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ノイシュロス市
#41 飛行型ディモン (アリー)
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「前方からもディモンが来ています。」
その言葉で私は三体のディモンがいた九時方向を見た。しかし、そこには二体のディモンしか居らず、一体がどこかに消えていた。前方にまわったのがもう一体だろうか。クロの方を向くと同じことを考えているのか、彼女もディモンを見て険しい顔をしていた。
「おかしいです。管制塔との無線が途切れています。」
その言葉で機内の空気が一気に固まった。一体何が起きているのか。新たなディモンの攻撃なのか。今この場にいる誰もが理解できていなかった。
「うっ…!」
右でワイルを見ていたはずのベリアが急にうずくまりながら苦しみ始めた。
「ベリア!?」
「ベリアちゃん!!」
「背…中…が…」
モウカがベリアの身体を起こし、さすっているが良くなっていない。呼吸も浅くなっているようだった。呼んでも呼んでも応答が無い。
「ベリア!しっかりし…」
「静かに。」
私の呼びかけを遮ったのは妙に落ち着いていたモウカだった。
「この子は大丈夫じゃ。お前さんたちはディモンをなんとかしなさい。」
何を根拠にそんなことが言えるのか分からなかったが、今それを追及する時間は無い。私はクロと顔を見合わせ、ディモンのことに集中した。
おそらく前方にいるのは先程の二体と一緒にいた一体だろう。ディモンが計画性のある行動をするという話は聞いたことがないが、明らかに私たちを目標としている。ルコとラコはすでにそのことを把握していだろう。
「高度を三千フィートまで下げろ。ワイルから隠れるように山に近づけ。」
ルコの命令にラコ以外の一同が驚いた。一気にそこまで高度を落とすとなると、相当の重力がかかる。私たちは大丈夫だが、ここには体調不良者と高齢者がいる。あまりにも無謀だ。
「急にですか!?」
「違う。」
そう言ったのはルコでは無く、ラコの方だった。
「このまま近くの山に近づきながら高度を落とせばいい。」
「ラコ副隊長。それでは追いつかれてしまいます。」
「はあ…中型のディモンの速度はそこまで速くない。安心しろ。」
二人が何を考えているのか全く分からなかった。速くないと言っても正確に測定されたことはないはずだ。哨戒機の速度では追いつかれてしまう可能性がある。きっと二人にはディモンの知能についての情報が入っているのだ。
「で、ですが、高度を下げながら山に近づけば基地から遠ざかってしまいます。」
「「いいからやれ!!」」
「りょ、了解。」
二人の威勢にパイロットは圧倒されたのか、高度を落としていった。十八歳とは思えない迫力だ。その間、九時の方向にいたディモンが機体の左右に別れついてくる。しかし、どういう訳かこちらを攻撃してくる様子がなくなっていっている。様子を伺っているようだ。
「ディモンの数が増えています!このままでは囲まれてしまいます!速力を上げて逃げましょう!!」
「まだだ!!」
「ですが…!」
高度が三千フィートより下がったとき窓から見えていたワイルが山に隠れて見えなくなった。
「ワイルの姿が山で隠れました。…管制塔との無線、繋がりました!!」
「戦闘機をこちらに寄こすように伝えろ。」
「了解。」
一体何が起きているのか。ディモンたちが一定のところから近づこうとしてこない。それにしても数が多すぎる。ディモンの群れ行動など聞いたこともない。
「ディモンの数、五〇〇m範囲だけでも一六体います…。」
「ルコ隊長。ラコ副隊長。これは一体なんなんですか!?」
勢いよく聞いたのはクロだった。第二部隊の隊員でさえも初めてみる光景なのだろう。そう聞かれたルコとラコはしばらく見つめ合い、こちらを真っ直ぐ見て答えを出した。
それはディモン殲滅を叶える大きな一歩になりえるものだった。
その言葉で私は三体のディモンがいた九時方向を見た。しかし、そこには二体のディモンしか居らず、一体がどこかに消えていた。前方にまわったのがもう一体だろうか。クロの方を向くと同じことを考えているのか、彼女もディモンを見て険しい顔をしていた。
「おかしいです。管制塔との無線が途切れています。」
その言葉で機内の空気が一気に固まった。一体何が起きているのか。新たなディモンの攻撃なのか。今この場にいる誰もが理解できていなかった。
「うっ…!」
右でワイルを見ていたはずのベリアが急にうずくまりながら苦しみ始めた。
「ベリア!?」
「ベリアちゃん!!」
「背…中…が…」
モウカがベリアの身体を起こし、さすっているが良くなっていない。呼吸も浅くなっているようだった。呼んでも呼んでも応答が無い。
「ベリア!しっかりし…」
「静かに。」
私の呼びかけを遮ったのは妙に落ち着いていたモウカだった。
「この子は大丈夫じゃ。お前さんたちはディモンをなんとかしなさい。」
何を根拠にそんなことが言えるのか分からなかったが、今それを追及する時間は無い。私はクロと顔を見合わせ、ディモンのことに集中した。
おそらく前方にいるのは先程の二体と一緒にいた一体だろう。ディモンが計画性のある行動をするという話は聞いたことがないが、明らかに私たちを目標としている。ルコとラコはすでにそのことを把握していだろう。
「高度を三千フィートまで下げろ。ワイルから隠れるように山に近づけ。」
ルコの命令にラコ以外の一同が驚いた。一気にそこまで高度を落とすとなると、相当の重力がかかる。私たちは大丈夫だが、ここには体調不良者と高齢者がいる。あまりにも無謀だ。
「急にですか!?」
「違う。」
そう言ったのはルコでは無く、ラコの方だった。
「このまま近くの山に近づきながら高度を落とせばいい。」
「ラコ副隊長。それでは追いつかれてしまいます。」
「はあ…中型のディモンの速度はそこまで速くない。安心しろ。」
二人が何を考えているのか全く分からなかった。速くないと言っても正確に測定されたことはないはずだ。哨戒機の速度では追いつかれてしまう可能性がある。きっと二人にはディモンの知能についての情報が入っているのだ。
「で、ですが、高度を下げながら山に近づけば基地から遠ざかってしまいます。」
「「いいからやれ!!」」
「りょ、了解。」
二人の威勢にパイロットは圧倒されたのか、高度を落としていった。十八歳とは思えない迫力だ。その間、九時の方向にいたディモンが機体の左右に別れついてくる。しかし、どういう訳かこちらを攻撃してくる様子がなくなっていっている。様子を伺っているようだ。
「ディモンの数が増えています!このままでは囲まれてしまいます!速力を上げて逃げましょう!!」
「まだだ!!」
「ですが…!」
高度が三千フィートより下がったとき窓から見えていたワイルが山に隠れて見えなくなった。
「ワイルの姿が山で隠れました。…管制塔との無線、繋がりました!!」
「戦闘機をこちらに寄こすように伝えろ。」
「了解。」
一体何が起きているのか。ディモンたちが一定のところから近づこうとしてこない。それにしても数が多すぎる。ディモンの群れ行動など聞いたこともない。
「ディモンの数、五〇〇m範囲だけでも一六体います…。」
「ルコ隊長。ラコ副隊長。これは一体なんなんですか!?」
勢いよく聞いたのはクロだった。第二部隊の隊員でさえも初めてみる光景なのだろう。そう聞かれたルコとラコはしばらく見つめ合い、こちらを真っ直ぐ見て答えを出した。
それはディモン殲滅を叶える大きな一歩になりえるものだった。
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