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2章
15話 反撃
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「よし、それでは今から敵に対して反撃に入る。武器を用意しろ」
冷泉大尉が言った。
「無理です」
剣持が言った。
「なんだと!」
冷泉が声を荒げる。
「補給が確保されていません。敵の前面に到着した時点で皆空腹で動けなくなります」
「そんなもの根性で何とかしろ!お前ら軍人だろうが!」
「重い軍備をもって補給なしに速やかに動くことは不可能です」
「補給なら敵に第一撃を与えてから退却してここに戻ってくればいい」
「無理です。敵が我々の存在を認識した時点で、倉庫類は全部押えられます。
時間の勝負です。できるだけ水と食料を確保して安全な場所に移送しないといけません」
「ちいっ、ならばとっと物資を運べ!迫撃砲を最優先にな。直射砲だと敵に
こちらの場所が把握される」
「それより水と食料が最優先です」
「なにを!そんなもの、森の中で調達すればよい。貴様レンジャー訓練も受けたことがなのか!
ハッツ、呆れるな」
「レンジャー訓練は1日だから小隊の食糧を野生の蛇や虫でまかなえるのです。
長期間28人分の食糧を確保するのは補給物資なくして無理です」
「そんなもの根性でなんとでもなる!蛇がいなくなったら、キノコでもコガネムシでも
何でも食べて生き延びろ!それが軍人魂だろうが!」
「コガネムシは寄生虫により食べると死ぬリスクがあります」
「それならお前が指揮官をやれ!」
「作戦行動には従います。しかし、今はその前提となる補給の確保をしなければなりません」
「貴様!」
冷泉が拳を振り上げる。
「剣持中尉のご意見が正しいと思います」
横山軍曹が言葉を発した。
「剣持中尉のご判断に賛同します」
高橋准尉が言った。
「右に同じ」
田中曹長が言った。
冷泉の額から冷や汗が流れる。
「勝手にしろ!」
冷泉が怒鳴った。
「はっ!」
剣持が敬礼する。
「おい、この中に地元の人間はいないか」
剣持が叫ぶ。
「はい!」
中村上等兵が手をあげる。
「この辺りに洞窟か鍾乳洞は無いか」
「はい、野島鍾乳洞があります」
「場所は?」
「北淡であります」
「遠いな、よし、武器はマジックロットだけ持って、あとは食糧を持って一宮まで撤退しよう。
そこで食糧を調達して野島鍾乳洞をめざそう」
「おい、ちょっと待て!洲本を捨てるのか!それは絶対にゆるせんぞ!」
冷泉が怒鳴る。
「……」
剣持は無言で冷泉を見る。
「なんだ!」
「申し訳ございませんでした。冷泉閣下の御命令通りうごきます。しかし、
そのためには勇気ある軍人の模範を見せていただかねばなりません。
冷泉閣下がご自分で偵察に向かわれ、敵を攻撃してよいかどうかご判断願います。
もし、敵に打撃を与えられるとご判断なされた場合は、総攻撃の命令を出してください」
「この臆病者め。分かった。偵察隊の補助の兵士を出せ」
冷泉が言った。
「横山軍曹」
剣持は横山を見た。
「はい!」
横山は敬礼した。
横山は早坂二等兵、田所二等兵、徳井伍長を選んで冷泉大尉に付けた。
「それでは私自らが強硬偵察に向かう。残った部隊の指揮は高橋准尉に任す。
剣持は腰抜けだ。高橋、剣持が敵前逃亡したら射殺しろよ!」
厳しい声で冷泉が言った。
「はい!」
高橋准尉は背筋を伸ばして敬礼した。
冷泉は武装として重い迫撃砲装備を持つよう高橋に命令して偵察に出発した。
高橋の部隊は冷泉の後方200メートルまでの距離を保つよう、命令を受けた。
兵士たちに迫撃砲を担がせ、前進する。
「剣持大尉!」
高橋准尉が剣持を呼びつける。
「これより、我が隊の指揮権を剣持大尉に委譲する。これより貴君が我が隊の指揮を取れ、これは命令である」
高橋准尉が言った。
「ハイ!承知しました!」
剣持が敬礼する。
それを横で見ていた横山がニヤリと笑う。
「高橋准尉、これより我が軍を二分隊に分割し、第二分隊長に高橋准尉を任命する。
第二分隊はただちに武器庫に引き返し、撤退時に我が隊が輸送する食糧とマジックロットを用意せよ」
「ハイ!了解しました!」
高橋准尉は敬礼する。
「横山、分隊の人員を選別せよ」
「はい!」
横山軍曹は分隊の人員を選別し、高橋准尉は素早く後方に撤退した。
剣持隊はそのまま前方に進む。
バウン!
