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愛される王とその幼馴染

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「やあ!」

 なのにリューラは時計屋から帰ってきた俺の前にも笑顔で現れる。
 窓の外を見たまま振り返らず無視をしても、

「サラ?」

 わざわざ俺の手を引いて顔を覗き込むようにしてきた。

「サラって言うなっ!!」
「何で?昔からそう呼んでるだろう?」
「うるせぇ!お優しくてお忙しい王様はさっさと城に帰って仕事に戻れよ!」

 胸を押してやるがビクともしなくてムカつく。
 十四センチも上から青い澄んだ目で俺を見て少し寂しそうにするリューラに俺は容赦なく膝蹴りを食らわせた。
 それを普通に手で受け止めて眉を下げるリューラ。

「今日はこれを渡したかっただけだから」

 言って俺のタイにキラリと光る青い宝石を付けてリューラは離れた。

「明日、会えるの楽しみにしてるよ」
「てめぇに会いに行くんじゃねぇよ!」

 微笑むリューラにまたイラッとする。
 寂しそうにしながらも部屋から出て行くリューラの背中に思いっきり舌を出した。

 あいつはこの国のトップである王なのに、俺は公爵令息。
 爵位は終身であって、原則として生前に譲ることはできない。
 俺は父が亡くならない限り公爵にもなれないのに……。

「サライド様、明日の……」
「うるせぇ!今話し掛けんな!」

 ノックと共に入ってきたもう六十も超えた執事長のリックに八つ当たりをする。

「その物言いはよろしくないと何度もお伝えしておりますが?」
「うっせぇっ!!」

 イライラは収まらなくてクイッと上げたメガネの向こうにあるグレーの瞳を思いっきり睨んでやった。
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