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五十五話 ドカンちゃんの一番長い日(後編)(第一章完)
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せっかく、ドカンちゃんの家の前にねこの仲間があつまったので、
ドカンちゃんはねこの地霊たちをお家に招いてお茶会をした。
「こりゃうめーわー」
サイベがひとりでバリバリ煎餅をほおばる。
サイアが四角いクッキーを斜めにして両目に当てる。
「シュワッチ!」
「あのね!あのね!それでね!シアンちゃんが手にヤケドしながら
ボクを助けてくれたんだよ、それでね、シアンちゃんお腹が
減っちゃって、桜木おじいさんのお店のタオルを
モシャモシャ食べちゃったの!おかしいよねー」
一生懸命サバンちゃんがドカンちゃんに今まで冒険旅行のお話をする。
「へー、その桜木さんって不動産屋さんなんですね。どこにあるか
場所を教えてもらえませんか?」
「いいよ!」
サバンちゃんは一生懸命、ドカンちゃんに桜木さんのお店の場所を教える。
お茶会が済んだあと、ドカンちゃんはチカンちゃんを連れて
桜木さんの不動産屋さんに行った。
「おお、よく来たね、かわいいお嬢さんたち」
桜木さんはニッコリ笑った。
「私が見えるの~」
チカンちゃんがピョンピョン飛び跳ねる。
「ああ、見えるよ」
桜木さんは微笑んだ。
「実は、カクカクシカジカで」
ドカンちゃんは今までの経緯を話す。
「そういう事ですか、それならまず、その木戸さんという人の
資産状況を確認しなくてはね。今から一緒に車で行きましょう」
「はい」
ドカンちゃん、チカンちゃん、桜木さんは車で木戸さんの家に向かった。
ドカンちゃんが木戸さんに事情を知らせると、木戸さんは
何の躊躇もなく、桜木さんに自分の保有資産について開示した。
「うむ……これは助かるかもしれん」
その資産状況を見て桜木さんが言った。
「本当ですか!」
木戸さんの表情がパッと明るくなった。
「ただし!」
「ただし?」
「あなたはまず、戦う意志をしめさなけりゃならん」
「どうしてですか?」
「まず、自分は運命にあらがう、自分を押さえつけ服従を強いる者に
抵抗する!そう宣言しなければならん」
「なぜです?」
「戦う意志がなければ終わってしまうからだよ。車の中でクックさんの話を聞いたよ。
今の日本人の大部分はそうだ。
相手が手加減してくれると思って甘え、そして、実際に多くの場合は手加減してもらえる。
しかし、ルール無用の悪党がやってきたとき、
そういう奴らは皆殺しにされる。
私はね、そういう、自分で戦う意志がない人に巻き込まれて、自分まで
酷い目にあうのはまっぴらなんだよ。
戦うか、じっとしていて殺されるか、それを選んでもらえないと、
こちらも協力できない」
「分かりました!戦います」
「よし分かった。今から弁護士先生のところに行きましょう」
「いきなり弁護士ですか?」
「ありゃ、戦わないのかい、それじゃ、私は帰らせていただきますよ」
「いや、戦います。行きましょう!」
桜木さんはすぐにスマホで弁護士先生に連絡し、
桜木さんの車で、木戸さん、ドカンちゃん、チカンちゃんも一緒に
弁護士先生のところに行く。
色々と状況説明を聞いて、弁護士先生はニッコリと笑う。
「訴訟を起こすなら私が受けてもいいですよ」
「負けたらどうしましょう」
木戸さんが問う。
「負けると判断したら、その段階で依頼は受けません。
今回のポイントは、最初にお父さんから印鑑証明を依託
されていたあなた、健晴さんが断っているのに、
相手方が、勝手にあなたの母と一緒に印鑑証明の