前方で火柱が立つ。
「冷泉大尉は名誉の戦死をとげられた。我々はシンガリ部隊となって敵をけん制しつつ撤退を開始する!」
剣持が叫んだ。
「え?」
田村伍長が驚いたような表情で剣持を見る。
横山がニヤリと笑って田村の肩をポンポンと二回たたく。
「来いたかはしー!おーい!たかはしー、こいー!なぜだー!なぜだー!」
遠くから消え入りそうな声が聞こえてくる。
「何か聞こえてきておりますが」
田中曹長が言った。
「それは鈴虫の声だ」
「私にはそのように聞こえませんが」
「かまわん、この剣持が鈴虫の声だと断言したと記録しておけ」
「テイクノートでよろしいか。私にはそのように聞こえなかったことも記載してよろしいか」
「すべてこの剣持の責任だ。オレの責任でお前ら全員動け」
剣持にそう言われると田中曹長は背筋を伸ばして敬礼した。
「うむ、いい面構えの軍人だ、よし、総員撤退!迫撃砲はすべて捨てていけ。
すこしでも早く撤退する。人命が最優先だ」
剣持が叫ぶと、兵士たちは一斉に後方に向けて走り出した。
持てるだけの水と食料を持って剣持たちは西に向かった。
西の山の峠を超えて、軍用地図を見ながら進む。
途中、ホワイトマンウントチャーチという教会を見つける。
すこし脇道に入って、教会の神父とシスターたちにすぐさま逃げるよう警告する。
そこから元の道に戻る。
しばらく行くと小さなトンネルがあった。
剣持はニヤリと笑う。
ここで一戦できるな。
剣持は地図を広げる。
ここから少し北にそれた場所に巨大なゴミ焼却所があった。
「これは要塞として使えるな」
「ここで一発いっときますか」
横山軍曹が身を乗り出す。
「そうだな、徒歩ではいずれモンスターに追いつかれる。
ここで打撃を与えとく」
剣持は言った。
「横山、隊を2人、10人 13人にわける。二人はオレとお前だ」
「え?」
横山は驚いて剣持を見る。
「大丈夫だ、死なねえから、決死隊じゃねえからよ」
「あ、はい」
横山は苦笑いする。
「残りは高橋准尉に13人、田中曹長に10人」
「はい」
横山は振り分けを終えた。
「田中曹長、このトンネルを出たところ北30メートルの処に待機して、敵が出てきたところで
戦力射撃だ。一撃与えたあと、北のゴミ焼却炉に撤退せよ」
「はい!
