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世紀末のジャーナリスト
21.一年振りの学び舎
しおりを挟む透は道中では視認拒否の魔法はかけなかった。三人分の魔力消費は今後の痛手になると真穂に言われ、仕方なしに一人囮を引き受けてバット一本で死者を葬っていく。
「頑張って橘くん!」
「やばい! すごくいい写真撮れた!」
透の後ろの二人は視認拒否魔法をかけているため、死者は見向きもしない。腐った連中が見えているのは透だけで、透を見るや否や磁石のように吸い寄せられている。
「なんでクレープのためにこんなことしなきゃいけねえんだよ」
小言を呟きながら、透は行く手を塞ぐ邪魔な物を全部殴り飛ばした。死者も、乗り捨てられた車も。
殴り飛ばしすぎて手首が痛くなった頃に、ようやく目的の高校が見えてきた。
高校の周辺は塀で囲まれており、まるで小さな要塞のようだった。入り口は廃材で作られた扉で厳重に塞がれており、死者や厄介者が安易に侵入できないような作りになっている。
案内されたエリアまで探索をしたことがなかったので、透は驚かされた。
廃材を積み上げて作った壁の上には初老の男が立っていた。他にアーチェリーや弓道の弓を持った制服姿の若い男女が見えた。
「ここですか?」
「ええ、すみませーん!」
瑠衣が呼びかけると生徒たちは弓を構え始めた。
「おまえら、なにしに来た!」
「動かないで!」
生徒たちの声のトーンからして、余所者排斥の傾向が強いらしい。強い口調を浴びせられたせいか、透は少し苛立った。
軽く睨み返していると、瑠衣が壁の人たちに声をかけた、
「わたしだよ! 瑠衣! このカメラ見覚えあるでしょ?」
瑠衣は通行手形と言わんばかりに自分のカメラを見せる。険しい顔をしていた初老の男は少しばかり表情を和らげた。
「……あんたか、また取材かい? 入りなよ」
「ありがとう、校長先生」
「ところで、その二人は?」
校長が透と真穂をじろりと見る。どうも警戒されているようだった。
「わたしの助手です」
不意に生徒の一人が矢を放つ。透の後ろに迫っていた一人の死者の頭に矢が突き刺さり、倒れ込んだ。
「よお、危なかったな」
わざわざそう口に出す生徒に、透はなにも返さなかった。助けてやったと言わんばかりの上から目線に、イライラさせられるだけだった。
「入りなさい」
重たそうな引き門が、ゆっくりと動かされた。
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