93 / 109
元王太子の転落②
しおりを挟む
「お前……どうしてここに!?」
「貴方の送迎の為です。不本意ながらも貴方の従者を務めておりましたので、付き添いくらいはしてやろうかと思いましてね」
従者の不遜な態度にカッとなるエドワードだが、それと同時に馬車の扉が乱暴に閉められた。
「こら、待て! ここを開けろ!」
どうやらこの馬車は外側から鍵を掛けられる仕様らしい。
完全に犯罪者の護送用のそれだ。脱走防止用として外側にごつい南京錠が設置されている。
「何ですかそんなに慌てて……厠にでも行きたいのですか?」
「違う! 何だその的外れな台詞は!?」
「だってそんなに慌てて『開けろ』と言うのですもの、急にもよおしたのかと思うでしょう? まったく……出発前に厠は済ませておくのが常識でしょうに……」
完全に子ども扱いをして馬鹿にする元従者にエドワードの苛立ちは最高潮に達した。ただでさえ今まで目下だった者達から立て続けに不敬な態度をとられたのだ。それに加えてたかが従者だった男から見下され、沸点の低い彼が怒らないはずもない。
「貴様……ふざけるのもいい加減に「あ、動き出しましたね。大人しく座っていないと舌を噛みますよ?」」
激高して立ち上がるエドワードに元従者は呑気にそう告げた。
その言葉通り、馬車の中が急激に揺れだし、立ったままのエドワードは椅子の上に尻もちをついた。
「痛っ……!」
「ああ、ほら……大人しく座っていないから……」
「う、うるさい! うるさい! どいつもこいつも不敬だ! 全員処刑してやる!」
「はは、それが可能であればどうぞ。まあ、何の権力も無くなった貴方には無理ですけどね~」
「ふざけるな! 私は国王陛下唯一の子だぞ!?」
「またそれですか……。貴方にはそれ以外無いのでしょうかね? それだってもう、王権が変わるのですから無意味だと何故理解しないのです?」
「はあ? ああ……サラマンドラ家に王権を譲るという与太話か。そんな戯言を信じるはずがないだろう? 馬鹿馬鹿しい……」
なんとエドワードは王権の譲渡を嘘だと信じ込んでいた。
宰相を始めとした城の人間が懇切丁寧に説明してもこれである。これにはさすがの元従者も呆気にとられてしまった。
「嘘でしょう……? 信じていないのですか?」
「ふん、当然だ。だいたいどうして私という後継者がいるのにサラマンドラ家の公子が王太子となる? そこからして有り得ないだろう?」
「その後継者だった貴方がどうしようもないからですよ……。二度に渡る婚約破棄で二公爵家を敵に回すような王太子に忠誠を誓う者がどこにいます? 好き勝手した結果がこれだと何故理解しないのですか? あ、もしかして現実逃避ですか?」
「現実逃避だと!? ふざけたことをぬかすな! お前のように下賤な者はこの私の価値を理解していないようだから特別に教えてやろう。この私は至高の存在であり、私がすることは全て許される! 私の願いは全て叶えられて当然なのだ!」
ふん、と鼻息荒く演説するエドワードに元従者はポカンと口を開いた。
「……え? それは誰がそう言ったのですか?」
「は? 誰だと? 何を言っている?」
「いや、そんな間違った事を誰が貴方に吹き込んだのかなって……」
「なに? 間違った事だと……?」
「いや、だってそうじゃないですか。間違っていたからこそ、貴方はこうして全部失ったのですよ?」
「は…………なん、だと……?」
元従者の言葉にエドワードは一瞬固まってしまった。
間違っていたから全てを失った? そんなはずはない……。
「以前からそういったフシがありましたけど……本気でそう信じていたなんて吃驚ですよ。何を根拠にそんな勘違いをしたのか不思議ですね……」
「なっ……勘違いだと!? 貴様、馬鹿にするのも大概に……」
「私が知る限り、そういう存在はアンゼリカお嬢様だけです。貴方と違うのはお嬢様はご自分の願いを全て自力で叶えるところですかね。決して貴方のように他力本願で、周囲が勝手に自分の願いを叶えてくれるだろうという勘違いはなさらない」