田中曹長が敬礼した。
「高橋准尉、田中曹長を追ってきた敵部隊を遠距離射撃しつづけろ。戦力維持が可能な限り、
焼却炉の遮蔽物を防衛せよ。戦力の損耗が20%を上回った場合は撤退せよ」
「はい!」
高橋准尉は敬礼した。
田中曹長、高橋准尉はトンネルの中を抜けていった。
「さて、この山を登るぞ」
剣持はトンネルの上の山を指さした。
「え」
横山軍曹は眉をひそめる。
「そんな顔すんなよ、タバコやっからよお」
剣持はポケットから煙草のゴールデンパットを出して来る。
「士官殿でもこんなタバコ吸うんですね」
「オレはいつもこれだよ。貧乏人なんでね」
剣持はタバコを差し出す。
「いただきます」
横山はタバコを一本抜く。
剣持は箱から直接タバコを一本加えると、ポケットからマッチを出して来る。
それでタバコに火をつけると、ポイとマッチを捨てる。
「あ!私のは」
横山が困惑した顔をする。
「あ?おらよ」
剣持が自分が吸っているタバコを差し出す。
「あ、え、あ、はい」
横山が手の指に挟んだタバコを差し出す。
「吸わねえと火つかねえぞ」
「はい」
横山はタバコを吸う。
剣持のタバコの火が横山のタバコの火にうつって、ジワジワと赤くなる。
「ぷはーっ、うまいっすねえ」
「うめえだろ、体に悪いもんほどうめえんだよ」
剣持はニヤリと笑った。
「さあ、行くぞ」
そう言って剣持は腰のサーベルに触れる。
横山もそれに釣られてサーベルに触れる。
剣持は地面にタバコを捨てる。
「タバコ捨てろ」
「あ、はい」
横山も地面にタバコを捨てて足で踏もうとする。
「踏むな」
剣持が止める。
「あ、はい」
横山はやめた。
トンネルの横から二人は山の上によじ登る。
「大丈夫ですかね。ゴミ焼却場はトンネルの手前じゃないですか」
「だから、そのためのタバコだよ」
「あ、はい」
剣持たちが山の上の林から道の様子をうかがっているとハウンドウルフの群れが道を走って来た。
先頭の一匹が剣持たちが地面に落としたタバコをクンクンかぐ。
「よし、今だ、ファイアーボルト!」
「はい!ファイアーボルト」
剣持と横山はマジックロットから一斉に魔法弾をは発射する。
ドウン!
大きな火柱が立つ。
「よし!本隊に合流するぞ!」
大声で剣持が叫ぶ。
「えー!それ言っちゃうんですか!?」
横山が目を丸くする。
「いいんだよ!」
剣持が叫ぶ。
ハウンドウルフたちの数匹が剣持たちを追い、
本隊はトンネルの中に突進していく。
素早く林の中に駆け込んだハウンドウルフが剣持に襲いかかる。
ザン!
剣持は一撃でハウンドウルフのクビを刎ねとばす。
ドス!
横山が横あいから襲いかかってきたハウンドウルフの腹をサーベルで刺して捻じる。
「ぎゃうん!」
ハウンドウルフは叫んでこと切れた。
「ここからは突きで殺せ。一度油がついたら斬撃では切れんぞ」
「はい!」
横山が元気よく答える。
ドドドドドドーン!
トンネルの向こうから大きな爆音が響いてきて、焦げ臭い匂いが漂う。
後ろからアークデーモンが飛んできて「ぴーっつ!」と指笛を吹く。
数匹のハウンドウルフがトンネルの中から足を引きずりながら出てくる。
ほぼ全滅状態だ。
アークデーモンが横道のゴミ処理場を見つけ、そちらに大挙して向かう。
ドーン!ドーン!
