15 / 18
第15話
しおりを挟む
問題は如何ともしがたい、あまりにも違いすぎる戦力差だ。 人を相手にしても、吸血鬼を相手にしても、どちらにせよ挟撃になってしまう。
こちらの人数がすくないのだから、戦うなんてこともほとんど出来ずに負けることは間違いない。
遠くに逃げる。 なんてことを考えるけど、どこまで遠くに……他国に行くには海を渡らないとならないけれど、日中外に出れないアレンさんが小舟で海を渡れるはずもない。
逃げられない。 ……いっそ、山の中とかなら……僕に必要なご飯とか水はアレンさんと協力したら手に入るだろうし、僕の血があれば、アレンさんも大丈夫だ。
あとは、アレンさんを見つけて説得したら……きっと、死ななくて済む。 一緒にいれる。 悲しいことを言わせなくて、済むはずだ。
近くの森は……と考えるけれど、この辺りは開発されて動物が減っているので難しいだろう。
何にせよ、近くではないけれどそんな森は幾らでもある。 会って説得出来たらいいのだ。
立ち上がって、女の人を探す。 あの人なら知っているかもしれないし、何にせよ聞くしかない。 そう思って廊下を歩いて部屋を開けて閉めてと探していき、お茶を飲んでる女の人を見つける。
「あのっ」
「ん、アレンくんの場所なら知らないよ」
「えっ……」
出鼻を挫かれて、思わず口ごもる。
「そりゃ、君から離れるために私へ預けたんだし、私経由で居場所がバレたら意味ないじゃん」
「……でも、以前から親交があったなら、おおよその見当とか……」
「いや、わざわざ深入りしないよ、お客さんになんて」
当てが外れた。
とりあえず、動かなくてはだめだ。 街を歩かないことには土地勘もないのでどうしようもないと考えて、歩くついでに高い場所に行こうと思う。
「……少し、外歩いてきますね」
「んー、ここら辺は治安いいけど、一応路地とか、人気のないところにはいかないようにね? 早めに帰ってきなよ」
「……分かりました」
女の我が身は不便なものだ。 そんなことを思いながら外に出て、キョロキョロと見回す。 見た目は普通の一軒家のようなので、場所を忘れないようにしっかりと覚えないとダメだ。 道や家を頭に入れたあと、とりあえず土地勘のために大きい道を歩いてみることにする。
もしかしたら近くに、と考えるけれど道幅は広く、家と家にも隙間があって暗い道が続いている場所はない。 以前、アレンさんの言っていた吸血鬼のいやすい環境とは景観が離れている。
ここにはいない。 建物の密集した地域となると、ここより幾分か治安が悪そうな場所になるようだ。 とりあえず、そちらが本命ではあるけれど、先に行くべきなのは、ここら辺で一番遠くを見れそうな、教会の鐘のところだろうか。
あそこなら、近くの地理を一望出来そうだ。 今日はそこまで行こうと脚を運び、頼み込んで登らせてもらう。
高いと言えどしれているので街を一望とはいかないけれど、近くの地理は少し分かる。 お礼と巡拝だけして、教会を去ると少し日が傾いてきた。 早足で女の人の家にまで戻ると、ご飯が用意されていた。
「食費ももらってるから、気にしなくていいよ」
「……ご馳走になります」
また、探さないといけないけれど、夜の間は寝ることしか出来ない。 彼が辛く寂しい思いをしていると思うと泣きそうになるけれど、必死に涙を抑えて眠る。
こちらの人数がすくないのだから、戦うなんてこともほとんど出来ずに負けることは間違いない。
遠くに逃げる。 なんてことを考えるけど、どこまで遠くに……他国に行くには海を渡らないとならないけれど、日中外に出れないアレンさんが小舟で海を渡れるはずもない。
逃げられない。 ……いっそ、山の中とかなら……僕に必要なご飯とか水はアレンさんと協力したら手に入るだろうし、僕の血があれば、アレンさんも大丈夫だ。
あとは、アレンさんを見つけて説得したら……きっと、死ななくて済む。 一緒にいれる。 悲しいことを言わせなくて、済むはずだ。
近くの森は……と考えるけれど、この辺りは開発されて動物が減っているので難しいだろう。
何にせよ、近くではないけれどそんな森は幾らでもある。 会って説得出来たらいいのだ。
立ち上がって、女の人を探す。 あの人なら知っているかもしれないし、何にせよ聞くしかない。 そう思って廊下を歩いて部屋を開けて閉めてと探していき、お茶を飲んでる女の人を見つける。
「あのっ」
「ん、アレンくんの場所なら知らないよ」
「えっ……」
出鼻を挫かれて、思わず口ごもる。
「そりゃ、君から離れるために私へ預けたんだし、私経由で居場所がバレたら意味ないじゃん」
「……でも、以前から親交があったなら、おおよその見当とか……」
「いや、わざわざ深入りしないよ、お客さんになんて」
当てが外れた。
とりあえず、動かなくてはだめだ。 街を歩かないことには土地勘もないのでどうしようもないと考えて、歩くついでに高い場所に行こうと思う。
「……少し、外歩いてきますね」
「んー、ここら辺は治安いいけど、一応路地とか、人気のないところにはいかないようにね? 早めに帰ってきなよ」
「……分かりました」
女の我が身は不便なものだ。 そんなことを思いながら外に出て、キョロキョロと見回す。 見た目は普通の一軒家のようなので、場所を忘れないようにしっかりと覚えないとダメだ。 道や家を頭に入れたあと、とりあえず土地勘のために大きい道を歩いてみることにする。
もしかしたら近くに、と考えるけれど道幅は広く、家と家にも隙間があって暗い道が続いている場所はない。 以前、アレンさんの言っていた吸血鬼のいやすい環境とは景観が離れている。
ここにはいない。 建物の密集した地域となると、ここより幾分か治安が悪そうな場所になるようだ。 とりあえず、そちらが本命ではあるけれど、先に行くべきなのは、ここら辺で一番遠くを見れそうな、教会の鐘のところだろうか。
あそこなら、近くの地理を一望出来そうだ。 今日はそこまで行こうと脚を運び、頼み込んで登らせてもらう。
高いと言えどしれているので街を一望とはいかないけれど、近くの地理は少し分かる。 お礼と巡拝だけして、教会を去ると少し日が傾いてきた。 早足で女の人の家にまで戻ると、ご飯が用意されていた。
「食費ももらってるから、気にしなくていいよ」
「……ご馳走になります」
また、探さないといけないけれど、夜の間は寝ることしか出来ない。 彼が辛く寂しい思いをしていると思うと泣きそうになるけれど、必死に涙を抑えて眠る。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる