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副ギルド長の場合、再び
第拾参章 首領クリュザンテーメ
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『いい加減、白状して欲しいんだけどなァ』
裸のまま洗い場の天井から吊されている猿のアッフェは眉を八の字にしてこちらを見詰めるクーアから顔を背ける。
殺し屋として依頼人の名を明かすなど出来る訳がない。
たとえ拷問にかけられたとしても口を閉ざす覚悟でいた。
いたのではあるが、湯の中でたゆたう巨体を見ては怖気が走るというものだ。
漆黒の甲冑を身に纏っているのなら只の悪趣味と云えるがそうではない。
その身を覆う強固な鎧は昆虫や甲殻類でいう外骨格なのだ。
普段はすっぽりと長い袖に隠されていた腕は肩から指先までを甲羅が覆っている事に加えてなんと左右ニ対、四本であった。
その内の二本で黒髪の幼い子供を横抱きにしながら残る二本で構っている。
子供の方はやや憮然としているが、されるがままにさせていた。
腹部も甲羅で覆われ、背面も同様であるが、何故か胸部は人と同じ生身である。
甲羅に覆われていはいるが人型をしているのは股間までで足から先は完全に蜈蚣の如き長い胴体と化しており、真っ赤に輝く節足が無数に並んでいた。
あの小さなローブの中にこれだけの長い脚部がどうやって収まっていたのか教えて欲しいものだ。
『んー…じゃあ、こうしよう。君が質問に答えてくれたらなら僕も君の訊きたい事に答えてあげるよ。勝負に勝った方が妥協してるんだから、ちょっとは素直になってくれないかな?』
「魔女のクセに甘い事を云うのだな。俺はてっきり拷問でもされるのかと覚悟をしていたのだが?」
アッフェが挑発するようにクーアを嗤ってみせる。
裸のまま吊されているのに大した胆力だ。
或いは自暴自棄になっているのかも知れぬ。
『やっても良いけど血で温泉を汚したら僕らは宿を追い出されちゃうよ。それに君だって裏社会で名を知られた殺し屋だ。多少痛めつけられたくらいで口を割るとも思えない。拷問をするにしてもきっと凄惨なものになる。となると、こっちの精神衛生的にも宜しくないってワケさ』
「五十年前の魔女戦争で数多くの異端審問会を血祭りに上げていた幼きクーアの言葉とは思えぬな」
『あははは…あれは若気の至りというか、誰だって大好きだった家族を無惨に殺されたら頭に血が登るでしょ? たまたま僕に聖都スチューデリアに喧嘩を売るだけの力があっただけさ』
アッフェの背筋に冷たいものが走る。
照れ笑いをしているようで、その目の奥に隠しきれていない憎悪を見てしまったからだ。一見すると人の良さげな幼い魔法遣いであるが、その怨念は晴れていないに違いない。きっとこれからも聖都スチューデリアを許す事はないのだろう。
虎の尾を踏んでしまったかと思ったが、今の所クーアに逆上している様子は無い。
だがその瞳からは夜の闇よりもなお昏い憎悪が潜んでいる。
これによりアッフェは慎重に言葉を選ばざるを得なくなった。
何故ならアッフェの祖母はまさに魔女裁判を精力的に行っていた異端審問会のメンバーの一人であり、魔女の疑いのあった女性を水責めにしては幾人も溺死させてきたのだ。その報いか、魔女の復讐戦争では肺の中を汚水で満たされて陸地でありながら溺死させられるという凄惨な最期を遂げていた。
猿のアッフェを知るクーアの事だ。きっと祖母の事も知ってはいるだろう。
「仮に俺が依頼者を告白したとして何のメリットがある? よもや暗殺者を解放するなどという真似はすまい?」
『いや、素直に白状してくれたのなら、ちゃんと解放するさ。その後、失敗した挙げ句に依頼者をバラした殺し屋を盗賊ギルドが許すかまでは責任持てないけどね』
アッフェはどちらにせよ、自分が詰んでいる事を悟った。
仮にこの場から生還しても盗賊ギルドの首領に報告しない訳にもいかない。
その場では“お疲れさん。結果は残念やったが機会はまたあるやろ。今日のところはゆっくり休みぃ?”と云ってくれるだろうが、翌朝にはベッドの上で冷たくなっている自分を容易に想像出来たのだ。
逃げるのは不可能だ。自分以上の暗殺者を数多く抱える首領から逃れられる事などとても思えない。むしろ見せしめに残酷な方法で殺されるに違いない。
首領は盗賊ギルドに所属している内は我が子、我が孫のように慈しんでくれるが、離脱者や依頼者を明かす裏切り者を決して許さないだろう。
組織力もそうであるが、首領自身が牙狼月光剣の達人であり、闇属性のみでいえば『賢者』に匹敵する魔法の遣い手でもあるのだ。とても敵う相手ではない。
逃げる事も返り討ちにする事も不可能である以上、従うよりないのである。
「殺れ……どの道、俺の未来に死しかないのであれば、俺はお前の手にかかって死ぬ。あの御方に失望されて殺されるのだけは死んでも嫌だ」
覚悟を定めたアッフェにクーアはげんなりとした顔を見せる。
アフェの首を取ったところで、それこそクーアにメリットがないのだ。
この猿のアッフェは十中八九フォッグとミストの報復であると見ていた。
それ以外で盗賊ギルドがクーアに刺客を送り込んでくる理由がないからだ。
一応、殺した者の礼儀として御悔やみの品と香典を送り、ミストの息子からも“ご丁寧な挨拶、痛み入ります”という旨の返事を貰っている。
それが縁となって手紙の遣り取りをするようになったが、只の一つも恨み言を述べられた事は無く、むしろ盗賊である両親を恥じ、死という形となったが日陰の世界から解放してくれた事に感謝さえしていたのだ。
もし、これで怨念を隠していたのなら大したものであるが、文面や筆圧からは決して復讐心を読み取ることは無かったのである。
ちなみにミストの息子は既に親とは縁を切っており、ガイラント帝国の南に位置するバオム王国という小国にて大工見習いとして頑張っているそうな。つまりは堅気なのである。
ならば依頼者は盗賊ギルドの首領その人である可能性が一番高い。
盗賊ギルド・首領は裏切り者を許さない非情な一面を持つ一方、殺された手下の仇を討ったり、捕らえられた者を救い出す人情家の一面も持つという。
恐怖と救済、この二つを持って配下の心を掴んでいるのだろう。
或いは盗賊ギルドとしてのメンツというのもあるのかも知れない。
クーアとしてはアッフェの口から“首領からの依頼である”との証言が取れれば良かった訳で、望めばアッフェを保護する事も吝かではなかったのだ。
だが、実際にはアッフェは首領の為に死ぬとまで云うではないか。
これほどの忠誠を見せるとは、所詮は盗賊の集団と些か侮り過ぎていたらしい。
さて困った。こうなったらもう本当に拷問にかけても口を割らないだろう。
さっさと舌を噛み切らない事から死への恐怖そのものは消えてないだろうが、自分は助からないだろうと諦観している節も見受けられる。
痛みによる拷問が通用しないとなると変形させるか?
痛みを与えずに体を捻れさせたり、引き伸ばすか、逆に縮める事も出来るけど有効かは分からない。昔、差別主義の皇女の鼻を象の様に伸ばしてやった事があったけど、絶望のあまり情報を吐く前に血を吐いて頓死してしまったので、痛みを与えるより苦痛の度合いは大きいのかも知れぬ。
『お察しの通り、猿のアッフェは儂の依頼を受けた殺し屋や。クーア先生が聞きたかったのはこの一言やろ? なら、もうこいつには用は無いはずや。返して貰うで』
なんと大岩に寄り掛かって温泉に浸かる老人がいたのだ。
いつの間に? 気配はまったく感じられなかった。
懐のミーケを見ても驚いている事から彼も察する事が出来なかったらしい。
『ふぅ……エエ湯でんな。日頃の疲れが癒やされるで』
老人は『四苦八苦』と赤い文字で書かれた布に覆われた顔を手拭いで拭った。
しかも、その前にはお盆が浮いており、徳利とお猪口が乗っている。
その姿は隙だらけのようでまったく付け入る隙を見出す事が出来ない。
またクーアは顔の見えぬ老人にどこか懐かしいものを感じ取っていたのである。
「ど、首領?!」
『応、みんなの首領さんやで』
「い、いつからそこに?! まったく気付きませんでした」
『阿呆! 怪盗と呼ばれたフォッグとミストを一端にしたんはこの儂やで? 服をゆるゆると脱いで、誰にも勘付かれる事なく温泉に入る程度は朝飯前や』
飄々と答える老人に誰もが動けずにいた。
一人は恐怖の為、一人は隙を見出す事が出来ぬ為、そして胸を締め付けられる郷愁にも似た想いに囚われてしまったが為である。
『心配せんでエエ。猿の、アンタの命を取るつもりは無いで。このクリュザンテーメが一度口にした事を覆さん事はアンタがよう知っとるはずや、んん?』
途端にアッフェを吊していた縄が消える。
猿の異名と取る殺し屋は危なげなく床に着地した。
一体、何をした? 刃物を投げる様子も無ければ魔法を行使した痕跡も無い。
そもそもアッフェを拘束していた縄そのものがまるで手品のように消滅しているではないか。
『これでも儂は盗賊ギルドの首領やで? 盗めるものなら離れていようとも目が届く範囲の物は何でも盗めてしまうんや』
このようにな――いつの間にか、アッフェの体は首領の腕の中にあった。
「ど、首領……」
『おお、どこも怪我が無くて何よりや。それより、こんな無粋なモンは早外しぃ』
なんと首領がアッフェの股間を掴むと無造作に引き抜いてみせた。
それは今にも脈を打ち出しそうなほど精巧に作られた偽物であったのだ。
女の暗殺者が男湯に忍び込む為に盗賊ギルドが開発した変装道具だ。
「首領……」
助けられたアッフェは布越しとはいえ首領に口づけをする。
つまり、この二人がどういった仲であるのかを物語っていた。
『待て待て、人の目があるさかいな。続きは帰ってからや』
首領はアッフェを押し戻す。
同時に男の胸板を模した胸当てが外れて小振りながらも形の良い乳房が現れる。
壮年の男と思われていたが温泉で化粧が取れたのか若い女の顔と戻っていた。
『猿のアッフェはこの通り返して貰うたで。こいつはまだまだ儂には必要なヤツなんや。悪く思わんといてな。自分で考えて行動するとなるとお粗末なヤツで、今夜もご覧の通りの為体なんやが、儂の考えた仕掛けを忠実にこなす事に関してはアッフェ以上の者はおらん』
『まあ、ここにいられても持て余していたから助かるけど』
『おお、そうかい。話の分かるお人で助かったわ』
しなだれかかるアッフェを今度は押し戻さず肩を抱き寄せながら首領は笑う。
『よっしゃ、アッフェを見逃してくれた見返りにエエ事教えといたるわ。クーア先生の命を狙うとんのは後三人や。名前は明かせんが、それぞれが面白い趣向を用意して先生を待ち受けとるさかい、あんじょう頑張りなはれ』
『何でその事を?』
『見返りと云うたはずや。それに今回の仕掛けは盗賊ギルドの幹部候補が考えたものでな、狙われとると知って警戒しとる者を仕掛けるくらいはやって貰わんと困るんや』
アッフェの乳房を揉んでいる様は一見すると只の助平親爺にしか見えないが、それでも尚、クーアは攻め込む隙を見つける事が出来ない。
『何か裏があると思ったら僕に幹部昇進の試験官をやれってことかい』
湯の中でミーケに構いながらクーアが答える。
先程から言葉を発していないミーケはただ息を荒くして何かに耐えている様だ。
その顔は紅潮しているが、温めの湯なので湯当たりした訳ではなさそうである。
『そう云わんと楽しんでや。あっと驚く仕掛けばかりでクーア先生を退屈させる事はないと思いまっせ。このクリュザンテーメが請け負うたるわ』
首領が立ち上がる。
肉体もそうだが、そびえるモノは隆々としており老いを感じさせない。
『ほな、頼んだで』
アッフェを伴って去ろうとする首領をクーアは黙って見送る。
『ああ、そうそう』
首領が振り返る。
『的はクーア先生だけやあらへんで? 異端審問会が何故、魔女と連んでいるのか、どうしても気になるお人がおってな。そちらの方にも話を伺いに行く事があるかも知れんで。気をつけるこっちゃ』
『そちら……ルクスの事?』
聞き返した時には首領と猿のアッフェの姿はどこにも無かった。
『ちっ! 只でさえ厄介な事件を追っているのに面倒な……』
フェニルクスも暗殺者に斃されるような鍛え方をしていないので心配はしていないが、忠告はした方が良さそうだ。
『それにしても盗賊ギルドの首領が自ら出向いてくるとは思わなかった。多分、目的は愛人を救う為でも僕に忠告する為でもないな。僕と異端審問会との繋がりを疑問視している存在をほのめかした事から今回の事件と盗賊ギルドはきっと無関係じゃないだろうね』
クーアはなるほどと思った。
『そうか、無関係じゃないどころか、多分、事件の黒幕と盗賊ギルドは繋がりがあるんだ。刺客が送られてきたのは偶然じゃない。刺客の中には黒幕の意図を汲んで動いている指揮者もいるはずだ。手掛かりの少ない事件のキーを得る為に刺客を手捕りにする必要が出てきたってワケだ』
盗賊ギルドの首領もなかなかに親莫迦だ。
冒険者達を我が子同然と云いきるどこかの誰かを思い出してクーアは笑う。
『そう云えば何で彼は僕の事を先生呼ばわりしてたんだろう? ミーケに心当たりは無いかな?』
問い掛けても返事はない。
訝しんで顔を覗き込んで、クーアは“しまった”と叫ぶ。
盗賊ギルドの首領と渡り合う為のよすがとしてミーケの体に触れていく内についやり過ぎてしまったのだろう。
クーアの腕の中でミーケは何度も果ててぐったりとしていた。
『ああ、ごっめーん! だ、大丈夫かい?!』
完全に上気せてしまったミーケを介抱すべく、クーアは客室へと急ぐのだった。
裸のまま洗い場の天井から吊されている猿のアッフェは眉を八の字にしてこちらを見詰めるクーアから顔を背ける。
殺し屋として依頼人の名を明かすなど出来る訳がない。
たとえ拷問にかけられたとしても口を閉ざす覚悟でいた。
いたのではあるが、湯の中でたゆたう巨体を見ては怖気が走るというものだ。
漆黒の甲冑を身に纏っているのなら只の悪趣味と云えるがそうではない。
その身を覆う強固な鎧は昆虫や甲殻類でいう外骨格なのだ。
普段はすっぽりと長い袖に隠されていた腕は肩から指先までを甲羅が覆っている事に加えてなんと左右ニ対、四本であった。
その内の二本で黒髪の幼い子供を横抱きにしながら残る二本で構っている。
子供の方はやや憮然としているが、されるがままにさせていた。
腹部も甲羅で覆われ、背面も同様であるが、何故か胸部は人と同じ生身である。
甲羅に覆われていはいるが人型をしているのは股間までで足から先は完全に蜈蚣の如き長い胴体と化しており、真っ赤に輝く節足が無数に並んでいた。
あの小さなローブの中にこれだけの長い脚部がどうやって収まっていたのか教えて欲しいものだ。
『んー…じゃあ、こうしよう。君が質問に答えてくれたらなら僕も君の訊きたい事に答えてあげるよ。勝負に勝った方が妥協してるんだから、ちょっとは素直になってくれないかな?』
「魔女のクセに甘い事を云うのだな。俺はてっきり拷問でもされるのかと覚悟をしていたのだが?」
アッフェが挑発するようにクーアを嗤ってみせる。
裸のまま吊されているのに大した胆力だ。
或いは自暴自棄になっているのかも知れぬ。
『やっても良いけど血で温泉を汚したら僕らは宿を追い出されちゃうよ。それに君だって裏社会で名を知られた殺し屋だ。多少痛めつけられたくらいで口を割るとも思えない。拷問をするにしてもきっと凄惨なものになる。となると、こっちの精神衛生的にも宜しくないってワケさ』
「五十年前の魔女戦争で数多くの異端審問会を血祭りに上げていた幼きクーアの言葉とは思えぬな」
『あははは…あれは若気の至りというか、誰だって大好きだった家族を無惨に殺されたら頭に血が登るでしょ? たまたま僕に聖都スチューデリアに喧嘩を売るだけの力があっただけさ』
アッフェの背筋に冷たいものが走る。
照れ笑いをしているようで、その目の奥に隠しきれていない憎悪を見てしまったからだ。一見すると人の良さげな幼い魔法遣いであるが、その怨念は晴れていないに違いない。きっとこれからも聖都スチューデリアを許す事はないのだろう。
虎の尾を踏んでしまったかと思ったが、今の所クーアに逆上している様子は無い。
だがその瞳からは夜の闇よりもなお昏い憎悪が潜んでいる。
これによりアッフェは慎重に言葉を選ばざるを得なくなった。
何故ならアッフェの祖母はまさに魔女裁判を精力的に行っていた異端審問会のメンバーの一人であり、魔女の疑いのあった女性を水責めにしては幾人も溺死させてきたのだ。その報いか、魔女の復讐戦争では肺の中を汚水で満たされて陸地でありながら溺死させられるという凄惨な最期を遂げていた。
猿のアッフェを知るクーアの事だ。きっと祖母の事も知ってはいるだろう。
「仮に俺が依頼者を告白したとして何のメリットがある? よもや暗殺者を解放するなどという真似はすまい?」
『いや、素直に白状してくれたのなら、ちゃんと解放するさ。その後、失敗した挙げ句に依頼者をバラした殺し屋を盗賊ギルドが許すかまでは責任持てないけどね』
アッフェはどちらにせよ、自分が詰んでいる事を悟った。
仮にこの場から生還しても盗賊ギルドの首領に報告しない訳にもいかない。
その場では“お疲れさん。結果は残念やったが機会はまたあるやろ。今日のところはゆっくり休みぃ?”と云ってくれるだろうが、翌朝にはベッドの上で冷たくなっている自分を容易に想像出来たのだ。
逃げるのは不可能だ。自分以上の暗殺者を数多く抱える首領から逃れられる事などとても思えない。むしろ見せしめに残酷な方法で殺されるに違いない。
首領は盗賊ギルドに所属している内は我が子、我が孫のように慈しんでくれるが、離脱者や依頼者を明かす裏切り者を決して許さないだろう。
組織力もそうであるが、首領自身が牙狼月光剣の達人であり、闇属性のみでいえば『賢者』に匹敵する魔法の遣い手でもあるのだ。とても敵う相手ではない。
逃げる事も返り討ちにする事も不可能である以上、従うよりないのである。
「殺れ……どの道、俺の未来に死しかないのであれば、俺はお前の手にかかって死ぬ。あの御方に失望されて殺されるのだけは死んでも嫌だ」
覚悟を定めたアッフェにクーアはげんなりとした顔を見せる。
アフェの首を取ったところで、それこそクーアにメリットがないのだ。
この猿のアッフェは十中八九フォッグとミストの報復であると見ていた。
それ以外で盗賊ギルドがクーアに刺客を送り込んでくる理由がないからだ。
一応、殺した者の礼儀として御悔やみの品と香典を送り、ミストの息子からも“ご丁寧な挨拶、痛み入ります”という旨の返事を貰っている。
それが縁となって手紙の遣り取りをするようになったが、只の一つも恨み言を述べられた事は無く、むしろ盗賊である両親を恥じ、死という形となったが日陰の世界から解放してくれた事に感謝さえしていたのだ。
もし、これで怨念を隠していたのなら大したものであるが、文面や筆圧からは決して復讐心を読み取ることは無かったのである。
ちなみにミストの息子は既に親とは縁を切っており、ガイラント帝国の南に位置するバオム王国という小国にて大工見習いとして頑張っているそうな。つまりは堅気なのである。
ならば依頼者は盗賊ギルドの首領その人である可能性が一番高い。
盗賊ギルド・首領は裏切り者を許さない非情な一面を持つ一方、殺された手下の仇を討ったり、捕らえられた者を救い出す人情家の一面も持つという。
恐怖と救済、この二つを持って配下の心を掴んでいるのだろう。
或いは盗賊ギルドとしてのメンツというのもあるのかも知れない。
クーアとしてはアッフェの口から“首領からの依頼である”との証言が取れれば良かった訳で、望めばアッフェを保護する事も吝かではなかったのだ。
だが、実際にはアッフェは首領の為に死ぬとまで云うではないか。
これほどの忠誠を見せるとは、所詮は盗賊の集団と些か侮り過ぎていたらしい。
さて困った。こうなったらもう本当に拷問にかけても口を割らないだろう。
さっさと舌を噛み切らない事から死への恐怖そのものは消えてないだろうが、自分は助からないだろうと諦観している節も見受けられる。
痛みによる拷問が通用しないとなると変形させるか?
痛みを与えずに体を捻れさせたり、引き伸ばすか、逆に縮める事も出来るけど有効かは分からない。昔、差別主義の皇女の鼻を象の様に伸ばしてやった事があったけど、絶望のあまり情報を吐く前に血を吐いて頓死してしまったので、痛みを与えるより苦痛の度合いは大きいのかも知れぬ。
『お察しの通り、猿のアッフェは儂の依頼を受けた殺し屋や。クーア先生が聞きたかったのはこの一言やろ? なら、もうこいつには用は無いはずや。返して貰うで』
なんと大岩に寄り掛かって温泉に浸かる老人がいたのだ。
いつの間に? 気配はまったく感じられなかった。
懐のミーケを見ても驚いている事から彼も察する事が出来なかったらしい。
『ふぅ……エエ湯でんな。日頃の疲れが癒やされるで』
老人は『四苦八苦』と赤い文字で書かれた布に覆われた顔を手拭いで拭った。
しかも、その前にはお盆が浮いており、徳利とお猪口が乗っている。
その姿は隙だらけのようでまったく付け入る隙を見出す事が出来ない。
またクーアは顔の見えぬ老人にどこか懐かしいものを感じ取っていたのである。
「ど、首領?!」
『応、みんなの首領さんやで』
「い、いつからそこに?! まったく気付きませんでした」
『阿呆! 怪盗と呼ばれたフォッグとミストを一端にしたんはこの儂やで? 服をゆるゆると脱いで、誰にも勘付かれる事なく温泉に入る程度は朝飯前や』
飄々と答える老人に誰もが動けずにいた。
一人は恐怖の為、一人は隙を見出す事が出来ぬ為、そして胸を締め付けられる郷愁にも似た想いに囚われてしまったが為である。
『心配せんでエエ。猿の、アンタの命を取るつもりは無いで。このクリュザンテーメが一度口にした事を覆さん事はアンタがよう知っとるはずや、んん?』
途端にアッフェを吊していた縄が消える。
猿の異名と取る殺し屋は危なげなく床に着地した。
一体、何をした? 刃物を投げる様子も無ければ魔法を行使した痕跡も無い。
そもそもアッフェを拘束していた縄そのものがまるで手品のように消滅しているではないか。
『これでも儂は盗賊ギルドの首領やで? 盗めるものなら離れていようとも目が届く範囲の物は何でも盗めてしまうんや』
このようにな――いつの間にか、アッフェの体は首領の腕の中にあった。
「ど、首領……」
『おお、どこも怪我が無くて何よりや。それより、こんな無粋なモンは早外しぃ』
なんと首領がアッフェの股間を掴むと無造作に引き抜いてみせた。
それは今にも脈を打ち出しそうなほど精巧に作られた偽物であったのだ。
女の暗殺者が男湯に忍び込む為に盗賊ギルドが開発した変装道具だ。
「首領……」
助けられたアッフェは布越しとはいえ首領に口づけをする。
つまり、この二人がどういった仲であるのかを物語っていた。
『待て待て、人の目があるさかいな。続きは帰ってからや』
首領はアッフェを押し戻す。
同時に男の胸板を模した胸当てが外れて小振りながらも形の良い乳房が現れる。
壮年の男と思われていたが温泉で化粧が取れたのか若い女の顔と戻っていた。
『猿のアッフェはこの通り返して貰うたで。こいつはまだまだ儂には必要なヤツなんや。悪く思わんといてな。自分で考えて行動するとなるとお粗末なヤツで、今夜もご覧の通りの為体なんやが、儂の考えた仕掛けを忠実にこなす事に関してはアッフェ以上の者はおらん』
『まあ、ここにいられても持て余していたから助かるけど』
『おお、そうかい。話の分かるお人で助かったわ』
しなだれかかるアッフェを今度は押し戻さず肩を抱き寄せながら首領は笑う。