大きな音が響いてゴミ処理場から火柱があがる。
「おい、行くぞ!」
剣持が言うと横山は目を丸くする。
「正気ですか?!」
「おうよ!」
「何の遮蔽物もないのに、敵の後方に躍り出たら確実に殺されるでしょ!」
「いは、後方にはいかねえよ、ちょっと前に出て、空飛んでるアークデーモン撃ち落とすんだよ」
「中途半端だなあ」
「文句言うな、オレを信じろ」
「はい!」
剣持と横山はトンネルの真上辺りまで進んで、空を飛んでゴミ処理場を攻撃しているアークデーモンに
マジックロットを向ける。
「ファイアーボルト!」
「ファイアーボルト!」
バスっ!と火の玉がアークデーモンに当たり、アークデーモンが2匹墜落する。
「さあ、逃げるぞ!」
「あ、はい」
剣持と横山は山の中に走りこむ。
「無理だ、直射だから場所を把握されてる、俺達殺される!」
横山はうめく。
「ダイジョブだ、信じろ」
剣持は平然としている。
剣持が言った通り、アークデーモンの大軍は撤退していった。
「あれ?なんで逃げたんですか?都合よすぎませんか?」
横山はクビをかしげる。
「挟撃されたと思ったんだよ。まさか後方部隊が二人とは思うめえよ」
「そんなもんですかね、じゃあ、ここから全軍で追撃しましょうか。逃げる軍隊ほど
脆いもんはない」
「バカ言うな、逃げるぞ、相手には予備兵力があると見るのが当然だ」
「あ、はい」
「山を下りてゴミ処理場の本隊と合流する」
「はい」
剣持はゴミ処理場に入る。
「高橋、被害は」
「はい、渡辺一等兵、田川二等兵死亡!」
ゴミ処理場の外に出ると、田中曹長の部隊が駆けつけたところだった。
「田中曹長被害は?」
「ありません」
「よし、逃げるぞ!」
「はい!」
田中曹長は敬礼した。
「高橋准尉、総員撤退命令。渡辺と田川のドッグタグを取って高橋准尉が保管。
あとで遺族に引き渡す」
「はい!」
高橋准尉が敬礼した。
そこから剣持の部隊は山を下り、五色村まで出て、ムラの責任者に村人全員の
退避命令を出した。
大勢を立て直してここにもモンスターが攻め込んでくる。
ムラの労働馬を使って近隣の村にも退避命令を伝えるよう命令した。
馬は食糧運搬に使いたかったが、村人の退避が最優先だ。
冷泉大尉が言った。
「無理です」
剣持が言った。
「なんだと!」
冷泉が声を荒げる。
「補給が確保されていません。敵の前面に到着した時点で皆空腹で動けなくなります」
「そんなもの根性で何とかしろ!お前ら軍人だろうが!」
「重い軍備をもって補給なしに速やかに動くことは不可能です」
「補給なら敵に第一撃を与えてから退却してここに戻ってくればいい」
「無理です。敵が我々の存在を認識した時点で、倉庫類は全部押えられます。
時間の勝負です。できるだけ水と食料を確保して安全な場所に移送しないといけません」
「ちいっ、ならばとっと物資を運べ!迫撃砲を最優先にな。直射砲だと敵に
こちらの場所が把握される」
「それより水と食料が最優先です」
「なにを!そんなもの、森の中で調達すればよい。貴様レンジャー訓練も受けたことがなのか!
ハッツ、呆れるな」
「レンジャー訓練は1日だから小隊の食糧を野生の蛇や虫でまかなえるのです。
長期間28人分の食糧を確保するのは補給物資なくして無理です」
「そんなもの根性でなんとでもなる!蛇がいなくなったら、キノコでもコガネムシでも
何でも食べて生き延びろ!それが軍人魂だろうが!」
「コガネムシは寄生虫により食べると死ぬリスクがあります」
「それならお前が指揮官をやれ!」
「作戦行動には従います。しかし、今はその前提となる補給の確保をしなければなりません」
「貴様!」
冷泉が拳を振り上げる。
「剣持中尉のご意見が正しいと思います」
横山軍曹が言葉を発した。
「剣持中尉のご判断に賛同します」
高橋准尉が言った。
「右に同じ」
田中曹長が言った。
冷泉の額から冷や汗が流れる。
「勝手にしろ!」
冷泉が怒鳴った。
「はっ!」
剣持が敬礼する。
「おい、この中に地元の人間はいないか」
剣持が叫ぶ。
「はい!」
中村上等兵が手をあげる。
「この辺りに洞窟か鍾乳洞は無いか」
「はい、野島鍾乳洞があります」
「場所は?」
「北淡であります」
「遠いな、よし、武器はマジックロットだけ持って、あとは食糧を持って一宮まで撤退しよう。
