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謝罪

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「それで、ミュラー公爵家にはどのように謝罪するおつもりですか陛下?」

 ギルベルトと側近一号が部屋を去った後、宰相が国王に対してそう尋ねた。
 
 宰相は王太子の再三にわたる婚約者への不誠実な対応にずっと苦言を呈してきた。
 にもかかわらず、王太子は一向に態度を改善しようとせず挙句の果てに浮気して婚約破棄する始末。
 どこまで恥を晒せば気が済むのかと呆れてしまう。
 
 救いようのない馬鹿が筆頭公爵家であるミュラー公爵家に喧嘩を売ったのだ。
 最悪は公爵家が謀反を起こす危険性すら有り得る。

「……そうだな、余が自ら謝罪に向かおう。そうでもせねば公爵の溜飲が下がらないだろう。下げてくれるかどうかは分からぬが……」

「恐れながら申し上げますが、 陛下が向かうよりも王妃様に行っていただいた方がよいかと思われます。陛下では公爵に散々嫌味を言われた挙句、結局謝罪は受け取ってもらえない可能性がありますので」

「妃にか? い、いや……しかしそれは……」

 宰相の提案に国王は目を泳がせた。
 実はギルベルトとクローディアの婚約に対して王妃は最初から反対していたからだ。
 
 王妃は「どう考えてもこの婚約が上手くいくはずがない。ギルベルト王子は思い込みが激しいうえに高位貴族の令嬢を嫌う傾向がある。これでギルベルト王子が浮気して婚約破棄などしたら王家は公爵家に見放されてしまうかもしれない」と常々言っていた。

 全て当たっているからこそ、王妃からもそれ見たことかと苦言を呈されてしまいそうだ。

「王妃様は聡明であり、何より相手の真意を読み解くお力がございます。ミュラー公爵もご令嬢も王妃様でしたら警戒しないでしょうし、きっと納得いく形で話を収めてくださるでしょう」

「う、うむ……そうだな。だがな、おそらくは妃はこちらに不利な条件も飲み込んでしまいかねないだろう……?」

 公爵家が想定外の慰謝料を請求してきたり、王家に不利な条件を請求してきてもおそらく王妃なら「それくらい」と言って承諾しかねない。いくら最終決定が国王にあるとはいえ、大臣たちも王妃に追随してしまいかねない。

「それくらいはいいじゃありませんか。いいですか陛下、いくら王家とはいえ筆頭公爵家から絶縁でもされたら存続すら難しいのですよ? 条件をいくつか飲むだけで許してもらえるなら安いものです。第一、ミュラー公爵はギルベルト王子との婚約は最初から反対だったのです。それを側妃様可愛さで無理矢理婚約を結んだのは陛下ですかからね?」

 宰相に痛い所を突かれてしまい、国王は二の句が継げないでいた。
 
 側妃は国王が見初めて大分無理を通して娶った相手。
 当然その間に生まれたギルベルトも可愛くて仕方なかった。   
 王妃との間に出来た第二王子も大切であるが、愛する人との子はまた格別なのかどうしても第一王子を王太子にしたかった。その結果がこれである。

「とにかく、今はミュラー公爵家の怒りを鎮めることが先決です」

 有無を言わせない宰相の言葉に国王は情けなくただ頷いた。

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