「貴様……何を言って……」
「分かりませんか? 貴方は他人が自分の意のままに動いてくれるだろうと信じこみ、何もしようとしない。対してお嬢様は他人を自分の意のままに動かします。決して他人がこう動いてくれるだろうという不確かな思い込みは持ち合わせておりません。……まあ、要するに貴方とお嬢様では器が違う。至高の存在とは、大きな器を持つ人間のことを指すのだと思います。貴方のような矮小な器の持ち主では成りえません」
「なんだと!? 私があの女に劣るとでも言うのか!」
「だからそう言っているじゃありませんか? 貴方は先ほどから私がアンゼリカ様を『お嬢様』と呼ぶことに違和感を覚えない。その時点でもうその程度だとしか思えません」
元従者の言っている意味が分からず「は?」と首を傾げた。
「つまり、私はアンゼリカお嬢様の手の者だということですよ。分かり易く言うと“間者”ですね。貴方の行動をお嬢様に逐一報告する為に従者となったわけです」
「な……なんだと!? じゃあ、まさか……ルルナとのことも……」
「ええ、貴方がスミス夫人の手引きであの男爵令嬢と密会していたこともお嬢様に筒抜けでしたよ?」
まさか元従者がアンゼリカの手の者だったとは……。しかもルルナとの行為まで筒抜けだったなんて、とエドワードは羞恥と混乱で顔を真っ赤に染め、ハクハクと口を開閉させた。
「まあ、そんな勘違いが酷い貴方にもう一度私の方から今後について説明します。貴方は諸々の罪に対する罰として、国境の砦にて滅私奉公が命じられています」
「罪だと……? 私が何をしたって言うんだ……!」
「権限を越えた婚約破棄の罪、王命を無視してあの男爵令嬢と逢瀬を重ねた罪、そして婚約者の家の金で勝手にあの男爵令嬢に貢いだ罪。数え上げただけでもきりがないですねえ……」
「それを罪だと言うのか!? 私達は真実の愛を貫こうとしただけで「あ、いいです、そういうの。興味ないんで」」
エドワードの主張は途中で妨げられた。この私の発言を途中で遮るなど不敬だ、と叫んでも元従者はどこ吹く風だ。
「本来ならば毒杯ものですのに、こうし生かしてもらえるだけでも有難いことですよ? と言ってもどうせ貴方はそんな殊勝な考えなど持ち合わせていないでしょうけど……」
元従者の言う通りだった。エドワードの頭にあるのは『どうして自分がこんな目に遭わなければならないんだ!』という被害者意識だけ。自分がしたことへの反省などない。
「砦での仕事は簡単です。ただ人の話を聞く、それだけ。それだけで三食困らないし、部屋だって宛がわれます。詳しい仕事内容は現地の担当者が説明しますので、その人に従ってください」
「断る! どうして私がそんな真似をしなくてはならない? 私は王太子だぞ!」
「だから王太子位は剥奪されたと説明されたでしょうが……。それに、この処遇が嫌なら男娼になる道しか残されていませんよ?」
「は………………?」
いきなり出てきた聞きなれない単語にエドワードの脳は一瞬停止した。
男娼? それって……まさか……
「あ、ちなみに王都にいる男娼のように裕福なマダム相手に春をひさぐと思わないでくださいね? 多分、男色の相手をすることになると思います」
そんなことは聞いていない、と口をハクハクさせるエドワードに何を勘違いしたのか元従者は説明を続けた。
「いや、だってやるとしたら砦に一番近い歓楽街でとなりますし、その近辺には男を買えるような裕福な女性はおりません。娼婦にせよ男娼にせよ、買えるのは男性のみでしょう。そうなると必然的に男相手に春を売ってもらうことになりますね」
平然と言いきる元従者にエドワードは絶句した。
男娼? 売春? 男相手に?
「エドワード様は見目だけはよろしいから、きっと売れっ子になるでしょうね……。あ、なんでしたらこのまま行先を変えて歓楽街に行きます?」
ナンバーワンを目指しましょう、とキラキラした瞳で語る元従者に得体の知れない恐ろしさを感じた。
(この感じ……前にもどこかで……あっ……!)
