わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

おかしい

10

「そーよ？」

　それでも女は平然としている。

「そーよ、じゃないですよっ!!本っ当に申し訳ございませんっ!!」

　頭を下げられて何となく違和感を感じているのは俺だけではないようだ。
　周りの男たちもこの執事服の男の登場に驚いていて、こんな男を連れている女の正体が不安になる。

「正式なご婚約の前にこんな……」
「ハイド、むしろそれを言っていいのかしら？」
「あっ!!」

　呆れたような女の声に男は慌てて口を塞ぐがもう遅い。

「婚約って……」

　ざわつく男たちを見て俺もチラッと女を見た。

「はじめまして！サフィナと申します」

　スカートを持ち上げる真似なのか、ふわりと手を動かして頭を下げる仕草は令嬢そのものだが……。

「え、さっきリナって……」
「リオッター家のサフィナですので？」
「わかるかっ!!」

　イタズラが成功した子供のように笑う女に向かって思いっきりツッコんだ。
　じゃじゃ馬にも程がある女の紹介に頭が追い付かない。

「申し訳ありませんっ!!」

　さすがの俺も頭を下げるハイドという執事服の男に同情する。

「謝る必要ある？」

　それでも女は腕を組んでのんびりと首を回した。

「そもそも旦那様にサフィナ様がこちらでまた剣を振っておられたと知れたら大騒ぎですっ!!」

　ハイドが女の肩に真っ白のケープを掛けて、その上質なケープを身に着けて髪を解くと一気に令嬢感が高まる。だが、

「あー……確かに」

　父親を意識して苦笑いする姿はかなり親近感が湧いた。