そこで食糧を調達して野島鍾乳洞をめざそう」
「おい、ちょっと待て!洲本を捨てるのか!それは絶対にゆるせんぞ!」
冷泉が怒鳴る。
「……」
剣持は無言で冷泉を見る。
「なんだ!」
「申し訳ございませんでした。冷泉閣下の御命令通りうごきます。しかし、
そのためには勇気ある軍人の模範を見せていただかねばなりません。
冷泉閣下がご自分で偵察に向かわれ、敵を攻撃してよいかどうかご判断願います。
もし、敵に打撃を与えられるとご判断なされた場合は、総攻撃の命令を出してください」
「この臆病者め。分かった。偵察隊の補助の兵士を出せ」
冷泉が言った。
「横山軍曹」
剣持は横山を見た。
「はい!」
横山は敬礼した。
横山は早坂二等兵、田所二等兵、徳井伍長を選んで冷泉大尉に付けた。
「それでは私自らが強硬偵察に向かう。残った部隊の指揮は高橋准尉に任す。
剣持は腰抜けだ。高橋、剣持が敵前逃亡したら射殺しろよ!」
厳しい声で冷泉が言った。
「はい!」
高橋准尉は背筋を伸ばして敬礼した。
冷泉は武装として重い迫撃砲装備を持つよう高橋に命令して偵察に出発した。
高橋の部隊は冷泉の後方200メートルまでの距離を保つよう、命令を受けた。
兵士たちに迫撃砲を担がせ、前進する。
「剣持大尉!」
高橋准尉が剣持を呼びつける。
「これより、我が隊の指揮権を剣持大尉に委譲する。これより貴君が我が隊の指揮を取れ、これは命令である」
高橋准尉が言った。
「ハイ!承知しました!」
剣持が敬礼する。
それを横で見ていた横山がニヤリと笑う。
「高橋准尉、これより我が軍を二分隊に分割し、第二分隊長に高橋准尉を任命する。
第二分隊はただちに武器庫に引き返し、撤退時に我が隊が輸送する食糧とマジックロットを用意せよ」
「ハイ!了解しました!」
高橋准尉は敬礼する。
「横山、分隊の人員を選別せよ」
「はい!」
横山軍曹は分隊の人員を選別し、高橋准尉は素早く後方に撤退した。
剣持隊はそのまま前方に進む。
バウン!
前方で火柱が立つ。
「冷泉大尉は名誉の戦死をとげられた。我々はシンガリ部隊となって敵をけん制しつつ撤退を開始する!」
剣持が叫んだ。
「え?」
田村伍長が驚いたような表情で剣持を見る。
横山がニヤリと笑って田村の肩をポンポンと二回たたく。
「来いたかはしー!おーい!たかはしー、こいー!なぜだー!なぜだー!」
遠くから消え入りそうな声が聞こえてくる。
「何か聞こえてきておりますが」
田中曹長が言った。
「それは鈴虫の声だ」
「私にはそのように聞こえませんが」
「かまわん、この剣持が鈴虫の声だと断言したと記録しておけ」
「テイクノートでよろしいか。私にはそのように聞こえなかったことも記載してよろしいか」
「すべてこの剣持の責任だ。オレの責任でお前ら全員動け」
剣持にそう言われると田中曹長は背筋を伸ばして敬礼した。
「うむ、いい面構えの軍人だ、よし、総員撤退!迫撃砲はすべて捨てていけ。
すこしでも早く撤退する。人命が最優先だ」
剣持が叫ぶと、兵士たちは一斉に後方に向けて走り出した。
持てるだけの水と食料を持って剣持たちは西に向かった。
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途中、ホワイトマンウントチャーチという教会を見つける。
すこし脇道に入って、教会の神父とシスターたちにすぐさま逃げるよう警告する。
そこから元の道に戻る。
しばらく行くと小さなトンネルがあった。
剣持はニヤリと笑う。
ここで一戦できるな。
剣持は地図を広げる。
ここから少し北にそれた場所に巨大なゴミ焼却所があった。
「これは要塞として使えるな」
「ここで一発いっときますか」
横山軍曹が身を乗り出す。
「そうだな、徒歩ではいずれモンスターに追いつかれる。
ここで打撃を与えとく」
剣持は言った。
「横山、隊を2人、10人 13人にわける。二人はオレとお前だ」
「え?」
横山は驚いて剣持を見る。
「大丈夫だ、死なねえから、決死隊じゃねえからよ」
「あ、はい」
横山は苦笑いする。
「残りは高橋准尉に13人、田中曹長に10人」
「はい」
横山は振り分けを終えた。
「田中曹長、このトンネルを出たところ北30メートルの処に待機して、敵が出てきたところで
戦力射撃だ。一撃与えたあと、北のゴミ焼却炉に撤退せよ」
「はい!
