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第四章 夫妻、休暇を楽しむ
48、妻、お茶会に招かれる
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「あー、恋がしたい! ドカンと恋に落ちてそのまま幸せな結婚をしてシルフィア様みたいに愛されたい!」
またもやズルズルとテーブルクロスの上に腕を滑らせて叫ぶシャルロッテ様を眺めて、私はアイスクリームをパクリと口に入れた。
イゼラ侯爵家のお菓子も大変美味しい。
今日はルイーゼと二人でシャルロッテ様のお家を訪ねている。
先日届いた手紙は二人だけのお茶会の招待状で、その日のうちに返事を出して今日に決まった。
私は昨夜、今日が楽しみ過ぎてなかなか眠れず深夜までテオがお喋りに付き合ってくれた。それでも早くに目が覚めて帝国で仕立てて持ってきた新しいお茶会用のドレスを着て、準備万端勇んでイゼラ侯爵家にやってきたのだった。
侯爵邸に着くとシャルロッテ様イチオシの整然と手入れがされた美しい庭に案内され、侯爵家の料理人が腕に縒りをかけて作ったという色とりどりのアイスクリームをいただいている。
・・・どうやらシャルロッテ様の中では、私はアイスクリームが大好物ということになっているらしい。確かに好きだけれども。
ジワーッと口の中で溶けていく苺アイスは初めての味で、私はその色も楽しんで食べていた。
席についてから、周囲の花の紹介や、この国の社交界の話をしてくれていたシャルロッテ様が不意にツッと口をとがらせた。
「・・・もう、シルフィア様ってば食べてばっかり。もうすぐ帝国へ戻っちゃうんでしょ、今しかこうやってお喋り出来ないのだから何か面白い話してよ」
「だって、溶けちゃうじゃないですか・・・」
「そうだけど。あ、そうだ、シルフィア様はどんな恋をしたの?」
「・・・恋、ですか?」
「そう、恋!」
最後のひとくちを味わいながらコテッと首を横に曲げて考える。
はて、私の恋とは? 私のこれまでの人生は生き延びることが最優先で、そのようなことを考えたり体験する余裕なく結婚したから。
「私は恋をしたことがないです」
正直に伝えた瞬間、前後からガタッと音が上がった。前のシャルロッテ様はテーブルに両手を突っ張って立ち上がり、後ろのルイーゼはよろめいていた。
・・・私、そんなに驚かせるようなこと言ったかな?
「テオドール様と貴方は激烈な恋愛結婚って噂だけど?! アレでしょ? 私みたいに兄に虐められていたシルフィア様とテオドール様がある日出会って一目で恋に落ちて、テオドール様は貴方を救うために国を一つ潰したんでしょ?!」
こぼれ落ちそうなほど目を見開いて一気に捲し立てたシャルロッテ様の説明に、私も目を丸くした。
テオと初めて出会った時はお互い相手のことを知らなかったし、次に会った時は私は朦朧としていたから恋に落ちる機会なんてなかった、はず。それに、私の国は年明けに帝国直轄地になる予定で、まだ潰れてはいない。
それらを言うべきか迷っていたら、私の表情を読んだシャルロッテ様の眉が下がっていった。
「えぇ・・・違うの? もしかしてテオドール様の愛は一方通行なの?」
「それはないです! 私はテオが大好きです!・・・でも、結婚してから好きになりました」
思わず大声で反論してしまい、次いで口から飛び出た自分の言葉で顔が熱くなる。
そう、今の私はテオが大好きだ。だから、決してテオの想いが一方通行ということはない。そういえば、コレは何なのだろう?
「・・・アレ? この私のテオが好きって気持ちはなんですか? 恋は結婚前にするものですよね?」
恐る恐る尋ねた私にシャルロッテ様がポカンと口を開けた。
「まあ、可愛い! それは恋よ。シルフィア様、恋はいつでもしていいのよ。想われて結婚してその相手に恋をするなんて最高に素敵だわ!」
「これは恋なのですか?」
「そうよ! 人は恋をするとね、ずっと相手のことを考えてしまったり、相手のことや好みを知りたくなったり、相手に好かれたくて努力するから綺麗になるのよ。シルフィア様もそうでしょ?」
握りこぶしを固めて力説するシャルロッテ様となるほどと頷く私。シャルロッテ様は色んなことを知っているから、お喋りしているだけで勉強になる。
・・・確かに私はテオのことを一番多く考えてるし、テオのことを観察してるし、彼にずっと好きでいてほしい。綺麗になったかはわからないけど、テオの隣にふさわしい姿になりたいと思う。
「私、テオドール様に恋してるのですか・・・」
何だか嬉しくて体の奥がぽっと温かくなってふわふわしてきた。私をじーっと見ていたシャルロッテ様が唸る。
「あー、羨ましい。私も早く恋して美しくなりたい!」
■■
「ルイーゼは恋をしたことがありますか?」
侯爵邸からの帰り道、馬車で隣に座っているルイーゼに尋ねてみた。
え、と言葉に詰まった彼女は、みるみるうちに赤くなった。
これは、私にだってわかりますよ!
