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1-2年後の今

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 私がこの島に来てから約2年ほどたっただろうか。今でも私はこの天空に浮かぶ島で一人暮らしをしている。
 誰もいない島で、一人で2年間も暮らしているなんて寂しくなかった?と思われるかもしれないが、一人暮らしと言うのはとても快適だ。誰にも気を使うこともないし、すべて自由に生きていける。ずっと一人暮らしをしたかったが、高校生という肩書のせいでできなかった一人暮らしを私はこの2年間、謳歌していた。

「はぁ…今日もいい天気」

 この島での生活も実はそこまでのんびりでもない(人に比べたらとてものんびりだが)。朝から体を動かしたほうが気持ちいいので、畑の世話だったり動物の世話をしている。島には私以外誰も住んでいないが、代わりに牛や鶏と言った動物は住んでいる。
 できるだけ島から降りなくていいようにと、この島だけで一通り生活できるように、この2年間で整えていた。家畜を育ててお肉を食べようと思ったのだが愛情が沸いてしまったのと、殺すのが怖くて、まだお肉にしたことはなく、下に降りてお肉を買っているのであまり意味がなかったが。

「はーい、朝ごはんだよーあれ?どこに行った?コビ丸ーーー」

 コビ丸と言うのはお肉にするようではない正真正銘のペットの名前だ。一人暮らしを始めて何週間語ったころから何故か夜が無性に寂しくなったためペットが欲しいと、島から降りて森をメルアさんと一緒に探索し、コビ丸を見つけて持ち帰ってきた。
 コビ丸は見た目がほぼほぼ猫なのだがメルアさんが言うには魔獣らしい。可愛い見た目だが、魔王的な素質を持っているのかもと毎朝姿を見るのを楽しみにしている。朝起きたらいきなりでっかい龍になっているかもしれないからね!
 ちなみにコビ丸という名前は、いつも餌を媚びてくるからそう名付けた。こんなんでで本当に龍になれるのだろうか?

「今日は何を見よっかなー」

 家の中の一室が書庫みたいになっている。いくら畑の世話や動物たちの世話があるからと言って、そんな大々的なものでもないのですぐに手が空く。娯楽が少ないこの異世界ではゲームなんて勿論ないので趣味が限られてくる。その中でも一番の趣味が読書だ。
 本なんて高校生の時なんて漫画以外見ていなかったが、この島に来た時にメルアさんからもらった本がきっかけとなり本を読み始めた。すっかり今は読書にはまっていて、様々な本を集めて読んでいる。ファンタジー小説なども面白いが魔法は魔導書を読んで覚えているため、読書は意外と必要な趣味である、

 一通り午前を過ごせばすぐに昼食となる。私は台所に立ちお昼ご飯を作る。料理なんてほとんどやってこなかったがやればできるもんで、今でお店を出せるレベルだと勝手に思っている。畑で朝収穫した野菜や村で買ってきたお肉を調理してテーブルに料理を並べていく。
 一人分にしては結構量が多いって?失礼な。これは一人で食べる分ではないんです。もうそろそろしたら……

「若菜さん!来ました!」
「メルアさんいらっしゃい。今日は一人だったよね?」

 一人暮らしをしていたものの実はメルアさんが毎日のように、島にやってきていた。仕事の合間のランチや休憩のたびにここに来るのだ。そのためお昼ご飯や午後のおやつはメルアさんと一緒に食べることが多い。そのため寂しさを感じるのは夜くらいだった。
 途中からメルアさんの友達も遊びに来るようになったので、多い時には10人くらいでランチを囲んだり、お茶をしたり遊んだりしている。メルアさんの友達もメルアさんと同じ転生担当者なのだろうか?気になっているが仕事を聞くのも失礼かなと思っていまだに聞けていない。いつか聞いてみよっと。

「う~ん、やっぱり若菜さんのご飯は美味しいですね」
「いえいえ、このくらいで良ければいつでもどうぞ」

 メルアさんとの距離もだいぶ縮まったと思う。毎日のように会っているから当然か。メルアさんはこの島に来た時と何も変わっていないが一つだけ変わったこともある。
 メルアさんはこの世界で好き放題やっていることが上司にばれてこの世界での力を剥奪されたのだ。ちなみに好き放題というのは私に関係しているので何も言えない。「ナメクジ同然です……」と珍しくショックを受けていたがこうして毎日のようにこの世界に来ているので、あまり心配はいらないだろう。メルアさんの友達は爆笑していたが。

 そんなこんなで私はこの世界での生活を楽しんでいた。綺麗な青空と透明な水、鮮やかな山だったり、この島はとても住み心地がいい。食べ物を買いに偶に下に降りなければいけないが、そこで人との交流ができるため、島の引きこもりから脱却できる。2年間生活していて飽きないのだからこれからも楽しく生活ができるだろう。あと何年生きられるかわからないが……あと私の見た目全然変わっていないんだよね。いい環境で過ごしていると老けないのかな?

「あ、そうそう若菜さん……」
「はい?どうしたんですか?」

 メルアさんが思い出したようにポンっと手を叩いた。

「明日、この島に一人やってきます」
「……」

 いきなり、私のスローライフな一人暮らしが終わりを告げようとしていました。
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