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彼からの贈り物

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 新しい婚約者候補のルイともう一度会って話してみようと思い、ヨーク公爵家へ手紙を送る。すると比較的早く返事が届き、今度はルイのみが王宮を訪れることになった。

「ローゼ、変なところはないかしら?」

「大丈夫ですよ姫様、とてもお美しいです」

 ルイとの約束の日、私は朝からソワソワと落ち着かず、普段は気にならないことまで気になってしまう。
 相手に自分の装いをどう思われるかなど、セレスタンの時には気にも留めなかったことだ。

 早く会いたいと思うのに、会ったらどんな顔をすればいいのと戸惑う。

 早く話がしたいのに、何を話せば彼は喜んでくれるだろうかと迷う。

 胸が苦しいのに、何故か心地いい。
 甘い痺れが全身に広がり、不思議と幸福な気分に満たされる。

「姫様、頬が赤いですよ?」

 ローゼに揶揄う様に指摘され、私は思わず両手で頬を押さえる。
 手に触れた部分は確かに熱かった。

「ローゼ、何か冷たい飲み物をちょうだい」

 彼が来る前に顔の火照りを冷ましたい。
 こんな顔を見られるのは恥ずかしいから。



「フランチェスカ王女殿下、またお会いできて嬉しいです」

 眩い笑みを浮かべるルイに、先ほど冷ましたばかりの頬が再び熱を帯びる。
 まだ会って二度目なのに、彼にときめく気持ちが抑えられない。

「ようこそおいでくださいました、ルイ様。わたくしもまたお会いできて嬉しいです」

 幾度となく社交辞令で使ってきた「お会いできて嬉しい」という台詞。
 それを本心から言う日が来ようとは思ってもみなかった。

「今日は殿下への贈り物をお持ちしました。女性に贈り物を選ぶのは初めてですので、気に入って頂けると嬉しいのですが……」

 はにかみながら言うルイは可愛い。
 物よりもその表情だけでお腹いっぱいになりそうだ。
 勿論物も有難くいただくけど。

「まあ、ルイ様が自ら選んでくださったの? 嬉しいわ、開けてみてもいいかしら?」

 ルイが手渡してくれたのは白い包装紙に可愛らしい赤色のリボンが飾られた箱。
 大きさから見てアクセサリーだろうか。

「勿論です。殿下」

 彼の眩い微笑みにまた頬が熱くなる。
 それを隠すように俯き、包装紙を剥がして箱を開封した。

「まあ……綺麗!」

 箱の中から出てきたのは美しいオルゴール。
 白を基調とした上品な色使いに、宝石をあしらったそれは高級感があり煌びやかだ。

「素敵だわ……。蓋の部分にはめ込まれているのはエメラルドかしら?」

「ええ、そうです。ちなみにその下の部分はサファイアが使われております」

「まあ……綺麗、ルイ様の瞳と同じ色ね」

 わざわざ私の瞳の色と彼の色が使われている物を選んでくれたのだろうか。
 そう考えると嬉しくてまた体の熱が上がってしまいそうだ。

「殿下がこのオルゴールを目にする度、私のことを思い出してくれたら嬉しいと思いまして……」

「ルイ様……嬉しいです」

 彼も私と同様に頬が赤い。

 サファイアのように美しい青の瞳は潤み、真っすぐに私を見つめてくる。

 私達は時が止まったかのようにそのまま見つめあい、しばらく互いの瞳から目が離せなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 年内最後の更新です。

 当作品を読んでいただきありがとうございました。

 来年もどうぞよろしくお願い致します。

 よいお年をお迎えください。


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