トリップ先の私は既に他の人と結婚していた件

可能性

「ご馳走様でした」
きちんとお箸を置いてからそう言う川神さん。
少し俯きがちな表情でさえ美しく感じる。
「ご馳走様です」
私も同じく箸を置く。
「遥さん」
「はい」
「と呼んでも良いですか」
   鮭の骨とお皿の三つの青と赤と黄色の徐々に小さくなる模様を見つめながら尋ねる。
「うん、好きに呼んで良いよ」
    声色で優しい表情を向けてくれてるのが伝わってくる。
「ありがとうございます」
「次は僕の番ね。何故嫌われようとしてきたのか聞いても良いかな。納得がいかない」
   俯いていた瞳は前を向き私の目を見据える。
「私はそんな事しません」
「そう。けれど僕の記憶でそうなってるんだ。しかも起きたら急にだよ」
「それは怖いですね」
   私自身も急に起きたら知らない人にキスされて、挙句ご飯を食べてるこの状況が恐怖だと立ち上がって抗議したい。
「意図的としか思えない、何か隠し事でも？」
「何も隠してませんよ」
貴方こそ結婚してるとか言って私を監禁してる人じゃないでしょうねと言いたい。こうゆう時に限って臆病になる。
 でも、本当に犯罪者だったら。そうだ犯人は下手に刺激しない方が良いと言っていた。抜き足差し足忍び足で逃げれないだろうか。
「何かよからぬこと考えてるでしょ」
   ほんの少しだけ懐疑の目を向ける遥さん。
「そうですよ、いやこれはよからぬ事なんかでは。こんな所に急に連れてこられて!!顔は大人なのに。胸は子供だしって。違う。楓先輩に会わせて下さいっ」
「やっぱり本当なんだね、昨日言ってたのは」