『よっしゃ、アッフェを見逃してくれた見返りにエエ事教えといたるわ。クーア先生の命を狙うとんのは後三人や。名前は明かせんが、それぞれが面白い趣向を用意して先生を待ち受けとるさかい、あんじょう頑張りなはれ』
『何でその事を?』
『見返りと云うたはずや。それに今回の仕掛けは盗賊ギルドの幹部候補が考えたものでな、狙われとると知って警戒しとる者を仕掛けるくらいはやって貰わんと困るんや』
アッフェの乳房を揉んでいる様は一見すると只の助平親爺にしか見えないが、それでも尚、クーアは攻め込む隙を見つける事が出来ない。
『何か裏があると思ったら僕に幹部昇進の試験官をやれってことかい』
湯の中でミーケに構いながらクーアが答える。
先程から言葉を発していないミーケはただ息を荒くして何かに耐えている様だ。
その顔は紅潮しているが、温めの湯なので湯当たりした訳ではなさそうである。
『そう云わんと楽しんでや。あっと驚く仕掛けばかりでクーア先生を退屈させる事はないと思いまっせ。このクリュザンテーメが請け負うたるわ』
首領が立ち上がる。
肉体もそうだが、そびえるモノは隆々としており老いを感じさせない。
『ほな、頼んだで』
アッフェを伴って去ろうとする首領をクーアは黙って見送る。
『ああ、そうそう』
首領が振り返る。
『的はクーア先生だけやあらへんで? 異端審問会が何故、魔女と連んでいるのか、どうしても気になるお人がおってな。そちらの方にも話を伺いに行く事があるかも知れんで。気をつけるこっちゃ』
『そちら……ルクスの事?』
聞き返した時には首領と猿のアッフェの姿はどこにも無かった。
『ちっ! 只でさえ厄介な事件を追っているのに面倒な……』
フェニルクスも暗殺者に斃されるような鍛え方をしていないので心配はしていないが、忠告はした方が良さそうだ。
『それにしても盗賊ギルドの首領が自ら出向いてくるとは思わなかった。多分、目的は愛人を救う為でも僕に忠告する為でもないな。僕と異端審問会との繋がりを疑問視している存在をほのめかした事から今回の事件と盗賊ギルドはきっと無関係じゃないだろうね』
クーアはなるほどと思った。
『そうか、無関係じゃないどころか、多分、事件の黒幕と盗賊ギルドは繋がりがあるんだ。刺客が送られてきたのは偶然じゃない。刺客の中には黒幕の意図を汲んで動いている指揮者もいるはずだ。手掛かりの少ない事件のキーを得る為に刺客を手捕りにする必要が出てきたってワケだ』
盗賊ギルドの首領もなかなかに親莫迦だ。
冒険者達を我が子同然と云いきるどこかの誰かを思い出してクーアは笑う。
『そう云えば何で彼は僕の事を先生呼ばわりしてたんだろう? ミーケに心当たりは無いかな?』
問い掛けても返事はない。
訝しんで顔を覗き込んで、クーアは“しまった”と叫ぶ。
盗賊ギルドの首領と渡り合う為のよすがとしてミーケの体に触れていく内についやり過ぎてしまったのだろう。
クーアの腕の中でミーケは何度も果ててぐったりとしていた。
『ああ、ごっめーん! だ、大丈夫かい?!』
完全に上気せてしまったミーケを介抱すべく、クーアは客室へと急ぐのだった。
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2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
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