田中曹長が敬礼した。
「高橋准尉、田中曹長を追ってきた敵部隊を遠距離射撃しつづけろ。戦力維持が可能な限り、
焼却炉の遮蔽物を防衛せよ。戦力の損耗が20%を上回った場合は撤退せよ」
「はい!」
高橋准尉は敬礼した。
田中曹長、高橋准尉はトンネルの中を抜けていった。
「さて、この山を登るぞ」
剣持はトンネルの上の山を指さした。
「え」
横山軍曹は眉をひそめる。
「そんな顔すんなよ、タバコやっからよお」
剣持はポケットから煙草のゴールデンパットを出して来る。
「士官殿でもこんなタバコ吸うんですね」
「オレはいつもこれだよ。貧乏人なんでね」
剣持はタバコを差し出す。
「いただきます」
横山はタバコを一本抜く。
剣持は箱から直接タバコを一本加えると、ポケットからマッチを出して来る。
それでタバコに火をつけると、ポイとマッチを捨てる。
「あ!私のは」
横山が困惑した顔をする。
「あ?おらよ」
剣持が自分が吸っているタバコを差し出す。
「あ、え、あ、はい」
横山が手の指に挟んだタバコを差し出す。
「吸わねえと火つかねえぞ」
「はい」
横山はタバコを吸う。
剣持のタバコの火が横山のタバコの火にうつって、ジワジワと赤くなる。
「ぷはーっ、うまいっすねえ」
「うめえだろ、体に悪いもんほどうめえんだよ」
剣持はニヤリと笑った。
「さあ、行くぞ」
そう言って剣持は腰のサーベルに触れる。
横山もそれに釣られてサーベルに触れる。
剣持は地面にタバコを捨てる。
「タバコ捨てろ」
「あ、はい」
横山も地面にタバコを捨てて足で踏もうとする。
「踏むな」
剣持が止める。
「あ、はい」
横山はやめた。
トンネルの横から二人は山の上によじ登る。
「大丈夫ですかね。ゴミ焼却場はトンネルの手前じゃないですか」
「だから、そのためのタバコだよ」
「あ、はい」
剣持たちが山の上の林から道の様子をうかがっているとハウンドウルフの群れが道を走って来た。
先頭の一匹が剣持たちが地面に落としたタバコをクンクンかぐ。
「よし、今だ、ファイアーボルト!」
「はい!ファイアーボルト」
剣持と横山はマジックロットから一斉に魔法弾をは発射する。
ドウン!
大きな火柱が立つ。
「よし!本隊に合流するぞ!」
大声で剣持が叫ぶ。
「えー!それ言っちゃうんですか!?」
横山が目を丸くする。
「いいんだよ!」
剣持が叫ぶ。
ハウンドウルフたちの数匹が剣持たちを追い、
本隊はトンネルの中に突進していく。
素早く林の中に駆け込んだハウンドウルフが剣持に襲いかかる。
ザン!
剣持は一撃でハウンドウルフのクビを刎ねとばす。
ドス!
横山が横あいから襲いかかってきたハウンドウルフの腹をサーベルで刺して捻じる。
「ぎゃうん!」
ハウンドウルフは叫んでこと切れた。
「ここからは突きで殺せ。一度油がついたら斬撃では切れんぞ」
「はい!」
横山が元気よく答える。
ドドドドドドーン!
トンネルの向こうから大きな爆音が響いてきて、焦げ臭い匂いが漂う。
後ろからアークデーモンが飛んできて「ぴーっつ!」と指笛を吹く。
数匹のハウンドウルフがトンネルの中から足を引きずりながら出てくる。
ほぼ全滅状態だ。
アークデーモンが横道のゴミ処理場を見つけ、そちらに大挙して向かう。
ドーン!ドーン!
