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元王太子の後悔②
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最近のビクトリアは益々綺麗になった。
髪も肌も艶が増し、見ただけで上等だと分かるドレスやアクセサリーで煌びやかに着飾る姿はまさに高嶺の花といえよう。
こんな田舎ではビクトリアの華やかな美しさはひどく目立つ。
領地の男達は彼女の美貌に目を惹かれ、人妻であるのも構わず誘いをかけてくる。
そして……妻もそんな男共の誘いに抗わない……。
「ビクトリア! 何処へ行くんだ!?」
華やかに着飾った麗しい妻の腕を掴み問い詰めた。
いつからか彼女が着飾るのは夫である私のためではなくなってしまった。
煌びやかなドレスも、美しく結い上げた髪も、華やかに染められた爪紅も、全てこれから会う男のためのものだ。
「え? マイケルと観劇に行くのよ?」
マイケルとは領地内の街に住む商会の息子の名。
ビクトリアの美しさに魅了された彼は頻繁に貢物を贈り逢瀬に誘う。
今、妻が身に着けている豪奢な装飾品は全てそのマイケルからの贈り物だ。
「ビクトリア! 君は私の妻だろう? どうして他の男と浮気を繰り返すんだ!?」
隠すこともなく夫以外の男からの贈り物を身に着け、浮気を繰り返す妻に吐き気がする。
だが、妻は私の言葉にキョトンとした顔を見せた。
「浮気って何? 貴族は愛人を持つのが普通でしょう? 」
「はっ……? 何を言っているんだ君は!」
「だって、わたくしの父も母も愛人を持っていたわよ? 既婚者が愛人を持つことは当然じゃないの?」
全く悪びれない妻の態度に一瞬自分がおかしなことを言っているのかと錯覚する。
「えっ? い、いや……義父達と私達では話が別だろう? 彼等は政略だが私達は愛し合って結ばれたのだし……。それに私の両親は愛人なんていなかったぞ!」
「ええ~……そんなこと言われてもねぇ? 愛し合って結婚したなら愛人を持たない、だなんて初耳だし……。だいたいレイがお金をあんまり使うなって言うからこうなったんじゃないの?」
「はあ!? それとこれが何の関係があるんだ?」
「だってレイが家のお金を使っちゃダメと言うから他の殿方に出してもらってるのよ? そうしないと以前のようにみすぼらしい姿に戻っちゃうじゃない! それは嫌よ! だいたい……レイは結婚してからわたくしに贈り物一つしてくれないじゃない!」
「えっ……!? あ、いや……それは……」
マズい……。確かに夫婦になってからはビクトリアに何かを贈った覚えがない……。
もう夫婦になったから機嫌をとる必要もないと思ってやってないんだ……。
「はあ……夫の義務すら果たしていないくせに、わたくしに妻としてのなんたるかを説かないでちょうだい!」
私に向かってそう怒鳴りつけ、ビクトリアはさっさと邸を出てしまった。
何でこうなるんだ……?
私はただビクトリアに私以外の男と親しくしてほしくないだけなのに……!
贈り物だってそうだ。もう夫婦になったのだから必要ないじゃないか!
だってもう私のものになったのだから、これ以上気を引く必要はなんてないはずだ!
幼い頃から共にいたはずなのに……最近のビクトリアの考えはまるで理解できない。
こんな調子でこれから先やっていけるのだろうか……?
今後のことを考えると不安でしかない……。
髪も肌も艶が増し、見ただけで上等だと分かるドレスやアクセサリーで煌びやかに着飾る姿はまさに高嶺の花といえよう。
こんな田舎ではビクトリアの華やかな美しさはひどく目立つ。
領地の男達は彼女の美貌に目を惹かれ、人妻であるのも構わず誘いをかけてくる。
そして……妻もそんな男共の誘いに抗わない……。
「ビクトリア! 何処へ行くんだ!?」
華やかに着飾った麗しい妻の腕を掴み問い詰めた。
いつからか彼女が着飾るのは夫である私のためではなくなってしまった。
煌びやかなドレスも、美しく結い上げた髪も、華やかに染められた爪紅も、全てこれから会う男のためのものだ。
「え? マイケルと観劇に行くのよ?」
マイケルとは領地内の街に住む商会の息子の名。
ビクトリアの美しさに魅了された彼は頻繁に貢物を贈り逢瀬に誘う。
今、妻が身に着けている豪奢な装飾品は全てそのマイケルからの贈り物だ。
「ビクトリア! 君は私の妻だろう? どうして他の男と浮気を繰り返すんだ!?」
隠すこともなく夫以外の男からの贈り物を身に着け、浮気を繰り返す妻に吐き気がする。
だが、妻は私の言葉にキョトンとした顔を見せた。
「浮気って何? 貴族は愛人を持つのが普通でしょう? 」
「はっ……? 何を言っているんだ君は!」
「だって、わたくしの父も母も愛人を持っていたわよ? 既婚者が愛人を持つことは当然じゃないの?」
全く悪びれない妻の態度に一瞬自分がおかしなことを言っているのかと錯覚する。
「えっ? い、いや……義父達と私達では話が別だろう? 彼等は政略だが私達は愛し合って結ばれたのだし……。それに私の両親は愛人なんていなかったぞ!」
「ええ~……そんなこと言われてもねぇ? 愛し合って結婚したなら愛人を持たない、だなんて初耳だし……。だいたいレイがお金をあんまり使うなって言うからこうなったんじゃないの?」
「はあ!? それとこれが何の関係があるんだ?」
「だってレイが家のお金を使っちゃダメと言うから他の殿方に出してもらってるのよ? そうしないと以前のようにみすぼらしい姿に戻っちゃうじゃない! それは嫌よ! だいたい……レイは結婚してからわたくしに贈り物一つしてくれないじゃない!」
「えっ……!? あ、いや……それは……」
マズい……。確かに夫婦になってからはビクトリアに何かを贈った覚えがない……。
もう夫婦になったから機嫌をとる必要もないと思ってやってないんだ……。
「はあ……夫の義務すら果たしていないくせに、わたくしに妻としてのなんたるかを説かないでちょうだい!」
私に向かってそう怒鳴りつけ、ビクトリアはさっさと邸を出てしまった。
何でこうなるんだ……?
私はただビクトリアに私以外の男と親しくしてほしくないだけなのに……!
贈り物だってそうだ。もう夫婦になったのだから必要ないじゃないか!
だってもう私のものになったのだから、これ以上気を引く必要はなんてないはずだ!
幼い頃から共にいたはずなのに……最近のビクトリアの考えはまるで理解できない。
こんな調子でこれから先やっていけるのだろうか……?
今後のことを考えると不安でしかない……。
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