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晋編2 竹林七賢
阮籍7 劉昶さんと酒
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劉公榮與人飲酒,雜穢非類,人或譏之。答曰:「勝公榮者,不可不與飲;不如公榮者,亦不可不與飲;是公榮輩者,又不可不與飲。」故終日共飲而醉。(任誕4)
劉昶、という人がいる。
これがまた酒好きで、
どんな下人、薄汚いやつとも
平気で酒を飲み交わす。
おーおーやだやだ、
ある人が劉昶をバカにすると、
劉昶は答えるのだった。
「わしに勝るやつは、
わしと飲まにゃならん。
わしに勝てんやつも、
わしと飲まにゃならん。
なら、わしレベルのやつとは?
わしと、飲まにゃならんよなあ?」
王戎弱冠詣阮籍,時劉公榮在坐。阮謂王曰:「偶有二斗美酒,當與君共飲。彼公榮者,無預焉。」二人交觴酬酢,公榮遂不得一桮。而言語談戲,三人無異。或有問之者,阮荅曰:「勝公榮者,不得不與飲酒;不如公榮者,不可不與飲酒;唯公榮,可不與飲酒。」(簡傲2)
さて、この辺りの遊び心に敏感なのが、
我らが阮籍さんだ。
王戎が二十歳になり、おおっぴらに
酒が飲めるようになった。
なので阮籍の家に招待を受けた。
一緒に飲もうぜ! というのだ。
するとそこには、
かの劉昶さんも一緒にいた。
阮籍が言う。
「おう、来たな!
ここに二斗ばかし、うまい酒がある!
お前と、おれのぶんだ!
劉昶にはやらん!」
えっ。
本人の前で、そんな。
そこから始まった酒盛りでは、
本当に劉昶には盃がまわされなかった。
とはいえ三人とも、めっちゃ楽しそうに
清談を交わしている。
訳がわからないのは周りの人たちである。
ある人が、なんですかこのいじめ、
と聞いた。
すると阮籍は答えている。
「劉昶より上のやつとは、
ともに飲まずにおれん。
劉昶より下のやつとは、
やはり飲んでやろう。
ただ劉昶のやつとだけは、
飲んでやらん!」
○
なんだこれ(なんだこれ)
劉昶
沛国の人。ところで同時期の沛国劉氏にはとんでもない人がいてね……そう、あの劉伶さんである!(ズバァアーン)
劉伶との係累は不明だが、そうやって考えると謎の義理立て、みたいなラインで妄想はしたくなってくる。大体にして阮籍に、その内容がどうであれ「こいつとだけは……」と特別扱いされてるのはただ事ではない。
まあ、白眼視は「問題外の人間をシカトする振る舞い」で、青眼視の中でもリスペクト/ヘイトの別があったりするのかもしれない。
ってあれ? 白眼視の話世説新語にないの? マジか……
劉昶、という人がいる。
これがまた酒好きで、
どんな下人、薄汚いやつとも
平気で酒を飲み交わす。
おーおーやだやだ、
ある人が劉昶をバカにすると、
劉昶は答えるのだった。
「わしに勝るやつは、
わしと飲まにゃならん。
わしに勝てんやつも、
わしと飲まにゃならん。
なら、わしレベルのやつとは?
わしと、飲まにゃならんよなあ?」
王戎弱冠詣阮籍,時劉公榮在坐。阮謂王曰:「偶有二斗美酒,當與君共飲。彼公榮者,無預焉。」二人交觴酬酢,公榮遂不得一桮。而言語談戲,三人無異。或有問之者,阮荅曰:「勝公榮者,不得不與飲酒;不如公榮者,不可不與飲酒;唯公榮,可不與飲酒。」(簡傲2)
さて、この辺りの遊び心に敏感なのが、
我らが阮籍さんだ。
王戎が二十歳になり、おおっぴらに
酒が飲めるようになった。
なので阮籍の家に招待を受けた。
一緒に飲もうぜ! というのだ。
するとそこには、
かの劉昶さんも一緒にいた。
阮籍が言う。
「おう、来たな!
ここに二斗ばかし、うまい酒がある!
お前と、おれのぶんだ!
劉昶にはやらん!」
えっ。
本人の前で、そんな。
そこから始まった酒盛りでは、
本当に劉昶には盃がまわされなかった。
とはいえ三人とも、めっちゃ楽しそうに
清談を交わしている。
訳がわからないのは周りの人たちである。
ある人が、なんですかこのいじめ、
と聞いた。
すると阮籍は答えている。
「劉昶より上のやつとは、
ともに飲まずにおれん。
劉昶より下のやつとは、
やはり飲んでやろう。
ただ劉昶のやつとだけは、
飲んでやらん!」
○
なんだこれ(なんだこれ)
劉昶
沛国の人。ところで同時期の沛国劉氏にはとんでもない人がいてね……そう、あの劉伶さんである!(ズバァアーン)
劉伶との係累は不明だが、そうやって考えると謎の義理立て、みたいなラインで妄想はしたくなってくる。大体にして阮籍に、その内容がどうであれ「こいつとだけは……」と特別扱いされてるのはただ事ではない。
まあ、白眼視は「問題外の人間をシカトする振る舞い」で、青眼視の中でもリスペクト/ヘイトの別があったりするのかもしれない。
ってあれ? 白眼視の話世説新語にないの? マジか……
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