エドワードの脳裏によぎったのは元婚約者のアンゼリカ。
あの、話の方向性をとんでもない方へと持って行く強引さと、破天荒な思考、有無を言わさぬ態度。あそこまでの強烈さはないとはいえ、この元従者の性格はアンゼリカにそっくりである。
自分が王太子だった頃にはそんなことは少しも思わなかった。
もしかしてこれが元従者の本性か? それとも主人の性格が似てしまったのか……。いずれにせよここではっきり拒絶しないと、あの恐ろしい女の面影を見せる元従者によって男娼にされかねない。
「こ、断る! 当初の予定通り砦へと向かえ!」
「あ、そうですか……。分かりました」
若干不服そうな元従者にエドワードは身震いした。
その後は口数も少なく、静かな馬車の旅であった。
「貴方の送迎の為です。不本意ながらも貴方の従者を務めておりましたので、付き添いくらいはしてやろうかと思いましてね」
従者の不遜な態度にカッとなるエドワードだが、それと同時に馬車の扉が乱暴に閉められた。
「こら、待て! ここを開けろ!」
どうやらこの馬車は外側から鍵を掛けられる仕様らしい。
完全に犯罪者の護送用のそれだ。脱走防止用として外側にごつい南京錠が設置されている。
「何ですかそんなに慌てて……厠にでも行きたいのですか?」
「違う! 何だその的外れな台詞は!?」
「だってそんなに慌てて『開けろ』と言うのですもの、急にもよおしたのかと思うでしょう? まったく……出発前に厠は済ませておくのが常識でしょうに……」
完全に子ども扱いをして馬鹿にする元従者にエドワードの苛立ちは最高潮に達した。ただでさえ今まで目下だった者達から立て続けに不敬な態度をとられたのだ。それに加えてたかが従者だった男から見下され、沸点の低い彼が怒らないはずもない。
「貴様……ふざけるのもいい加減に「あ、動き出しましたね。大人しく座っていないと舌を噛みますよ?」」
激高して立ち上がるエドワードに元従者は呑気にそう告げた。
その言葉通り、馬車の中が急激に揺れだし、立ったままのエドワードは椅子の上に尻もちをついた。
「痛っ……!」
「ああ、ほら……大人しく座っていないから……」
「う、うるさい! うるさい! どいつもこいつも不敬だ! 全員処刑してやる!」
「はは、それが可能であればどうぞ。まあ、何の権力も無くなった貴方には無理ですけどね~」
「ふざけるな! 私は国王陛下唯一の子だぞ!?」
「またそれですか……。貴方にはそれ以外無いのでしょうかね? それだってもう、王権が変わるのですから無意味だと何故理解しないのです?」
「はあ? ああ……サラマンドラ家に王権を譲るという与太話か。そんな戯言を信じるはずがないだろう? 馬鹿馬鹿しい……」
なんとエドワードは王権の譲渡を嘘だと信じ込んでいた。
宰相を始めとした城の人間が懇切丁寧に説明してもこれである。これにはさすがの元従者も呆気にとられてしまった。
「嘘でしょう……? 信じていないのですか?」
「ふん、当然だ。だいたいどうして私という後継者がいるのにサラマンドラ家の公子が王太子となる? そこからして有り得ないだろう?」
「その後継者だった貴方がどうしようもないからですよ……。二度に渡る婚約破棄で二公爵家を敵に回すような王太子に忠誠を誓う者がどこにいます? 好き勝手した結果がこれだと何故理解しないのですか? あ、もしかして現実逃避ですか?」
「現実逃避だと!? ふざけたことをぬかすな! お前のように下賤な者はこの私の価値を理解していないようだから特別に教えてやろう。この私は至高の存在であり、私がすることは全て許される! 私の願いは全て叶えられて当然なのだ!」
ふん、と鼻息荒く演説するエドワードに元従者はポカンと口を開いた。
「……え? それは誰がそう言ったのですか?」
「は? 誰だと? 何を言っている?」
「いや、そんな間違った事を誰が貴方に吹き込んだのかなって……」
「なに? 間違った事だと……?」
「いや、だってそうじゃないですか。間違っていたからこそ、貴方はこうして全部失ったのですよ?」
「は…………なん、だと……?」
元従者の言葉にエドワードは一瞬固まってしまった。
間違っていたから全てを失った? そんなはずはない……。
「以前からそういったフシがありましたけど……本気でそう信じていたなんて吃驚ですよ。何を根拠にそんな勘違いをしたのか不思議ですね……」
「なっ……勘違いだと!? 貴様、馬鹿にするのも大概に……」
「私が知る限り、そういう存在はアンゼリカお嬢様だけです。貴方と違うのはお嬢様はご自分の願いを全て自力で叶えるところですかね。決して貴方のように他力本願で、周囲が勝手に自分の願いを叶えてくれるだろうという勘違いはなさらない」
「貴様……何を言って……」
「分かりませんか? 貴方は他人が自分の意のままに動いてくれるだろうと信じこみ、何もしようとしない。対してお嬢様は他人を自分の意のままに動かします。決して他人がこう動いてくれるだろうという不確かな思い込みは持ち合わせておりません。……まあ、要するに貴方とお嬢様では器が違う。至高の存在とは、大きな器を持つ人間のことを指すのだと思います。貴方のような矮小な器の持ち主では成りえません」