「ルイーゼも恋真っ最中なんですね!?」
「シ、シルフィア様、恥ずかしいから大声で言わないでください・・・うう、主とこんな話をするなんて思ってなかったです」
恥ずかしい、と両手で顔を覆ったルイーゼは耳まで真っ赤だ。私はなんだかワクワクしてきた。
すごい、恋してる人が直ぐ隣にいた。
「やっぱりルイーゼも相手のことを考えてしまったり、相手のことや好みを知りたくなったりしますか? 相手に好かれたくて努力してそんなに綺麗になったのですか?」
「綺麗かは分かりませんけど、ふとした時にどうしてるかな、と思ったり相手のことをじっと観察してしまったり身なりに気を使うようにはなりますね・・・」
はにかむルイーゼが可愛くて私は身を乗り出した。
「ルイーゼはいつも私のお世話をしてくれて惚気を聞いてくれて相談にも乗ってくれる大事な人なので、私もルイーゼのために何かしたいです」
張り切る私へ、ルイーゼは悲しげな笑顔で首を振った。
「シルフィア様のお気持ちは大変嬉しいのですが、私の好きな人には他に想う相手がいるのです。所謂片思いというやつですね」
私はそれを聞いて何と言えばいいのか分からなくなってしまった。
恋愛相談の記事をいくら読んでいても全く役に立たない。そして、私の恋は相手の気持が予めわかっている簡単で楽で安全なものだったのだと気がついた。しかも相手は非の打ち所がないような皆が羨む人物で。これでは『好きになって当然』と言われても仕方がない。
「やっぱり私がテオに恋するのは、ズルいことではないですか? 私は、一度テオ以外の人に恋してみたほうがいいのでは・・・」
混乱してそうつぶやいた途端、ルイーゼが飛び上がった。
「それは絶対にダメです! 何があってもそれだけはいけません! いいですか、シルフィア様はテオドール様に堂々と恋していいのです。ズルくもなんともないです。それどころか世界平和に繋がる偉大なものなのです。ですから、テオドール様以外と無理やり恋しようなんて思っちゃいけませんよ」
その勢いに圧倒されて私は目を瞬かせた。
「ですが、その、私の恋はどうも贅沢過ぎるように思うのですが・・・」
「それでいいのです! シルフィア様はこれまで大変な目に遭ってきたのですから、これからはとてつもなく幸せになってもらわねばならないのです。それがハーフェルト家の総意です」
なんだか、ものすごく壮大な話に飛んでったような? ・・・でも。そうか、私はテオに贅沢な恋をして、ものすごく幸せになっていいのか。
ルイーゼの主張は私の萎れかけた気持ちをフカフカに膨らませて元気にしてくれた。
「ルイーゼ、ありがとうございます。私、テオにいっぱい恋します。そしてもっと綺麗になりたいので色々教えてください。それから、ルイーゼの力にもなりたいので何でも言ってくださいね。私にできることは少ないですけど、全力で一緒に考えることはできますから!」
「ありがとうございます、シルフィア様。そう言っていただけるだけでとても嬉しいです。私はこれからもシルフィア様をどんどん綺麗にしていきますよ!」
よろしくお願いします、と頭を下げたところでお屋敷の玄関に馬車が着いた。
馬車が停まると同時にガチャンと音がして、いつもより早く御者さんが扉を開けてくれたと思ったらテオだった。今日は早めに帰っていたらしく、もう着替えも済ませている。
おかえり、と笑顔で手を差し伸べてくれた彼の顔をまじまじと眺める。
私、この人に恋してるんだ・・・。
なんだか幸せがあふれてきて、私はぴょんと馬車から飛び出してテオに抱きついた。
「ただいまです! テオ、私はテオが大好きでテオに恋してるのですよ!」
私を抱きとめたままテオが喋らないので不思議に思って見上げると、彼は耳の先まで真っ赤になって固まっていた。
またもやズルズルとテーブルクロスの上に腕を滑らせて叫ぶシャルロッテ様を眺めて、私はアイスクリームをパクリと口に入れた。
イゼラ侯爵家のお菓子も大変美味しい。
今日はルイーゼと二人でシャルロッテ様のお家を訪ねている。
先日届いた手紙は二人だけのお茶会の招待状で、その日のうちに返事を出して今日に決まった。
私は昨夜、今日が楽しみ過ぎてなかなか眠れず深夜までテオがお喋りに付き合ってくれた。それでも早くに目が覚めて帝国で仕立てて持ってきた新しいお茶会用のドレスを着て、準備万端勇んでイゼラ侯爵家にやってきたのだった。
侯爵邸に着くとシャルロッテ様イチオシの整然と手入れがされた美しい庭に案内され、侯爵家の料理人が腕に縒りをかけて作ったという色とりどりのアイスクリームをいただいている。
・・・どうやらシャルロッテ様の中では、私はアイスクリームが大好物ということになっているらしい。確かに好きだけれども。
ジワーッと口の中で溶けていく苺アイスは初めての味で、私はその色も楽しんで食べていた。
席についてから、周囲の花の紹介や、この国の社交界の話をしてくれていたシャルロッテ様が不意にツッと口をとがらせた。
「・・・もう、シルフィア様ってば食べてばっかり。もうすぐ帝国へ戻っちゃうんでしょ、今しかこうやってお喋り出来ないのだから何か面白い話してよ」
「だって、溶けちゃうじゃないですか・・・」
「そうだけど。あ、そうだ、シルフィア様はどんな恋をしたの?」
「・・・恋、ですか?」
「そう、恋!」
最後のひとくちを味わいながらコテッと首を横に曲げて考える。
はて、私の恋とは? 私のこれまでの人生は生き延びることが最優先で、そのようなことを考えたり体験する余裕なく結婚したから。
「私は恋をしたことがないです」
正直に伝えた瞬間、前後からガタッと音が上がった。前のシャルロッテ様はテーブルに両手を突っ張って立ち上がり、後ろのルイーゼはよろめいていた。
・・・私、そんなに驚かせるようなこと言ったかな?
「テオドール様と貴方は激烈な恋愛結婚って噂だけど?! アレでしょ? 私みたいに兄に虐められていたシルフィア様とテオドール様がある日出会って一目で恋に落ちて、テオドール様は貴方を救うために国を一つ潰したんでしょ?!」
こぼれ落ちそうなほど目を見開いて一気に捲し立てたシャルロッテ様の説明に、私も目を丸くした。
テオと初めて出会った時はお互い相手のことを知らなかったし、次に会った時は私は朦朧としていたから恋に落ちる機会なんてなかった、はず。それに、私の国は年明けに帝国直轄地になる予定で、まだ潰れてはいない。
それらを言うべきか迷っていたら、私の表情を読んだシャルロッテ様の眉が下がっていった。
「えぇ・・・違うの? もしかしてテオドール様の愛は一方通行なの?」
「それはないです! 私はテオが大好きです!・・・でも、結婚してから好きになりました」
思わず大声で反論してしまい、次いで口から飛び出た自分の言葉で顔が熱くなる。
そう、今の私はテオが大好きだ。だから、決してテオの想いが一方通行ということはない。そういえば、コレは何なのだろう?
「・・・アレ? この私のテオが好きって気持ちはなんですか? 恋は結婚前にするものですよね?」
恐る恐る尋ねた私にシャルロッテ様がポカンと口を開けた。
「まあ、可愛い! それは恋よ。シルフィア様、恋はいつでもしていいのよ。想われて結婚してその相手に恋をするなんて最高に素敵だわ!」
「これは恋なのですか?」
「そうよ! 人は恋をするとね、ずっと相手のことを考えてしまったり、相手のことや好みを知りたくなったり、相手に好かれたくて努力するから綺麗になるのよ。シルフィア様もそうでしょ?」
握りこぶしを固めて力説するシャルロッテ様となるほどと頷く私。シャルロッテ様は色んなことを知っているから、お喋りしているだけで勉強になる。
・・・確かに私はテオのことを一番多く考えてるし、テオのことを観察してるし、彼にずっと好きでいてほしい。綺麗になったかはわからないけど、テオの隣にふさわしい姿になりたいと思う。
「私、テオドール様に恋してるのですか・・・」
何だか嬉しくて体の奥がぽっと温かくなってふわふわしてきた。私をじーっと見ていたシャルロッテ様が唸る。
「あー、羨ましい。私も早く恋して美しくなりたい!」
■■
「ルイーゼは恋をしたことがありますか?」
侯爵邸からの帰り道、馬車で隣に座っているルイーゼに尋ねてみた。
え、と言葉に詰まった彼女は、みるみるうちに赤くなった。
これは、私にだってわかりますよ!
