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ハウンド伯爵家では②
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『二公爵家を敵に回すなど、この家はもう終わりだ……!』
家を傾けかねない愚行を犯した娘を伯爵は殺意を込めた目で睨みつける。
実の父親からそんな目を向けられた娘は恐怖で顔面蒼白となった。
『あ……だって、だって! レイモンド様が……あんな王太子に捨てられた惨めな女を邸で一生面倒を見るなんて言うから……!』
『それをお前が嫌がったせいで婚約は破談となったのだぞ!? 別にお前が面倒を見るわけでもないのだからそれ位快諾してやればよかったではないか! そうすれば婚約はそのまま続行となったのだ! 全てお前の器が狭量なことが悪いのだろう!?』
これが格下の家の嫁ぐのであれば文句を言っても問題はない。だが格上の、しかも筆頭公爵家に嫁ぐのだ。婚前に文句など言えば破談になることくらい何故理解しないのかと、伯爵は娘の頭の残念さに失望した。
『そんなの嫌よ! なんで新婚家庭に妹が居座るのよ! おかしいじゃない、そんなの!』
『おかしいのはお前の頭だ! お前は格上の家に嫁ぐという覚悟が足りん! 筆頭公爵家でこんな騒ぎを起こしてどうするつもりだ!? しかもグリフォン公爵令嬢まで巻き込んで……』
『グリフォン公爵令嬢? 誰よ、それ。知らないわ』
『知らないだと!? お前が今着ているドレスも、お前を送ってきた馬車もグリフォン公爵家のものだぞ! 知らないわけがないだろう! 暴れるお前を取り押さえたのもグリフォン公爵家の者だというではないか!?』
『あ……! まさか、あの女のこと!? お父様! そのグリフォン公爵令嬢が私のドレスを切り裂いたのよ! 今すぐ訴えて!』
『ドレスを切り裂いた……? お前が着ていたドレスを? ちょっと待て、お前は怪我をしているのか?』
『は? 怪我? していないけど、何でそんな事を聞いてくるのよ?』
『お前が言う事が真実なら、令嬢は着ている人間に怪我をさせないようにドレスを切り裂いたことになる。そんなの不可能に決まっているだろう?』
『私が嘘をついているっていうの!? 本当よ! そのグリフォン公爵令嬢が私の前に立ってナイフを振り下ろしたと思ったら、ドレスだけが破れて地面に落ちたの! おかげで私は恥ずかしい姿をレイモンド様に晒す羽目になったのよ!』
『は? お前の話が本当なら、グリフォン公爵令嬢はナイフを一振りしただけでお前に怪我を負わせることなくドレスを切り裂いたことになるぞ? 一介の令嬢にそんな達人のような真似ができるか! 嘘も大概にしろ!』
どこの令嬢がそんな熟練の戦士のような技を使えるというのか。
伯爵はこの発言で娘の頭は正常ではないと判断した。
『……もういい。お前を野放しにしておくと碌なことにならん。今後の処遇はサラマンドラ公爵家に決めてもらうことになるが……楽に生きられると思うな』
『は? どうしてサラマンドラ公爵家が私の処遇を決めるの?』
『……それすら分からないほど頭が悪かったのか。これほど出来の悪い娘を格上の家に嫁がせようとすべきではなかったな……』
言っている意味が分からないと首を傾げる娘に伯爵はますます失望を感じた。
これ以上話す気はないと、使用人に娘を部屋へ閉じ込めるよう命じる。
『はあ……頭が痛い。サラマンドラ家への謝罪も気が重いが……何より、またあの家と関わらなければならないとは……』
ここで話が冒頭へと戻る。伯爵は以前グリフォン公爵家……というより、アンゼリカに完膚なきまで打ちのめされた経験がある。それでもう二度と関わりたくないと心から思ったというのに、こんな形でまた関わり合いになったことに絶望した。
家を傾けかねない愚行を犯した娘を伯爵は殺意を込めた目で睨みつける。
実の父親からそんな目を向けられた娘は恐怖で顔面蒼白となった。
『あ……だって、だって! レイモンド様が……あんな王太子に捨てられた惨めな女を邸で一生面倒を見るなんて言うから……!』
『それをお前が嫌がったせいで婚約は破談となったのだぞ!? 別にお前が面倒を見るわけでもないのだからそれ位快諾してやればよかったではないか! そうすれば婚約はそのまま続行となったのだ! 全てお前の器が狭量なことが悪いのだろう!?』
これが格下の家の嫁ぐのであれば文句を言っても問題はない。だが格上の、しかも筆頭公爵家に嫁ぐのだ。婚前に文句など言えば破談になることくらい何故理解しないのかと、伯爵は娘の頭の残念さに失望した。
『そんなの嫌よ! なんで新婚家庭に妹が居座るのよ! おかしいじゃない、そんなの!』
『おかしいのはお前の頭だ! お前は格上の家に嫁ぐという覚悟が足りん! 筆頭公爵家でこんな騒ぎを起こしてどうするつもりだ!? しかもグリフォン公爵令嬢まで巻き込んで……』
『グリフォン公爵令嬢? 誰よ、それ。知らないわ』
『知らないだと!? お前が今着ているドレスも、お前を送ってきた馬車もグリフォン公爵家のものだぞ! 知らないわけがないだろう! 暴れるお前を取り押さえたのもグリフォン公爵家の者だというではないか!?』
『あ……! まさか、あの女のこと!? お父様! そのグリフォン公爵令嬢が私のドレスを切り裂いたのよ! 今すぐ訴えて!』
『ドレスを切り裂いた……? お前が着ていたドレスを? ちょっと待て、お前は怪我をしているのか?』
『は? 怪我? していないけど、何でそんな事を聞いてくるのよ?』
『お前が言う事が真実なら、令嬢は着ている人間に怪我をさせないようにドレスを切り裂いたことになる。そんなの不可能に決まっているだろう?』
『私が嘘をついているっていうの!? 本当よ! そのグリフォン公爵令嬢が私の前に立ってナイフを振り下ろしたと思ったら、ドレスだけが破れて地面に落ちたの! おかげで私は恥ずかしい姿をレイモンド様に晒す羽目になったのよ!』
『は? お前の話が本当なら、グリフォン公爵令嬢はナイフを一振りしただけでお前に怪我を負わせることなくドレスを切り裂いたことになるぞ? 一介の令嬢にそんな達人のような真似ができるか! 嘘も大概にしろ!』
どこの令嬢がそんな熟練の戦士のような技を使えるというのか。
伯爵はこの発言で娘の頭は正常ではないと判断した。
『……もういい。お前を野放しにしておくと碌なことにならん。今後の処遇はサラマンドラ公爵家に決めてもらうことになるが……楽に生きられると思うな』
『は? どうしてサラマンドラ公爵家が私の処遇を決めるの?』
『……それすら分からないほど頭が悪かったのか。これほど出来の悪い娘を格上の家に嫁がせようとすべきではなかったな……』
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これ以上話す気はないと、使用人に娘を部屋へ閉じ込めるよう命じる。
『はあ……頭が痛い。サラマンドラ家への謝罪も気が重いが……何より、またあの家と関わらなければならないとは……』
ここで話が冒頭へと戻る。伯爵は以前グリフォン公爵家……というより、アンゼリカに完膚なきまで打ちのめされた経験がある。それでもう二度と関わりたくないと心から思ったというのに、こんな形でまた関わり合いになったことに絶望した。
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