大きな音が響いてゴミ処理場から火柱があがる。
「おい、行くぞ!」
剣持が言うと横山は目を丸くする。
「正気ですか?!」
「おうよ!」
「何の遮蔽物もないのに、敵の後方に躍り出たら確実に殺されるでしょ!」
「いは、後方にはいかねえよ、ちょっと前に出て、空飛んでるアークデーモン撃ち落とすんだよ」
「中途半端だなあ」
「文句言うな、オレを信じろ」
「はい!」
剣持と横山はトンネルの真上辺りまで進んで、空を飛んでゴミ処理場を攻撃しているアークデーモンに
マジックロットを向ける。
「ファイアーボルト!」
「ファイアーボルト!」
バスっ!と火の玉がアークデーモンに当たり、アークデーモンが2匹墜落する。
「さあ、逃げるぞ!」
「あ、はい」
剣持と横山は山の中に走りこむ。
「無理だ、直射だから場所を把握されてる、俺達殺される!」
横山はうめく。
「ダイジョブだ、信じろ」
剣持は平然としている。
剣持が言った通り、アークデーモンの大軍は撤退していった。
「あれ?なんで逃げたんですか?都合よすぎませんか?」
横山はクビをかしげる。
「挟撃されたと思ったんだよ。まさか後方部隊が二人とは思うめえよ」
「そんなもんですかね、じゃあ、ここから全軍で追撃しましょうか。逃げる軍隊ほど
脆いもんはない」
「バカ言うな、逃げるぞ、相手には予備兵力があると見るのが当然だ」
「あ、はい」
「山を下りてゴミ処理場の本隊と合流する」
「はい」
剣持はゴミ処理場に入る。
「高橋、被害は」
「はい、渡辺一等兵、田川二等兵死亡!」
ゴミ処理場の外に出ると、田中曹長の部隊が駆けつけたところだった。
「田中曹長被害は?」
「ありません」
「よし、逃げるぞ!」
「はい!」
田中曹長は敬礼した。
「高橋准尉、総員撤退命令。渡辺と田川のドッグタグを取って高橋准尉が保管。
あとで遺族に引き渡す」
「はい!」
高橋准尉が敬礼した。
そこから剣持の部隊は山を下り、五色村まで出て、ムラの責任者に村人全員の
退避命令を出した。
大勢を立て直してここにもモンスターが攻め込んでくる。
ムラの労働馬を使って近隣の村にも退避命令を伝えるよう命令した。
馬は食糧運搬に使いたかったが、村人の退避が最優先だ。
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西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました
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冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。
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神の使いでのんびり異世界旅行〜チート能力は、あくまで自由に生きる為に〜
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連日遅くまで働いていた男は、転倒事故によりあっけなくその一生を終えた。しかし死後、ある女神からの誘いで使徒として異世界で旅をすることになる。
与えられたのは並外れた身体能力を備えた体と、卓越した魔法の才能。
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ドグラマ ―超科学犯罪組織 ヤゴスの三怪人―
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*プロローグ追加しました。
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『悪の秘密組織 ヤゴス』の三大幹部が荒廃した未来で甦った。その目的とは?
悪党が跳梁跋扈する荒廃した未来のデストピア日本で、三大怪人大暴れ。
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長くなって来たので続編へと移っております。形としての一応の完結です。
一回辺りの量は千文字強程度と大変読みやすくなっております。
家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~
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ある休日、家族でお昼ご飯を食べていたらいきなり異世界へ転移した。俺(長男)カケルは日本と全く違う異世界に動揺していたが、父と母の様子がおかしかった。なぜか、やけに落ち着いている。問い詰めると、もともと父は異世界人だった(らしい)。信じられない!
☆第4回次世代ファンタジーカップ
142位でした。ありがとう御座いました。
★Nolaノベルさん•なろうさんに編集して掲載中。
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