「ルイーゼも恋真っ最中なんですね!?」
「シ、シルフィア様、恥ずかしいから大声で言わないでください・・・うう、主とこんな話をするなんて思ってなかったです」
恥ずかしい、と両手で顔を覆ったルイーゼは耳まで真っ赤だ。私はなんだかワクワクしてきた。
すごい、恋してる人が直ぐ隣にいた。
「やっぱりルイーゼも相手のことを考えてしまったり、相手のことや好みを知りたくなったりしますか? 相手に好かれたくて努力してそんなに綺麗になったのですか?」
「綺麗かは分かりませんけど、ふとした時にどうしてるかな、と思ったり相手のことをじっと観察してしまったり身なりに気を使うようにはなりますね・・・」
はにかむルイーゼが可愛くて私は身を乗り出した。
「ルイーゼはいつも私のお世話をしてくれて惚気を聞いてくれて相談にも乗ってくれる大事な人なので、私もルイーゼのために何かしたいです」
張り切る私へ、ルイーゼは悲しげな笑顔で首を振った。
「シルフィア様のお気持ちは大変嬉しいのですが、私の好きな人には他に想う相手がいるのです。所謂片思いというやつですね」
私はそれを聞いて何と言えばいいのか分からなくなってしまった。
恋愛相談の記事をいくら読んでいても全く役に立たない。そして、私の恋は相手の気持が予めわかっている簡単で楽で安全なものだったのだと気がついた。しかも相手は非の打ち所がないような皆が羨む人物で。これでは『好きになって当然』と言われても仕方がない。
「やっぱり私がテオに恋するのは、ズルいことではないですか? 私は、一度テオ以外の人に恋してみたほうがいいのでは・・・」
混乱してそうつぶやいた途端、ルイーゼが飛び上がった。
「それは絶対にダメです! 何があってもそれだけはいけません! いいですか、シルフィア様はテオドール様に堂々と恋していいのです。ズルくもなんともないです。それどころか世界平和に繋がる偉大なものなのです。ですから、テオドール様以外と無理やり恋しようなんて思っちゃいけませんよ」
その勢いに圧倒されて私は目を瞬かせた。
「ですが、その、私の恋はどうも贅沢過ぎるように思うのですが・・・」
「それでいいのです! シルフィア様はこれまで大変な目に遭ってきたのですから、これからはとてつもなく幸せになってもらわねばならないのです。それがハーフェルト家の総意です」
なんだか、ものすごく壮大な話に飛んでったような? ・・・でも。そうか、私はテオに贅沢な恋をして、ものすごく幸せになっていいのか。
ルイーゼの主張は私の萎れかけた気持ちをフカフカに膨らませて元気にしてくれた。
「ルイーゼ、ありがとうございます。私、テオにいっぱい恋します。そしてもっと綺麗になりたいので色々教えてください。それから、ルイーゼの力にもなりたいので何でも言ってくださいね。私にできることは少ないですけど、全力で一緒に考えることはできますから!」
「ありがとうございます、シルフィア様。そう言っていただけるだけでとても嬉しいです。私はこれからもシルフィア様をどんどん綺麗にしていきますよ!」
よろしくお願いします、と頭を下げたところでお屋敷の玄関に馬車が着いた。
馬車が停まると同時にガチャンと音がして、いつもより早く御者さんが扉を開けてくれたと思ったらテオだった。今日は早めに帰っていたらしく、もう着替えも済ませている。
おかえり、と笑顔で手を差し伸べてくれた彼の顔をまじまじと眺める。
私、この人に恋してるんだ・・・。
なんだか幸せがあふれてきて、私はぴょんと馬車から飛び出してテオに抱きついた。
「ただいまです! テオ、私はテオが大好きでテオに恋してるのですよ!」
私を抱きとめたままテオが喋らないので不思議に思って見上げると、彼は耳の先まで真っ赤になって固まっていた。
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