恋なんて必要ないけれど

三木からの提案

1

　女バスが白いジャージ姿でベンチに姿を見せた。
　俺とモト先輩はもう考えるのを止めて観客席に腰を下ろす。

「あれ……三木アリスって出るのか？」

　ダイに聞かれてコートを見ると、上に白いジャージで下は白いユニフォーム姿の三木がバッシュを履いてボールを持っていた。

「さぁ？確かに今日で一ヶ月だけど……一ヶ月経ったからって治るものでもないしな」
「昨日もまだ全体練習には入ってなかったけどねぇ」

　ユウの情報も聞いて「シュート練は入るんじゃないか？」と口にしつつ、それだけであいつが終わる訳がないと呆れる。
　遠目でもわかる足に巻かれたテーピングとサポーター。
　三木は笑顔でチームに指示を出しつつ練習を始めたが、スコアの準備をしながら心配そうにそれを見ている菊川。

「あ、間に合った？」
「うーわぁ、イチャつき終わったやつが来やがった」

　トモが顔を出して、さっきタケ先輩から啓西女バスは二回戦に進んだことを聞いていたダイが軽く突っ掛かった。
　タケ先輩の彼女は啓西女バスの一年。
　トモの彼女は啓西女バスの二年でキャプテン。
　ハナの彼女は創成男バスの副顧問……？
　それぞれを考えながら軽く面倒くさくなる。
　俺はただバスケができればいいのに……どうしてあれこれ人間関係を複雑にするのか。
　試合三分前の笛が鳴ってベンチに引き上げる三木を見ながら俺はため息を吐いた。