わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

おかしい

8

「ナメるなよ？」

　睨んでも女は口の端を上げる。

「ならやりましょう？」

　他の男たちと同じように白シャツに黒いズボンを履いてはいるが他に女なんて居ない。
　女が入ってはいけない決まりはないが、本気で女に剣を向けるのはどうしても気が引けた。

「怖い？」
「あ"？」

　なのに更に煽ってきて青筋が浮く。

「ここには私に勝てる男は居ないから」

　肩を竦めながら笑う女とは正反対にその場に居た男たちは少し縮こまった。

「はぁっ!?お前ら負けてんのか!?」

　そんな笑えないことまで聞こえてきて声もすっ飛ぶ。

「いや！めっちゃ強いんですって！リナは女だと思ってちゃダメです!!」

　俺のタオルと瓶を持っている男が言い訳のように言ってきて、

「やられて平然としてんなっ!!」

　思いっきり叫んだ。

「やる？」
「てめ、マジで男をナメてんなよ？」

　上瞼がピクッと痙攣して、俺は鞘を投げ捨てる。
　女も体と同じような細身の剣を抜くと楽しそうに笑った。
　剣を抜いても雰囲気が変わるわけでもなくて、なぜこんな女にここの男たちが負けたのかがわからない。
　いくら手応えはないと言ってもここの奴らはそれなりに腕は立つ連中のはずなのに。

「来ないなら……いくよ？」

　口を開いた瞬間に姿が消えたと思うほど、女は素早く姿勢を低くして突っ込んできた。
　避けた俺にすぐに体勢を変えてまた切りかかってきて俺は剣で受け止める。

「さすがに瞬殺ではないってこと？」

　それでもまだ女は笑っていた。