ケイちゃんがゆく！

第一話 ボケたおじいちゃん

　タケシくんのおじいちゃんは、エライ大学の先生でした。
　お父さんもお母さんもまわりの人もそんなおじいちゃんを怖がっていました。

　でも、タケシくんのおじいちゃん、慶一郎ケイイチロウおじいちゃんは、タケシくんの前では
　とっても面白い人でした。
　
　よく動物園に連れて行ってくれて、いっぱいダジャレをいって、おどけておどってくれました。
　おじいちゃんはおばあちゃんが亡くなってから、一人で広いお家に住んでいましたが、
　ちほうしょうという病気になってしまったので、かんびょうのためにお父さんとお母さんとタケシくんは
　おじいちゃんの広いお家に引っ越しました。
　おじいちゃんはボケていたので、自分のことをケイたんと呼んでいました。
　お父さんもお母さんもおじいちゃんがすっかり変わってしまったといって悲しみました。
　でも、タケシくんにとっては、いつもの面白いおじいちゃんでした。

　おじいちゃんはある日、タケシくんにヒミツを打ち明けました。
　じつは、おじいちゃんは精霊の国からやってきた地霊で、このお家を守っていたそうなのです。
　そして、この体はもうする土に帰るけど、本当の姿でタケシ君の前に現れるから心配しないでねと
　言いました。
　それから、タケシくんは地霊のケイたんといっぱい、いっぱい遊びました。
　それからしばらくして、おじいちゃんは亡くなってしまいました。
　タケシくんは悲しくて、さびしくて、お家の広い裏庭の酔う芙蓉の木のしたでないていました。

　すると、誰かが声をかけてきます。
　「ねえねえ、どうしたの？何で泣いてるの？」
　「だって、ボクが大好きだったケイちゃんが死んじゃったんだ」
　　
　「死んでなんかいないよ！ここにいるよ！」

　それは女の子の声でした。

　タケシ君は驚いて顔をあげます。
　そこにはオレンジ色の中国服を着た、お尻にウサギの尻尾をつけた五十センチくらいの大きさの
　女の子がいました。

　「君は誰？」

　「ケイたんだお！」

　元気よくケイたんは答えました。

　「ケイたん！もどってきてくれたんだね、ケイたん！」
　タケシくんはケイちゃんを抱きしめました。
　「タケシくん大好きだお！」
　ケイちゃんもタケシ君をぎゅっとだきしめました。