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わざわざ

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 小さく震えた先輩にコートを掛けると、

「いや!吉井くんが寒くなっちゃうでしょ!」

 先輩は慌てて脱ごうとする。

「大丈夫ですよ!走ってきてむしろ暑いんで着てて下さい」

 その手を止めてしっかり被せ直すと、先輩は少しこっちを見てからとりあえず頷いた。
 半分強がりではあったが、半分は本気だ。
 しかも、俺のコートがデカ過ぎて先輩が更にかわいくも見える。
 こんなに小さかったんだ、としみじみ思っていると、

「せめて座る?」

 横にズレてベンチを開けてくれたのを見て、俺もその隣に座った。

「……ミキたち……付き合わないのかなぁ?」
「付き合って欲しくないんじゃないんですか?」
「それはそう……だけど」

 ちょっと口を尖らせて俯くその姿もかわいいと思うのは重症だろうか?

「わざわざくっつく手伝いする必要あります?」

 このまま見ているのはよくない気がして視線を空に向けて強制的に思考を落ち着ける。なのに、

「……吉井くんははっきりさせて欲しいんじゃないの?」
「え!?」

 慌てて戻すと、先輩はフィッと視線を逸らした。
 俺の……ため?

「俺のことも考えてくれる気になったんですか?」
「そ、そんなこと言ってないでしょっ!そんな都合よくなんてできないよ!」

 否定はされたが、意識はしてくれているらしい。
 その事実だけで今はいい。

「じゃあ、あの二人がくっつくまでにもうちょっと俺のことも意識して下さいね?」

 嬉しくて、寒さなんて忘れた。
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