8 / 105
【1】ちーとにゃんこと世界樹の茶畑ドタバタドラゴン大戦争!
8にゃん
しおりを挟む
「――ニャンコを捕らえていた悪者の仕業かも知れない、と?」
え?
目を瞑った私の耳を打ったのは、私に対する疑いの声――ではなく、魔術師の推測だった。
恐る恐る目を開けると、スィルが私はそう考えたの、とサミュエルに顔を向けて頷いているのが見えた。
「その可能性の方が高いわね。周囲には誰もいなかったわ。隠れている気配もしなかった。もしそうだとしても、ニャンコはここにいる。その何者かはニャンコを見付けられなくて去った…それとも?」
ニャンコを捕らえていた人間は少なくとも只者ではない。あれだけの魔術を行使できる存在――。
最悪の場合はどこかの権力者の手先である可能性もある。
そんな風に彼らは考えたようだ。
内心胸を撫で下ろす。バレてない、バレてない。
そんな私の筋肉の弛緩に、マリーシャが落ち着きましたか? と腕を緩めた。
「ニャンコとは、誰かが常に一緒にいた方がよさそうですね」
「ああ」
ライオットが神官に同意すると、魔術師が話は元に戻りますが、と仕切り直した。
「大フォレストワームの事はどうしますか?」
「既に死んでいる以上、ギルドに報告するしかないだろう」
剣士の言葉に皆が沈黙の同意を返す。
結局彼らは、大フォレストワームが死んでいた事と、スィルが調べてきた調査結果をギルドに報告することになった。私を発見したことと、大神殿のケット・シー保護区に連れて行くとの情報に加え、ケット・シーを狙う恐ろしい存在がいるかもしれない、との推測も添えて。
***
翌日。
私達は暗いうちから民宿に別れを告げ、馬車に乗って村を出た。
草原はどこまでも広がっているように見える。ただ平らな大地ではなく、起伏がある。
ところどころ木も生えており、牛や羊のような生き物も放牧されていた。
羊飼いの家なのだろう、粗く削りだして作った石レンガを積み重ねて作った粗末な家や小屋も散見出来る。前世で見た、イギリスの放牧地帯に似た風景だ。
私たちの馬車が走っている道から百メートルほど離れたところに、森から出た川が蛇行している。
水が確保できる道は旅にうってつけってわけだ。
見晴らしも良いし、襲ってくるものも遠くから発見しやすい。
「このまま最短で行けば明日の夕方までにはリュネって宿場街に着く」
「行きは大丈夫だったけど、帰りはどうかしら?」
「まさか日が高いうちは出ないだろうさ」
何の事かと思っていると、サミュエルが答えてくれた。
「遠くに片側が絶壁になっている山が見えるでしょう?もう少し行くとあそこの崖下を通る道に出ます。街への距離は最短なのですが、よく魔物が出るのです。夜行性のため昼間は滅多に出ないので大丈夫ですが、夜に近づけば近づくほど危険ですね」
近隣の住民も昼間にのみ通行するのですよ、と言われ。
これはもしかしてフラグというやつだろうか?――嫌な予感が胸中をよぎる。
「安全な道もあるんだけどね。だいぶ回り道になるわ――まあ、安全といってもそっちは追いはぎが出るんだけどね」
「相手をするなら魔物の方がいいな。人間は変に知恵付いてるから性質が悪いし」
スィルとライオットが不安な事を言う。
その日の夜は野宿だった。
皆、水を汲んできたり薪となる枯れ草や枯れ枝を拾ってきたり鍋や食器、野生動物や野草などの食材を調達したりしている。肉はスィルさんが鮮やかな弓捌きで一矢のもと鴨を射落とした。
私も勿論マリーシャに手伝ってもらいながら野草採集や薪拾いを手伝った。
旅の食事はジビエと根菜、野草を煮込んだスープを作る。
一つの鍋で作れて栄養を無駄なく摂取できるからだそうで。
ちなみに主食は甘芋とパンである。
食べてごらんと渡された熱々の甘芋をはふはふしながら食べると、優しい甘みが口の中に広がる。
まんま、サツマイモだった。おいしい。
夢中になって食べていると、目の前に甘芋が差し出された。
ライオットである。
「パンと交換してくれないか、ニャンコ。甘芋は俺はいいや。パンが無かった時嫌って程食べさせられたからな。それに食いすぎるとオナラが出るだろう?剣持って戦う時にブー、なんてかっこ悪いからいらない」
「にゃっ、本当に良いのかにゃ? 美味しいのにライオットしゃんは食べないのかにゃ?」
「ああ。じゃあパンと交換で」
「本当ライオットは我侭なんだから!」
「……」
スィルが腰に手を当ててぼやく。
私は交換自体に不満はなかったが、ちょっと面白くなくなって一計を案じた。
「ニャンコ?」
ライオットの隣にわざわざ移動して食事再開。
「にゃー、甘芋は甘くってとっても美味しいにゃ~♪」
言いながら、ちらりとライオットを見上げる。
「あ、でもライオットしゃんにはあげないにゃっ」
「いらないから」
苦笑気味のライオット。成り行きを見守っていた皆がくすくすと笑いだす。
「にゃ~おいしいにゃ~♪あ、でもライオットしゃんにはあげないにゃっ」
「だからいらないって」
そんなやりとりを数回繰り返す。
しかし、私がスープを飲むためふと目を離した隙に。
「甘芋美味しいにゃー♪な、ニャンコ♪」
ライオットが私の口調を真似してかじっているそれは!
「に゛ゃあああああああああっっ!!!」
私の甘芋がぁっ!!!
とうとうこらえきれず、悲鳴を上げる私以外がドッと笑った。
ちなみにその夜、甘芋を食べ過ぎた私はプープーとオナラを連発してしまい、皆の忍び笑いに耐える羽目になったのであった。うう、恥ずかしい。
しかしライオットにも真夜中に襲ってきた狼との戦闘中に盛大に放屁するという天罰が下ったのでよしとする。
え?
目を瞑った私の耳を打ったのは、私に対する疑いの声――ではなく、魔術師の推測だった。
恐る恐る目を開けると、スィルが私はそう考えたの、とサミュエルに顔を向けて頷いているのが見えた。
「その可能性の方が高いわね。周囲には誰もいなかったわ。隠れている気配もしなかった。もしそうだとしても、ニャンコはここにいる。その何者かはニャンコを見付けられなくて去った…それとも?」
ニャンコを捕らえていた人間は少なくとも只者ではない。あれだけの魔術を行使できる存在――。
最悪の場合はどこかの権力者の手先である可能性もある。
そんな風に彼らは考えたようだ。
内心胸を撫で下ろす。バレてない、バレてない。
そんな私の筋肉の弛緩に、マリーシャが落ち着きましたか? と腕を緩めた。
「ニャンコとは、誰かが常に一緒にいた方がよさそうですね」
「ああ」
ライオットが神官に同意すると、魔術師が話は元に戻りますが、と仕切り直した。
「大フォレストワームの事はどうしますか?」
「既に死んでいる以上、ギルドに報告するしかないだろう」
剣士の言葉に皆が沈黙の同意を返す。
結局彼らは、大フォレストワームが死んでいた事と、スィルが調べてきた調査結果をギルドに報告することになった。私を発見したことと、大神殿のケット・シー保護区に連れて行くとの情報に加え、ケット・シーを狙う恐ろしい存在がいるかもしれない、との推測も添えて。
***
翌日。
私達は暗いうちから民宿に別れを告げ、馬車に乗って村を出た。
草原はどこまでも広がっているように見える。ただ平らな大地ではなく、起伏がある。
ところどころ木も生えており、牛や羊のような生き物も放牧されていた。
羊飼いの家なのだろう、粗く削りだして作った石レンガを積み重ねて作った粗末な家や小屋も散見出来る。前世で見た、イギリスの放牧地帯に似た風景だ。
私たちの馬車が走っている道から百メートルほど離れたところに、森から出た川が蛇行している。
水が確保できる道は旅にうってつけってわけだ。
見晴らしも良いし、襲ってくるものも遠くから発見しやすい。
「このまま最短で行けば明日の夕方までにはリュネって宿場街に着く」
「行きは大丈夫だったけど、帰りはどうかしら?」
「まさか日が高いうちは出ないだろうさ」
何の事かと思っていると、サミュエルが答えてくれた。
「遠くに片側が絶壁になっている山が見えるでしょう?もう少し行くとあそこの崖下を通る道に出ます。街への距離は最短なのですが、よく魔物が出るのです。夜行性のため昼間は滅多に出ないので大丈夫ですが、夜に近づけば近づくほど危険ですね」
近隣の住民も昼間にのみ通行するのですよ、と言われ。
これはもしかしてフラグというやつだろうか?――嫌な予感が胸中をよぎる。
「安全な道もあるんだけどね。だいぶ回り道になるわ――まあ、安全といってもそっちは追いはぎが出るんだけどね」
「相手をするなら魔物の方がいいな。人間は変に知恵付いてるから性質が悪いし」
スィルとライオットが不安な事を言う。
その日の夜は野宿だった。
皆、水を汲んできたり薪となる枯れ草や枯れ枝を拾ってきたり鍋や食器、野生動物や野草などの食材を調達したりしている。肉はスィルさんが鮮やかな弓捌きで一矢のもと鴨を射落とした。
私も勿論マリーシャに手伝ってもらいながら野草採集や薪拾いを手伝った。
旅の食事はジビエと根菜、野草を煮込んだスープを作る。
一つの鍋で作れて栄養を無駄なく摂取できるからだそうで。
ちなみに主食は甘芋とパンである。
食べてごらんと渡された熱々の甘芋をはふはふしながら食べると、優しい甘みが口の中に広がる。
まんま、サツマイモだった。おいしい。
夢中になって食べていると、目の前に甘芋が差し出された。
ライオットである。
「パンと交換してくれないか、ニャンコ。甘芋は俺はいいや。パンが無かった時嫌って程食べさせられたからな。それに食いすぎるとオナラが出るだろう?剣持って戦う時にブー、なんてかっこ悪いからいらない」
「にゃっ、本当に良いのかにゃ? 美味しいのにライオットしゃんは食べないのかにゃ?」
「ああ。じゃあパンと交換で」
「本当ライオットは我侭なんだから!」
「……」
スィルが腰に手を当ててぼやく。
私は交換自体に不満はなかったが、ちょっと面白くなくなって一計を案じた。
「ニャンコ?」
ライオットの隣にわざわざ移動して食事再開。
「にゃー、甘芋は甘くってとっても美味しいにゃ~♪」
言いながら、ちらりとライオットを見上げる。
「あ、でもライオットしゃんにはあげないにゃっ」
「いらないから」
苦笑気味のライオット。成り行きを見守っていた皆がくすくすと笑いだす。
「にゃ~おいしいにゃ~♪あ、でもライオットしゃんにはあげないにゃっ」
「だからいらないって」
そんなやりとりを数回繰り返す。
しかし、私がスープを飲むためふと目を離した隙に。
「甘芋美味しいにゃー♪な、ニャンコ♪」
ライオットが私の口調を真似してかじっているそれは!
「に゛ゃあああああああああっっ!!!」
私の甘芋がぁっ!!!
とうとうこらえきれず、悲鳴を上げる私以外がドッと笑った。
ちなみにその夜、甘芋を食べ過ぎた私はプープーとオナラを連発してしまい、皆の忍び笑いに耐える羽目になったのであった。うう、恥ずかしい。
しかしライオットにも真夜中に襲ってきた狼との戦闘中に盛大に放屁するという天罰が下ったのでよしとする。
1
お気に入りに追加
166
あなたにおすすめの小説
【BL】おねがい…はやくイって【R18】
NichePorn
BL
街中で具合が悪くなって・・・。
街で噂の絶倫と噂されるイケメンに声をかけられた。
ちゃんと警戒していたのに、いつの間にかえっちな流れになって…。
彼が満足する(イク)までカラダをあずけつづけることに。
性感なんか信じていなかったノンケ × 優しくて真剣(に変態)な医師
醜い孤児で奴隷の男娼だったけど、引き取られた先で蝶よ花よと愛されまくる話
うらひと
BL
この国での綺麗の基準は艶やかな黒髪に大きな黒い瞳の人をいう。
その中で1人だけ明るい茶色の髪の翡翠の色のような瞳の孤児がいた。それがタダだ。皆から嫌な顔をされながらも生きている。
そんな孤児として生きてきたタダは束の間の平和な生活も出来なくなり奴隷にされて、人気のない男娼になってしまう。
しかしある日、身請けの話がいつの間にか進み、引き取られてからのタダは誰からも美しいと愛されまくられて、戸惑いつつも少しずつ愛される事を受け入れる話です。
18Rには※を付けてあります。ムーン様にも投稿してます。
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
世界で一番大嫌いなやつの〇〇しか美味しくない
橘 咲帆
BL
「みかん」が主食の世界で、「みかん」の中身が全て種になってしまう呪いにかかった俺が再び「みかん」を食べられるようになるには、男に種付けしてもらうしか方法がない。その相手って大嫌いなあいつかよ・・・。
チョメチョメぴゅーぴゅーしてちょうどタイミングが合えば、はいはーい。ぽんぽーん。ごかいにーん。そんなに簡単に妊娠するんかい。
※アホエロです。
※ムーンライトノベルズ様にも掲載しております。
ポンコツ女子は異世界で甘やかされる(R18ルート)
三ツ矢美咲
ファンタジー
投稿済み同タイトル小説の、ifルート・アナザーエンド・R18エピソード集。
各話タイトルの章を本編で読むと、より楽しめるかも。
第?章は前知識不要。
基本的にエロエロ。
本編がちょいちょい小難しい分、こっちはアホな話も書く予定。
一旦中断!詳細は近況を!
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる