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わざわざ

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 本当に菊川先輩が行動に移したのは冬休みが終わって三学期になってから。

「小嶋くん!」

 部活終わりにセイ先輩を呼んでいるのに気づいて俺は慌てて通路の角でしゃがんだ。

「何かあったか?」

 一緒に居たトモ先輩たちに先に行ってもらうと、菊川先輩はフーっと息を吐き出してからセイ先輩を見る。

「……フリ、じゃないの?」

 潤んだ菊川先輩の瞳。

「最近の小嶋くんとミキはただのカップルだよ!?」
「……だから?」

 ギュッと眉を寄せた菊川先輩をすぐにでもこの場から連れ去りたくなった。
 どうしてわざわざ何度もフラれる必要がある?
 辛い思いをする必要があるんだよ!
 もう止めさせようと立ち上がりかけると、

「キク!」

 三木先輩が体育館から出て歩いてくる。

「諦めたんじゃなかったの?」

 三木先輩の声は驚くほどに穏やかで優しかった。

「どっちも本気ならね!でも、どっちも違うんでしょ!?どっちも好きじゃないなら何で付き合うの!?いつまでフリを続けるの!?」

 菊川先輩の前に立つと、泣きそうな菊川先輩を三木先輩が抱き締めてすっぽり包んでしまう。

「キクもこの女バスのメンバーもかわいくて、守りたいし、抱き締めてあげたい!大好きだよ!みんな!」

 落ち着きのある大人びた声。

「でもね、小嶋は居てくれる時は傍で安心したいし抱き締めて欲しいのよ」

 ゆっくり腕の力を緩めて、三木先輩は見上げる菊川先輩に微笑む。
 三木先輩の腕の中に居ながらも菊川先輩がセイ先輩に目を向けると、セイ先輩はそっと三木先輩の隣に立った。
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