紛失届けを出して印鑑証明を偽造している点です」
「でも母ですよね」
「お父さんの印鑑証明ですよね」
「はい」
「弁護士は、戦って勝てる確率が低ければ依頼を断ります。
私は告訴の依頼を受けてもいいです」
「他に方法はないでしょうか」
「それは有りますよ。告訴の案件と認識していたので。
もし、告訴する気がなければ、普通に銀行に金を返して
担保がはずれてそれで終わりです」
「違約金が……」
「違約金と全財産、どちらが大事ですか」
「全財産です」
「告訴しても違約金より安くで戦えます。どうします」
「とにかく、私たちとしては全財産が帰ってくればそれでいいんです。
告訴になれば、銀行側も信用を失墜して裁判以上の信用被害を受ける。
そうすれば、関係ない他の行員にまで迷惑がかかる」
「あなたは、良くも悪くも古い昔の日本人ですね。
そういうお考えなら、私はこれ以上話しはしません」
弁護士先生は桜木さんを見る。
「ご迷惑をおかけしました。あとは私がやります」
桜木さんは弁護士先生に向かって深々と頭をさげる。
そして、木戸さんを見る。
「それで?土地を売る気はあるんですか。先祖伝来の土地ですってね。
あそこは良い場所だ。売ったら二度と買い戻せませんよ、いくら金を積んでも」
「私たちの命がかかっています。お願いします」
「そうですか、ここで土地を売りたくないと言ったら
私は二度と、あなたたちに関わるつもりはありませんでした。
戦う意志を決めた。今はそれだけで十分です」
それまで木戸さんに対して桜木さんは醒めた表情であったが、
ここで初めてニッコリと笑った。
「もし、状況が変わったらいつでも声をかけてください」
弁護士先生が言った。
桜木さんは木戸さんを車で家に送ったあと、
ドカンちゃんとチカンちゃんを不動産屋さんまで連れてきた。
「今回は良いお話を持ってきてくれてありがとうね」
「こちらこそ。どうか、木戸さんを助けてあげてください」
「私も不動産の法律に関してはプロフェッショナルだ。
地元の建設会社も巻き込んで、銀行さんには
ちょっと懲りてもらおうかね」
そういって桜木さんは満面の笑みを浮かべた。
「ありがとうございます!」
ドカンちゃんは深々と頭をさげた。
「ありがとー!ありがとー!」
チカンちゃんはピョンピョン跳ねた。
「ちょっと待ちなさい!」
怒りに満ちた顔でシアンちゃんがドカンちゃんの前に立ちはだかる。
「ど、どうしたんですか?」
ドカンちゃんはびっくりする。
「木戸健晴の戸田家の不動産を売ることは絶対私が許さないわ!」
「一体どういう事なんですか。あの土地を売らないと、木戸さんは
全財産取られちゃうんですよ!」
「だって、だって、あそこの家には何百年も続いた古井戸があるのよ!
絶対、それは潰させない!私の命にかえても!!!」
シアンちゃんが必死に叫ぶ。
「そんな事いっても、悪徳業者に土地を全部取られちゃったら
その井戸だって、潰されちゃうんですよ!」
ドカンちゃんがそう言うとシアンちゃんは、ハッと目を見開く。
そして目からポロポロと涙がこぼれる。
「うわーっ、私はどうしたらいいのー!サバンちゃんが死んじゃうー!
私の命より大切なサバンちゃんがー!」
シアンちゃんが大声で泣き出した。
サバンちゃんは優しい目でシアンちゃんを見ながら、
ゆっくりとシアンちゃんの頭をなでる。
「そんなにボクの事思ってくれてありがと。命あるものは、
いつかは消えゆくんだよ、ボクの姿は消えても魂は
いつでもシアンちゃんと一緒だよ」
そう言ってサバンちゃんはニッコリと微笑んだ。
「いった、どういう事なんですか!」
ドカンちゃんは愕然とする。
「わーっ!地霊はよりしろが必要なのよー!
自分のいる場所のよりしろがなくなったら死んじゃうー!
