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マッチポンプ

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 「能力が上がったのじゃ。」
 中日如来が、ほてほてと側に擦り寄って来る。
 なんだろう。
 あれだ。
 フリスビーを咥えた犬が、褒めて!と言わんばかりに、尻尾を振って来る感じだ。
 可愛い。
 頭を撫でておこう。
 嬉しそうだ。
 癒やされる。
 「能力が上がったって、あれか…中日如来の梵っ字は、空っ海と作ったんだよな。その空っ海が、釈迦だってことと関係してるのか?」
 「そうじゃのう…難しくて分からんのじゃ!」
 ふいっとそっぽを向いてしまう。
 何だ? 
 「照れてるみたいね。」
 何でやねん。
 ん?
 そうか、気安く頭を撫でていたが、中日如来は横浜銀河だったのだ。
 ふと、横浜銀河を見ると気まずそうに顔を逸らしている。
 「横浜銀河が、自分はイケメン以外の行動が取れんもんじゃから、自分の代わりに儂を寄越したんじゃ!本当は自分が頭を撫でて欲しいのじゃ!何時でも何処でも、イケメンじゃのうと言われんと不安なのじゃ!じゃが、イケメンじゃないのじゃなかろうかと、悩んでおるのじゃ!イケメンじゃのうと言われる度に、イケメンじゃないと悩んでおるのじゃ!」
 イケメンがゲシュタルト崩壊してる。
 イケメンが、イケメンゆえに、本当にそんな悩みを持っているのだろうか。

 「俺は、イケメンだって言われる程、イケメンじゃないって分かってます!だけど、イケメンじゃないといけなくて…もう、どうしていいのか…!」
 あれ。
 本当だった。
 ちょっと、好きになったかもしれない、横浜銀河よ!
 人間臭くてとても良いぞ!
 いいぞ、もっとやれ!
 「坊っ主との契約は破棄したのじゃ!もう、あんな者達の言いなりになどならんのじゃ!腹が立つのじゃー!」
 横浜銀河から、ちょっと分離して、叫んでる。
 あの辺は、横浜銀河なのだろうか。
 余程、長年の鬱憤が溜まっているようだ。
 なるほど。
 それで、能力が上がったのか。

 ’第六感ー気付きの能力’

 ーん?

 「マナトさん。貴方の言ったように、中日如来様の梵字に、この空っ海が協力していた為に、能力が上がったのもあるようです。」
 「よく分からんのだが、それってどういう仕組み?」
 「その…この空っ海が、釈っ迦の梵っ字を打ち消していたようなのです。」
 「梵っ字を打ち消す…そこに、意思が働いていたってことか?自分自身だから、抑えることが出来た?」
 「合っているわ!」
 力強いヨーデルの人の声が、俺を勇気づける。

 「マッチポンプじゃねえか!」
 
 是非とも、この釈っ迦と、空っ海のマッチポンプ具合をmytubeにでも上げてやりたいくらいだったが、話し掛けようが、全く反応が無くなった。
 くそ。
 どいつもこいつも、都合が悪くなると、消えやがって。
 「しかし、マッチポンプを理解して、中日如来の能力が上がったということは、釈っ迦が、梵っ字の悪用を抑えようという意思が強くなった?」
 「そうね…まだ、完璧では無いけれど…」
 厄介だな。
 梵っ字で、ウイルスが横行して、収集がつかないとは。
 そうだ、ウイルスと言えば。

 「さっき、ヨーデルの人と、雅魔藻流が似てるって言ったよな。どういう所が似てるんだ?」
 「…どういう所だと思うかしら?」
 何故、質問を質問で返すのだ。
 「なんだろう…ツンデレがゲシュタルト崩壊してる所かな…」 
 「そうね!貴方なら、私達の問題なんて、ツンデレ程度なのね!」
 「いや、ツンデレ程度っていうか、ちょっと面倒臭いっていうか、まあ、別にいいかなって…」 
 「それが、ツンデレ程度ってことだと思うわ!」
 「そうか。そう言われたら、そうかな…」
 
 「私…!いや、僕は…!」
 ん?
 今、何か、一瞬、雅魔藻流が、女の子に見えたんだが、錯覚だろうか。
 雅魔藻流が、言葉を切ったままブルブル震えて固まっている。
 話を混ぜっ返すとか、出てきて喋らないとか止めてくれないかな。
 俺がとても困る。

 「私のことどう思いますか…?」
  
 誰?
 
 
 

 
 


 

 
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