皆から嫌な顔をされながらも生きている。 そんな孤児として生きてきたタダは束の間の平和な生活も出来なくなり奴隷にされて、人気のない男娼になってしまう。 しかしある日、身請けの話がいつの間にか進み、引き取られてからのタダは誰からも美しいと愛されまくられて、戸惑いつつも少しずつ愛される事を受け入れる話です。 18Rには※を付けてあります。ムーン様にも投稿してます。

【R18】幼馴染の魔王と勇者が、当然のようにいちゃいちゃして幸せになる話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

世界で一番大嫌いなやつの〇〇しか美味しくない

橘 咲帆
BL
「みかん」が主食の世界で、「みかん」の中身が全て種になってしまう呪いにかかった俺が再び「みかん」を食べられるようになるには、男に種付けしてもらうしか方法がない。その相手って大嫌いなあいつかよ・・・。 チョメチョメぴゅーぴゅーしてちょうどタイミングが合えば、はいはーい。ぽんぽーん。ごかいにーん。そんなに簡単に妊娠するんかい。 ※アホエロです。 ※ムーンライトノベルズ様にも掲載しております。

BL短編まとめ ②

よしゆき
BL
短編のBLをまとめました。 冒頭にあらすじがあります。

ポンコツ女子は異世界で甘やかされる(R18ルート)

三ツ矢美咲
ファンタジー
投稿済み同タイトル小説の、ifルート・アナザーエンド・R18エピソード集。 各話タイトルの章を本編で読むと、より楽しめるかも。 第?章は前知識不要。 基本的にエロエロ。 本編がちょいちょい小難しい分、こっちはアホな話も書く予定。 一旦中断!詳細は近況を!

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

処理中です...