あの井戸が無くなったら、サバンちゃんが死んじゃうーっ!わーっ!」
シアンちゃんは大声で泣いた。
「大丈夫じゃ!」
桜木さんが大声で怒鳴った。
「え!?」
シアンちゃんが驚いて桜木さんを見る。
「大丈夫じゃよ、井戸は埋めたりせん」
「どういう事なの?」
「いいかい、伝統を守る、匠の家を作る建設会社は、
決して古井戸を埋めたりせん。ちゃんと、パイプを通して、
地上の息が吸える空気穴をつくって、完全に井戸を埋めないようにするのじゃ」
「そうなの!?」
シアンちゃんは驚いて聞く。
「うむ、それからな、家の建築について、一言いいたい。
ドカンちゃんから聞いたが、
たしかに、アパート経営は借金をして長年家を保たさなければならないので
三十年外壁メンテナンス不要は大事なポイントじゃ。
だがな、日本建築の本道はあくまでも木造!
木造建築こそ日本建築の神髄!
匠の作った木造日本建築は百年も千年も保つものだ!
それは、持ち家を望む者のあこがれだ。
だから、自宅建設をする者は、できうる限り、
匠の技を持つ、地元で信頼された建築会社を選ぶべきなのぢゃよ」
「そうなんですか」
驚いてドカンちゃんが聞く。
「そうじゃ」
「では、同じ木造なら、どうやって建築会社を見極めるんですか」
「そこで井戸だよ。匠の技を受け継ぐ伝統的大工は絶対古井戸を
埋めたりせん。そして、地域の口コミを聞くがいい、そこで
よい評価をうけている会社であれば、たとえ一部上場していなくても
そこを選ぶべきだ。一部上場していても、ゴミみたいな家しか建てられぬ
会社などごまんとある。会社の規模ではない。
選ぶのはあくまでも、地域の信頼と口コミじゃ!」
「そうなんですね、だからこそ、そういう会社は古井戸を埋めず、
ちゃんと井戸さんが息ができる空気穴をあけるんですね!」
「そう。ワシは、井戸の空気穴をあけない会社には、いくら高額を出そうが、
あの土地は売らない!」
「うわあああああああー!桜木さーああああああん」
泣きながら、シアンちゃんは桜木さんに走り寄ってしがみついた。
「よしよし、辛かったな、もう安心していいんだよ、もう大丈夫だからね」
桜木さんは優しく微笑んで、何度もシアンちゃんの頭をなでた。
第一部(完)
追伸
今年も三百円で買った菊桃が成長して満開に咲きました。
ドカンちゃんはねこの地霊たちをお家に招いてお茶会をした。
「こりゃうめーわー」
サイベがひとりでバリバリ煎餅をほおばる。
サイアが四角いクッキーを斜めにして両目に当てる。
「シュワッチ!」
「あのね!あのね!それでね!シアンちゃんが手にヤケドしながら
ボクを助けてくれたんだよ、それでね、シアンちゃんお腹が
減っちゃって、桜木おじいさんのお店のタオルを
モシャモシャ食べちゃったの!おかしいよねー」
一生懸命サバンちゃんがドカンちゃんに今まで冒険旅行のお話をする。
「へー、その桜木さんって不動産屋さんなんですね。どこにあるか
場所を教えてもらえませんか?」
「いいよ!」
サバンちゃんは一生懸命、ドカンちゃんに桜木さんのお店の場所を教える。
お茶会が済んだあと、ドカンちゃんはチカンちゃんを連れて
桜木さんの不動産屋さんに行った。
「おお、よく来たね、かわいいお嬢さんたち」
桜木さんはニッコリ笑った。
「私が見えるの~」
チカンちゃんがピョンピョン飛び跳ねる。
「ああ、見えるよ」
桜木さんは微笑んだ。
「実は、カクカクシカジカで」
ドカンちゃんは今までの経緯を話す。
「そういう事ですか、それならまず、その木戸さんという人の
資産状況を確認しなくてはね。今から一緒に車で行きましょう」
「はい」
ドカンちゃん、チカンちゃん、桜木さんは車で木戸さんの家に向かった。
ドカンちゃんが木戸さんに事情を知らせると、木戸さんは
何の躊躇もなく、桜木さんに自分の保有資産について開示した。
「うむ……これは助かるかもしれん」
その資産状況を見て桜木さんが言った。
「本当ですか!」
木戸さんの表情がパッと明るくなった。
「ただし!」
「ただし?」
「あなたはまず、戦う意志をしめさなけりゃならん」
「どうしてですか?」
「まず、自分は運命にあらがう、自分を押さえつけ服従を強いる者に
