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文化祭

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 俺は隙間を縫って準備室に続くそのドアにくっついて耳に集中する。

「ど?カッコいい?」

 三木先輩の声を聞いて間に合ったのだと理解した。
 小窓から見える未だに白シャツにバスパンというアンバランスな格好をしているセイ先輩の後ろ姿。
 おそらく理解できずに固まっているセイ先輩。

「さ!小嶋くん!」
「……はぁ?」
「きっとかわいいよぉ?」

 菊川先輩、セイ先輩、三木先輩の順で聞こえた声。

「なっ!何でっ!!」

 慌てるセイ先輩の両腕を三木先輩が後ろから捕まえていて、菊川先輩はセイ先輩の前で制服のスカートを広げていた。

「小嶋、絶対かわいいってぇ!」
「はぁっ!?」
「昨日の体育祭で注目集まってる今!小嶋がメイドで私が執事……絶対いい話題になると思わない!?」
「なってたまるかっ!!」

 さすがにスカートは抵抗しているらしい。
 三木先輩が羽交い締めにしたのは見えたが、このままではラチがあかなさそうで俺は一歩踏み出した。

「あ、まだでしたか?」

 ドアを開いて入った俺に縋るような目を向けてきたセイ先輩。
 だが、俺の手にある白いヒラヒラのエプロンを見て言葉を失った。

「客寄せパンダって……やっぱインパクト大事ですよね!」

 三木先輩と代わって十五センチも差がある俺に押さえられたセイ先輩はさすがに暴れることもできなくなって、三木先輩と菊川先輩によって勝手に着替えさせられていく。
 他の女バスメンバーが着ているのとも違うやたらヒラヒラしたその服はパッと見はめちゃくちゃかわいい。
 できるなら菊川先輩に着て欲しかったな……思いつつ、セイ先輩を押さえ付けていた。
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