「なんだと!? 私があの女に劣るとでも言うのか!」
「だからそう言っているじゃありませんか? 貴方は先ほどから私がアンゼリカ様を『お嬢様』と呼ぶことに違和感を覚えない。その時点でもうその程度だとしか思えません」
元従者の言っている意味が分からず「は?」と首を傾げた。
「つまり、私はアンゼリカお嬢様の手の者だということですよ。分かり易く言うと“間者”ですね。貴方の行動をお嬢様に逐一報告する為に従者となったわけです」
「な……なんだと!? じゃあ、まさか……ルルナとのことも……」
「ええ、貴方がスミス夫人の手引きであの男爵令嬢と密会していたこともお嬢様に筒抜けでしたよ?」
まさか元従者がアンゼリカの手の者だったとは……。しかもルルナとの行為まで筒抜けだったなんて、とエドワードは羞恥と混乱で顔を真っ赤に染め、ハクハクと口を開閉させた。
「まあ、そんな勘違いが酷い貴方にもう一度私の方から今後について説明します。貴方は諸々の罪に対する罰として、国境の砦にて滅私奉公が命じられています」
「罪だと……? 私が何をしたって言うんだ……!」
「権限を越えた婚約破棄の罪、王命を無視してあの男爵令嬢と逢瀬を重ねた罪、そして婚約者の家の金で勝手にあの男爵令嬢に貢いだ罪。数え上げただけでもきりがないですねえ……」
「それを罪だと言うのか!? 私達は真実の愛を貫こうとしただけで「あ、いいです、そういうの。興味ないんで」」
エドワードの主張は途中で妨げられた。この私の発言を途中で遮るなど不敬だ、と叫んでも元従者はどこ吹く風だ。
「本来ならば毒杯ものですのに、こうし生かしてもらえるだけでも有難いことですよ? と言ってもどうせ貴方はそんな殊勝な考えなど持ち合わせていないでしょうけど……」
元従者の言う通りだった。エドワードの頭にあるのは『どうして自分がこんな目に遭わなければならないんだ!』という被害者意識だけ。自分がしたことへの反省などない。
「砦での仕事は簡単です。ただ人の話を聞く、それだけ。それだけで三食困らないし、部屋だって宛がわれます。詳しい仕事内容は現地の担当者が説明しますので、その人に従ってください」
「断る! どうして私がそんな真似をしなくてはならない? 私は王太子だぞ!」
「だから王太子位は剥奪されたと説明されたでしょうが……。それに、この処遇が嫌なら男娼になる道しか残されていませんよ?」
「は………………?」
いきなり出てきた聞きなれない単語にエドワードの脳は一瞬停止した。
男娼? それって……まさか……
「あ、ちなみに王都にいる男娼のように裕福なマダム相手に春をひさぐと思わないでくださいね? 多分、男色の相手をすることになると思います」
そんなことは聞いていない、と口をハクハクさせるエドワードに何を勘違いしたのか元従者は説明を続けた。
「いや、だってやるとしたら砦に一番近い歓楽街でとなりますし、その近辺には男を買えるような裕福な女性はおりません。娼婦にせよ男娼にせよ、買えるのは男性のみでしょう。そうなると必然的に男相手に春を売ってもらうことになりますね」
平然と言いきる元従者にエドワードは絶句した。
男娼? 売春? 男相手に?
「エドワード様は見目だけはよろしいから、きっと売れっ子になるでしょうね……。あ、なんでしたらこのまま行先を変えて歓楽街に行きます?」
ナンバーワンを目指しましょう、とキラキラした瞳で語る元従者に得体の知れない恐ろしさを感じた。
(この感じ……前にもどこかで……あっ……!)
エドワードの脳裏によぎったのは元婚約者のアンゼリカ。
あの、話の方向性をとんでもない方へと持って行く強引さと、破天荒な思考、有無を言わさぬ態度。あそこまでの強烈さはないとはいえ、この元従者の性格はアンゼリカにそっくりである。
自分が王太子だった頃にはそんなことは少しも思わなかった。
もしかしてこれが元従者の本性か? それとも主人の性格が似てしまったのか……。いずれにせよここではっきり拒絶しないと、あの恐ろしい女の面影を見せる元従者によって男娼にされかねない。
「こ、断る! 当初の予定通り砦へと向かえ!」
「あ、そうですか……。分かりました」
若干不服そうな元従者にエドワードは身震いした。
その後は口数も少なく、静かな馬車の旅であった。
4,544
お気に入りに追加
7,524
あなたにおすすめの小説
【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。
完菜
恋愛
王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。
そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。
ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。
その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。
しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる