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第二章 夫妻の贈り物
19、かんさつ日記2
しおりを挟む△月△日
今日はテオ様と帰省のお土産を買いに行った。家族それぞれから頼まれた物があると言って、メモを見ながらあちこちのお店を回った。フリッツさんとウータさんも一緒で楽しかった。
買い物の際に、テオ様はいろんな商品を両手に一つずつ持って『フィーアはどっちが好き?』と聞いてきた。テオ様のご家族の好みを知らない私が答えていいのかなと思っていたら、最後に布地を扱う店で私の服の生地を選ぶ参考にしていたらしい。
山のような生地の中から次々と選び出して
『これとこれならどっちが好き?』
『この組み合わせならどっち?』
『この中ではどれ?』
と聞いてくるので、好きな方を指差していて、私が選んだものが横に山になっていく光景にふと疑問がわいたので尋ねてみた。
『これらはどなたが着るのですか? テオ様のお母様ですか、妹様ですか? それとも弟様の婚約者様?』
どの方とも知り合いでない私が決めていいのかと不安になって聞いたのに、テオ様はなんだかしてやったりという笑顔で
『うん? こっちは全部フィーアの秋服だよ。冬になれば帝城での夜会にも出ないといけないから、ドレスも何枚か注文しよう。じゃ、サイズを測っておいで』
と言って私を店の奥に放り込んだ。
その後、店の人達にもみくちゃにされた私は疲れて無口になって、慌てたテオ様がプリンパフェを食べさせてくれた。
パフェだけでもすごいのに、プリンまでのってるなんて贅沢すぎて恐れ多すぎると思ったけど、一口食べればとても美味しくてプリンパフェも大好きな食べ物になった。テオ様といると私の好きな食べ物がどんどん増えていく。
△月☓日
今夜は学期末恒例の学院生だけの夜会がある。出席は義務なので、テオ様もフリッツさんと出掛けていった。すごく嫌そうだったけれど。
私も前回の夜会までは、学院にいたので参加していたけど、いい思い出は一つもない。いや、一つはあった。
テオ様に助けてもらったのはその夜会だった。あの時着ていたドレスは今思えばボロボロだったなあ。周りの人にも散々言われていたけど、本当に酷かった。一体誰のお下がりだったのだろう。
その後、テオ様が用意してくれたドレスは急いでたから既製品の手直しだっていってたけど、着たことがないような肌触りで軽くて驚いた。あのドレス、あれ以来着てないな。
テオ様、早く帰って来ないかなあ。早く帰ってきてくれますように。
△月○日
昨日、懐かしくなってドレスを出して眺めていたら、テオ様が帰ってきて着せてくれた。
それから、ダンスの練習と言って私と踊ってくれた。先生と踊るより、なんだか上手に踊れた気がして楽しかった!
■■■■■
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
第二章はここで終了です。次章は舞台がハーフェルト公爵邸へ移ります。裏タイトル「若奥様、夫の家族に会う」ですかね。
それで、お知らせです。これからしばらく他の作品と並行して書く予定ですので、投稿まで今まで以上に間が開きます。次は来年になるのではないかと思います。ご迷惑おかけして申し訳ありませんが、お待ちいただけますようお願い申し上げます。
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