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やっぱり

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「小嶋ー!」

 自転車で帰っていると後ろから声がして、三木が信号で停まった俺の横にやって来る。

「あれ?何か疲れてるぅ?」
「お前と付き合ってるって今日一日どいつもこいつも……うるせぇ」

 ハンドルに両肘をつけて項垂れると、三木はケタケタと笑った。

「口調崩れてるよ?」
「うっせっ!」

 そんなの構っている余裕もない。
 とにかく今すぐにでもベッドに倒れ込んで目を閉じたい。
 周りで囁かれるのも、直接聞かれるのも……どっちも鬱陶しくて面倒でしかなかった。

「あー、小嶋もクリスマスの予定とか色々言われた?」

 顔を上げると、三木は困ったように笑う。

「……ま、大丈夫よー」
「何が」
「フランスはクリスマスって家族で祝うものだから!」

 パッと顔を上げて信号を見ると、三木は自転車のペダルを踏み込んだ。

「は?」

 その後ろ姿に声を投げると三木は笑いながらこっちを向く。

「どっちかと言うとクリスマスは家族で、年末年始が恋人と過ごすものなのよ!」
「で?」
「だからぁ!イヴは家族で、クリスマスは親戚で集まるから無理ー!ってこと!安心したでしよ?」

 ニヤリと笑われて睨みつけてやった。

「フザけんなよ」
「意外と真面目に付き合ってくれようとしてる?」
「はぁ?」
「クリスマス演出するどころか面倒なタイプでしょ?なのに考えてくれたの?」

 きょとんとした顔を向けられて舌打ちをする。

「んな訳あるか」

 そっぽを向きつつ、ホッとした俺は陽が短くなってきた空を穏やかな気持ちで見上げた。

 
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