上 下
5 / 105
【1】ちーとにゃんこと世界樹の茶畑ドタバタドラゴン大戦争!

5にゃん

しおりを挟む
 「先程の続きだけれども、ニャンコ。悪い人達に捕まっていたの?」

 スィルの問いかけ。
 名前に関しては諦めた。気を取り直して身の上設定を考え考え話す。

 「にゃー…そうなのにゃ。ずっと悪い人達に捕まって…檻の中に入れられていたけど、悪い人達をやっつける人が来て……それで、悪い人達に変な魔法をかけられたのにゃ。気がついたらこの森の中に居たのにゃー…」

 つっかえつっかえ話す様子に、気遣わしげな視線を浴びてちょっと良心が痛んだ。
 なるほど、とサミュエルが私の言葉を引き取って解釈する。

 「大方、ニャンコを捕まえていた盗賊か何かが冒険者に踏み込まれたと。それで希少なケット・シーを渡したくなかった盗賊は転移の魔法をニャンコにかけた――転移の魔法はとっさの時には暴走するものですから、ニャンコは無作為にここに飛ばされてきたのでしょうね」

 さすが魔術師、足りなかったところまで勝手に補足してくれてありがとう――とホッとする間も無く、話は私の身の振り方に移った。剣士ライオットが腕を組んで思案している。

 「で、どうする? 保護を受けるべき種族なら、このまま置いておく訳にもいかないんだろ?」

 「ニャンコは一人では生きられないわ…どこかに保護を頼まないと。またよからぬ輩に捕まるのがオチよ」

 スィルが言うと、サミュエルが同意した。

 「そうですね。ギルドで手紙を出して、ニャンコを保護してもらいましょう。」

 ――それは困る!

 「やっ、嫌にゃ!! 一緒に行くのはダメなのかにゃ?ニャンコはマリーシャしゃん達と一緒がいいにゃ。他の知らない人は、怖いのにゃ!」

 「俺達と一緒が良いって言われても…危険だぞ」

 「ニャンコを守りながら旅するのは難しいと思いますが…」

 渋る剣士と魔術師。
 救いを求めるようにマリーシャを見ると、それまで黙って考え込んでいた様子の彼女は意外にも彼らの意見を否定した。

 「確かにニャンコを私達が連れまわすのは難しいとは思います。しかし…ギルドから手紙を出してニャンコを村の人達に託したとしても、迎えが来るまで無事であるとは限りません。
 どこかでケット・シーの噂を聞きつけたよからぬ輩が徒党を組んでニャンコを奪いにこの村へ来れば本末転倒ではないでしょうか。
 本人も希望している事ですし、それならいっそ共に保護区まで私達が連れて行ったほうが良いと思います」

 「でも…ニャンコはまともに戦えないのよ?」

 言い募るエルフに、神官は祈りの作法らしき事をした。

 「これも光の神イーラのお導きなのでしょう。人を癒す神聖術こそは使えますが、まともに戦えないという点では私もニャンコと同じですよ」

 マリーシャの言葉にうっ…と言葉に詰まる面々。
 宗教はあんま信じないけど、理屈をすっ飛ばしてくれて光の神イーラ様ありがとう。
 思わず笑顔で万歳してしまった私を見て微笑むと、マリーシャはしゃがんで目線を合わせてきた。

 「ニャンコ、あなたは同じケット・シーの居る場所まで連れて行く旅の間、私の傍を離れないと約束出来ますか?」

 「にゃっ、約束するにゃ!」

 私はビッと敬礼して元気良く返事をした。
 マリーシャは良い子ですね、と一撫でして立ち上がる。ポリポリ、と頬を掻きながらライオットがぼやいた。

 「あーあ、どうするかな。大フォレストワーム討伐の依頼…」

 「ニャンコ、実は私達は一週間馬車を飛ばし続けてこのコネコ村まで大フォレストワームの退治に来たのよ」

 大フォレストワーム。大森林芋虫。
 調子に乗ったときに倒してしまったアレじゃないよね?

 「大フォレストワームって何にゃ?」

 確認も兼ねてライオットに訊いてみる。

 「簡単に言えば、見た目でっかい芋虫の恐ろしい怪物だ。水場近くを好み、森を荒らして生き物を食う。勿論、人間もな。動きは緩慢だが、ヤツの出す毒液や粘液糸が厄介だ。森の道は川沿いだからこの村にもやって来るかも知れない。そうなる前に俺達が倒すのさ」

 村が襲われる前に何とか間に合って良かったよ、と剣士は笑う。

 「こ、怖いにゃー、その、大フォレストワームはたくさんいるのかにゃ?」

 「いや、目撃報告では一体だけだ。そもそも大フォレストワームは森の遥か奥に生息していて、草原近くにはめったに来ない」

「……」

 私は二の句が告げなくなった。

 やっぱりか。
 ごめんなさい。それ、多分倒してしまいました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

殿下から婚約破棄されたけど痛くも痒くもなかった令嬢の話

ルジェ*
ファンタジー
 婚約者である第二王子レオナルドの卒業記念パーティーで突然婚約破棄を突きつけられたレティシア・デ・シルエラ。同様に婚約破棄を告げられるレオナルドの側近達の婚約者達。皆唖然とする中、レオナルドは彼の隣に立つ平民ながらも稀有な魔法属性を持つセシリア・ビオレータにその場でプロポーズしてしまうが─── 「は?ふざけんなよ。」  これは不運な彼女達が、レオナルド達に逆転勝利するお話。 ********  「冒険がしたいので殿下とは結婚しません!」の元になった物です。メモの中で眠っていたのを見つけたのでこれも投稿します。R15は保険です。プロトタイプなので深掘りとか全くなくゆるゆる設定で雑に進んで行きます。ほぼ書きたいところだけ書いたような状態です。細かいことは気にしない方は宜しければ覗いてみてやってください! *2023/11/22 ファンタジー1位…⁉︎皆様ありがとうございます!!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

処理中です...