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1-お家作り

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 メルアさんは仕事がまだあるからと言い残してどこかへ行ってしまった。

「小沢節子さんを地獄に送ってきます!」
「すごい物騒なことをすごい笑顔で言ってますよ…」

 メルアさんは消える直前に

「あぁ、そうだそうだ。若菜さんにこれあげます」

 そういって大量の本をメルアさんが持っている四次元に繋がっていると思われる本から出して山積みしていった。

「立派な家を作ってくださいね…私もお邪魔するんですから」
「あ……そういえば家ってここにはないんですか…」

 私の言葉を最後まで聞くことなく、強い光に包まれてメルアさんは消えていったのです。

「まぁ…転生って普通一人で何とかするものだからちょっと頑張るか」

 私は辺りを散策することに決めました。

「ここ、島って言ってもそんなに狭いわけじゃないんだよね。ここが端だから島だってわかったけど真ん中にいたらたぶん島だとは思えないもん」

 山みたいなのもちゃんとあるし、川だって流れている。大きさも想像以上に大きい。端から端が見えるほどの小さな島ではない。

「まぁ、でもここから辺がいい場所なのかな?メルアさんがここに転生させてくれたっていうことはそういうことだと思うし」

 島を一周することもなく、私は最初の位置に戻ってきた。下に行ける魔法陣もあるし、メルアさんが置いて行った本も山積みにおいてあるからここに家を建てるっていうことでいいだろう。眺めもとてもいい。

「じゃあ家を建てますか!」

 私は元気よく宣誓したのはいいものの……家ってどうやって建てるの?

「え?もしかして一から作るっていうことはないよね?木を伐って組み立てたりするっていうことだったら私たぶん無理だよ。工作系出来ないし。そもそもあんな大きい樹持てないし……」

 私は山積みにされている本のところへ直行した。

「メルアさんのことだから、魔法で家を作れる本みたいなのも置いて行っているはず!」

 私は一番上の表紙を見た。

【手相占い☆あなたの運勢も丸裸に☆】
「……」
 ポイって投げ捨てた。

「次!」

【ホワイトソースとデミグラスソースの作り方】
「いや、確かに作れないから役に立つかもしれないけど!次!」

【揚げ物に使った油の処理方法】
「うん!その時になったら見る!次!」

【酵母パンの作り方】「美味しそう!」【30種、野菜の育て方】「役立ちそう!」【パスタの種類30種】「そんないらない!」【プルダックポックンミョンの作り方】「言いづら過ぎ!」【インドカレーと日本のカレーのどちらでもないスリランカカレーの作り方】「できればインドか日本が良かった!」【メルアの大好物30選】「……」

「はぁ…ツッコミ疲れちゃった。あの人食べ物本ばっかり置いていきやがったな。一番最初と最後の本はどうでもいいんだよな……魔法系の本は無いの?」

 【メルアの大好物30選】の本を投げ捨て次のタイトルを見ると

【下界移動用魔法陣の使い方】
「お、めちゃくちゃ大事な本があった!……この本が一番薄いのはなんでだろう?」

 そういえば、下に行くための魔法陣があることは教えられても魔法を使ったことがないので使い方が分からない。
 1ページしかない本を捲って内容を確認する。

「えっと……使用するには、魔法陣の中で『我は偉大なる者なり。下界の屑共に会いに行ってやろう』と唱えると魔法陣が起動します……って私これからこれを言わなきゃいけないの?行きたくなくなってきたんだけど」

 異世界に住んでいる人がどんな人たちなのか気になっているのですぐにでも下に降りてみたかったがなんだか嫌になってきた。

「それで……下界からこの島に来るためには…下界って可哀そうなんだよな、えっと…『イレント・レ・アクエイト・サラミケーション』と、唱える……ギャップがありすぎるな」

 この島に戻るための詠唱はとても魔法感がある。

 ちゃんと魔法感があるんだったら最初っから全部そうすればいいのに。なんで私神のような物言いでいかなきゃいけないのよ。あ、でもここには私一人、まぁ誰にも聞かれないんだったらいいか。

 私はとても興味はあるものの、まずは衣食住の住だと思って、本を丁寧に横に置いておく。ちゃんと料理の本も丁寧に置いてるからね。

「えっと次は……」
【簡易住居の作り方】
「これだよ!これを待ってたの!変な人に見えてメルアさんちゃんと役立つ本置いて行ってくれてたんだ……できれば上のほうに置いておいてほしかったけど……」

 私はまぁまぁ分厚い本を開いて確認する。なんと家を作るの木を伐ってきたり、組み立てたりする必要はないとのこと。この本に書かれている魔法陣を家を建てる予定地に書いて詠唱するだけなのだそうだ。
 
「上手くいくためのコツ…あ、そういうのもあるんだ……えっと…この魔法は想像力が大事です。詠唱する際にしっかりと家のイメージをして詠唱しましょう……なるほど

 私は生活圏内で島から落ちないようにするため、少し内陸部に行き、川の近くに家を建てることにした。移動用魔法陣もすぐ近くにあるのでいいだろう。
 本には袋綴じがついていて、それを開けるとチョークが入っていたのでそれを使って魔法陣を描く。結構複雑なので大変そうかと思ったが、初めて魔法を使うからかわくわくが止まらずすぐに描き終えてしまった。

「ふぅ……こんなもんかな。ちょっと曲がっちゃっているとこもあるけど……大丈夫かな?」

 正確に描いたはずだが見本と比べるとどうも何かが違う気がする。

「まぁ線が曲がっちゃったりするのは定規がないから仕方ないよね。定規も袋綴じに入れておいてくれたらよかったのに」

 私は魔法陣の上に立ち、詠唱部分のページをめくる。

「詠唱は、ふむふむ…意外と簡単だね。後は家のイメージか」

 私は頭に理想の家像を浮かべようとするがなかなか浮かんでこない。せっかくだったら豪邸でも建てようかなと思ったが、一人で済むし掃除が大変とよく聞くので辞めることにした。お掃除ロボットがあれば話が別なのだが……

「せっかく異世界に来たしあんまり普通には無い感じの家がいいな。魔女っぽい家っていうか、なんか隠れ家的な?」

 うーんと悩んでいるといきなり下の魔法陣が光りだした。

「え!?なんで?まだ詠唱してないよ?」

 本に視線を落とし、詠唱する文字を確認する【アクエラエリカ】……え?もしかして隠れ家的なって言ったのが【アクエラエリカ】に聞こえちゃったの!?

 誰が聞いているのかはわからないが、遠くのほうから木だったり石だったり土だったりがこちらのほうに迫ってきているので魔法陣が作動してしまったのは確実だろう。

「ちょっと!えっと…魔法陣から出ないと危険ですって書いてあるからまず魔法陣から出てと…えぇ~せっかくだからゆっくり考えて家を作ろうと思ってたのに!」

 そういっている間にも家は自動的に建築されていく。柱のようなものができ、壁ができていく。屋根も次々と完成されていく。

 私はそれを体育座りをしながら眺めていた。もうどうしようもない。いい家が作られるのを願うだけだ。
 そして10分ほど経っただろう。魔法陣から光が消えた。家が完成した証拠だ。

「おぅ…結構いい家じゃん」

 私が想像するより絶対いい、魔女らしさが少しあるちょうどいい大きさの家が完成した。
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