恋なんて必要ないけれど

やっぱり

7

　家の玄関を開けた瞬間に、

「誠也ー！腹減ったっ！」

　兄貴が凄い勢いで階段を降りてきて引いた。

「……面倒くさい」
「えー！だって腹減ったじゃーん！」

　あまりにもうるさくて、かばんとブレザーを放って炊飯器のスイッチを押してから母さんが用意しておいてくれた味噌汁と肉じゃがを温める。
　いつも置いてあるメモを見て、ブリ照りだけ焼いていると兄貴がキッチンカウンターの向こうから顔を出してじっと見てきた。

「何？」
「結局、三木妹と付き合ってんのかよ？」
「関係ない」

　まともに話を聞く気もなくて用意できた皿をどんどんカウンターに置いていく。

「いや！お前の彼女はもしかしたら将来俺の妹になるかもなんだぞ！」
「は？」

　座っているだけでカウンターから下ろしもしない兄貴を睨んでやった。

「あの超絶美人姉妹と家族だぞ！大ニュースだっての！デートとかマジ気合い入れろよ！」

　俺は兄貴の分だけ用意すると、手を洗ってかばんとブレザーを持つ。

「誠也は食わねぇの？」
「まず着替えて課題だけやってくる」
「おぅ！チビは能力と真心で対抗するしかねぇからな！」

　誰にだよ？
　そもそも俺よりチビで頭悪いんだから、料理も覚えろ！せめて手伝え！
　思いながらリビングからさっさと出てため息を吐く。
　うるさくて仕方ない。
　まぁ、兄貴は三木がフリと言い出す前、あの三木の家で夕飯を食べて送ってもらってからずっとだが。
　やっぱりあれこれ言われるのは面倒でしかない。