抵抗する!そう宣言しなければならん」
「なぜです?」
「戦う意志がなければ終わってしまうからだよ。車の中でクックさんの話を聞いたよ。
今の日本人の大部分はそうだ。
相手が手加減してくれると思って甘え、そして、実際に多くの場合は手加減してもらえる。
しかし、ルール無用の悪党がやってきたとき、
そういう奴らは皆殺しにされる。
私はね、そういう、自分で戦う意志がない人に巻き込まれて、自分まで
酷い目にあうのはまっぴらなんだよ。
戦うか、じっとしていて殺されるか、それを選んでもらえないと、
こちらも協力できない」
「分かりました!戦います」
「よし分かった。今から弁護士先生のところに行きましょう」
「いきなり弁護士ですか?」
「ありゃ、戦わないのかい、それじゃ、私は帰らせていただきますよ」
「いや、戦います。行きましょう!」
桜木さんはすぐにスマホで弁護士先生に連絡し、
桜木さんの車で、木戸さん、ドカンちゃん、チカンちゃんも一緒に
弁護士先生のところに行く。
色々と状況説明を聞いて、弁護士先生はニッコリと笑う。
「訴訟を起こすなら私が受けてもいいですよ」
「負けたらどうしましょう」
木戸さんが問う。
「負けると判断したら、その段階で依頼は受けません。
今回のポイントは、最初にお父さんから印鑑証明を依託
されていたあなた、健晴さんが断っているのに、
相手方が、勝手にあなたの母と一緒に印鑑証明の
紛失届けを出して印鑑証明を偽造している点です」
「でも母ですよね」
「お父さんの印鑑証明ですよね」
「はい」
「弁護士は、戦って勝てる確率が低ければ依頼を断ります。
私は告訴の依頼を受けてもいいです」
「他に方法はないでしょうか」
「それは有りますよ。告訴の案件と認識していたので。
もし、告訴する気がなければ、普通に銀行に金を返して
担保がはずれてそれで終わりです」
「違約金が……」
「違約金と全財産、どちらが大事ですか」
「全財産です」
「告訴しても違約金より安くで戦えます。どうします」
「とにかく、私たちとしては全財産が帰ってくればそれでいいんです。
告訴になれば、銀行側も信用を失墜して裁判以上の信用被害を受ける。
そうすれば、関係ない他の行員にまで迷惑がかかる」
「あなたは、良くも悪くも古い昔の日本人ですね。
そういうお考えなら、私はこれ以上話しはしません」
弁護士先生は桜木さんを見る。
「ご迷惑をおかけしました。あとは私がやります」
桜木さんは弁護士先生に向かって深々と頭をさげる。
そして、木戸さんを見る。
「それで?土地を売る気はあるんですか。先祖伝来の土地ですってね。
あそこは良い場所だ。売ったら二度と買い戻せませんよ、いくら金を積んでも」
「私たちの命がかかっています。お願いします」
「そうですか、ここで土地を売りたくないと言ったら
私は二度と、あなたたちに関わるつもりはありませんでした。
戦う意志を決めた。今はそれだけで十分です」
それまで木戸さんに対して桜木さんは醒めた表情であったが、
ここで初めてニッコリと笑った。
「もし、状況が変わったらいつでも声をかけてください」
弁護士先生が言った。
桜木さんは木戸さんを車で家に送ったあと、
ドカンちゃんとチカンちゃんを不動産屋さんまで連れてきた。
「今回は良いお話を持ってきてくれてありがとうね」
「こちらこそ。どうか、木戸さんを助けてあげてください」
「私も不動産の法律に関してはプロフェッショナルだ。
地元の建設会社も巻き込んで、銀行さんには
ちょっと懲りてもらおうかね」
そういって桜木さんは満面の笑みを浮かべた。
「ありがとうございます!」
ドカンちゃんは深々と頭をさげた。
「ありがとー!ありがとー!」
チカンちゃんはピョンピョン跳ねた。
「ちょっと待ちなさい!」
怒りに満ちた顔でシアンちゃんがドカンちゃんの前に立ちはだかる。
「ど、どうしたんですか?」
ドカンちゃんはびっくりする。
「木戸健晴の戸田家の不動産を売ることは絶対私が許さないわ!」
「一体どういう事なんですか。あの土地を売らないと、木戸さんは
全財産取られちゃうんですよ!」
「だって、だって、あそこの家には何百年も続いた古井戸があるのよ!
