ケイちゃんがゆく!

楠乃小玉

文字の大きさ
上 下
7 / 21

七話 ポリタン ポリタン ナポリタ~ン!

しおりを挟む
 「忍ちゃんはナポリタンが好きなんだね、これあげるね」

 忍ちゃんがいつも半額シールが貼ったナポリタンをほしがるので
 買って家に帰った時、忍ちゃんにナポリタンのお総菜をあげた。

 「……」

 忍ちゃんはそれを受け取ってしばらく眺めたあと、ポイ!と
 テーブルの上にほうりなげた。

 おい!

 「せっかく買ってあげたのに食べないの?」

 「当たり前じゃない、私は半額シールがほしかっただけよ、
 パスタは高級フランスレストランのスープスパが一番に決まってるじゃない」

 「は?じゃあ買ってなんて言わなきゃいいじゃん」

 「私にとって半額シールは至高の喜びなのよ!下々の者にはわからないでしょうけどね!

 忍ちゃんはむっちゃイキりながら言った。

 「しかたないなあ、もう」

 こいつらを真面目に相手にしてもしかたないので、他の精霊に食べさせてみることにした。

 「ねえねえ慶ちゃん、美味しいスパゲッティたべる?」

 ボクがそう言うと慶ちゃんは目を丸くして走り寄ってきた。

 「何何?美味しいパスタ?スパゲッティってことは太さ1.9ミリ以上ってことだよね。
 ボロネーゼかな?パルマ風かな?」

 「何いってんのお前?」

 「美味しいパスタってそういうものじゃん!」
 
 「ボクわかんないよ、そういうの」

 「じゃあ、あのね、ソースはトマトソールなの、それともボロネーゼなの?」

 「あーよくわかんないんだけど、ケチャップで炒めたやつだよ」

 「は?スパゲッティーにケチャップ入れるなんてとんでもないよー!うぎゃー!」

 慶ちゃんは激怒して飛び跳ねた。

 こいつらの痛点がまったく理解できない。

 「おいしいから食べてみなよ」

 「そんなの美味しいわけないよ、だいたいいつゆでたんだよ」

 「ゆでてないよ、最初からお総菜として売ってるやつだよ」

 「それじゃーパスタがのびてブヨブヨになってるじゃん!アルデンテじゃなきゃ
 パスタじゃないじゃん!むぎょー!」

 また慶ちゃんが怒ってピョンピョンはねた。
 もうすでに何を言っているのか分からない。

 「まあいいから食べてみなよ」

 ボクはお総菜のナポリタンスパゲティを電子レンジに入れてチンして、それに少し醤油を入れて、
 よくかき混ぜて慶ちゃんにあげた。

 慶ちゃんは最初は警戒してクンクン匂いをかいでたけど、そのうち、一口ぱくっとたべた。
 そして目を丸くした。

 「おいちー!」

 「だしょ~」

 「これはうどんだね!日本原産のケチャップうどんだよ!」

 「まあ、何でもいいけど」

 それからというもの、忍ちゃんはナポリタンをせがまなくなり、
 慶ちゃんがナポリタンをせがむようになった。

 慶ちゃんかけっこう遠慮深いのであんまり直接的におねだりはしないけど、
 スーパーのお総菜売り場に行くと「ポリタン ポリタン ナポリタ~ン!」
 と歌いながらフラダンスを踊る。
 ちょっとウザイけど、ちょっとだけかわいい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

旦那様に離婚を突きつけられて身を引きましたが妊娠していました。

ゆらゆらぎ
恋愛
ある日、平民出身である侯爵夫人カトリーナは辺境へ行って二ヶ月間会っていない夫、ランドロフから執事を通して離縁届を突きつけられる。元の身分の差を考え気持ちを残しながらも大人しく身を引いたカトリーナ。 実家に戻り、兄の隣国行きについていくことになったが隣国アスファルタ王国に向かう旅の途中、急激に体調を崩したカトリーナは医師の診察を受けることに。

【完結】返してください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。 私が愛されていない事は感じていた。 だけど、信じたくなかった。 いつかは私を見てくれると思っていた。 妹は私から全てを奪って行った。 なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、 母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。 もういい。 もう諦めた。 貴方達は私の家族じゃない。 私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。 だから、、、、 私に全てを、、、 返してください。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

地味すぎる私は妹に婚約者を取られましたが、穏やかに過ごせるのでむしろ好都合でした

茜カナコ
恋愛
地味な令嬢が婚約破棄されたけれど、自分に合う男性と恋に落ちて幸せになる話。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

処理中です...