絶対、それは潰させない!私の命にかえても!!!」
シアンちゃんが必死に叫ぶ。
「そんな事いっても、悪徳業者に土地を全部取られちゃったら
その井戸だって、潰されちゃうんですよ!」
ドカンちゃんがそう言うとシアンちゃんは、ハッと目を見開く。
そして目からポロポロと涙がこぼれる。
「うわーっ、私はどうしたらいいのー!サバンちゃんが死んじゃうー!
私の命より大切なサバンちゃんがー!」
シアンちゃんが大声で泣き出した。
サバンちゃんは優しい目でシアンちゃんを見ながら、
ゆっくりとシアンちゃんの頭をなでる。
「そんなにボクの事思ってくれてありがと。命あるものは、
いつかは消えゆくんだよ、ボクの姿は消えても魂は
いつでもシアンちゃんと一緒だよ」
そう言ってサバンちゃんはニッコリと微笑んだ。
「いった、どういう事なんですか!」
ドカンちゃんは愕然とする。
「わーっ!地霊はよりしろが必要なのよー!
自分のいる場所のよりしろがなくなったら死んじゃうー!
あの井戸が無くなったら、サバンちゃんが死んじゃうーっ!わーっ!」
シアンちゃんは大声で泣いた。
「大丈夫じゃ!」
桜木さんが大声で怒鳴った。
「え!?」
シアンちゃんが驚いて桜木さんを見る。
「大丈夫じゃよ、井戸は埋めたりせん」
「どういう事なの?」
「いいかい、伝統を守る、匠の家を作る建設会社は、
決して古井戸を埋めたりせん。ちゃんと、パイプを通して、
地上の息が吸える空気穴をつくって、完全に井戸を埋めないようにするのじゃ」
「そうなの!?」
シアンちゃんは驚いて聞く。
「うむ、それからな、家の建築について、一言いいたい。
ドカンちゃんから聞いたが、
たしかに、アパート経営は借金をして長年家を保たさなければならないので
三十年外壁メンテナンス不要は大事なポイントじゃ。
だがな、日本建築の本道はあくまでも木造!
木造建築こそ日本建築の神髄!
匠の作った木造日本建築は百年も千年も保つものだ!
それは、持ち家を望む者のあこがれだ。
だから、自宅建設をする者は、できうる限り、
匠の技を持つ、地元で信頼された建築会社を選ぶべきなのぢゃよ」
「そうなんですか」
驚いてドカンちゃんが聞く。
「そうじゃ」
「では、同じ木造なら、どうやって建築会社を見極めるんですか」
「そこで井戸だよ。匠の技を受け継ぐ伝統的大工は絶対古井戸を
埋めたりせん。そして、地域の口コミを聞くがいい、そこで
よい評価をうけている会社であれば、たとえ一部上場していなくても
そこを選ぶべきだ。一部上場していても、ゴミみたいな家しか建てられぬ
会社などごまんとある。会社の規模ではない。
選ぶのはあくまでも、地域の信頼と口コミじゃ!」
「そうなんですね、だからこそ、そういう会社は古井戸を埋めず、
ちゃんと井戸さんが息ができる空気穴をあけるんですね!」
「そう。ワシは、井戸の空気穴をあけない会社には、いくら高額を出そうが、
あの土地は売らない!」
「うわあああああああー!桜木さーああああああん」
泣きながら、シアンちゃんは桜木さんに走り寄ってしがみついた。
「よしよし、辛かったな、もう安心していいんだよ、もう大丈夫だからね」
桜木さんは優しく微笑んで、何度もシアンちゃんの頭をなでた。
第一部(完)
追伸
今年も三百円で買った菊桃が成長して満開に咲きました。
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