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第弍拾㯃章 秘剣対隠し剣

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「どおりゃああああああああっ!!」

 孤月院延光えんこうが突進とともに十文字槍を繰り出す。
 突進の推進力を生む蹴り足は老齢とは思えず、さながら野の草を吹き分ける野分のわきの如き荒々しさがあった。
 また突き出された十文字槍の伸び来たる様は邪念を一切帯びず、ただひたすらにブリッツ目掛けて突き進む青嵐の如しである。
 これ程力強く直向ひたむきな突きを繰り出しながら何故孤月院延光はおぞましい手段で転生武芸者を生み出し続ける寺院に与するのかブリッツには分からなかった。

「延光!」

 ブリッツは槍を搔い潜り延光の脛を狙う。
 柳剛流りゅうごうりゅうの得意とする脛斬りである。

「甘いわ!!」

 延光が槍を突き出しながらも回転させると横に伸びた鎌刃がブリッツの首を落とさんと迫ってくる。十文字槍の恐しさは鎌刃にあった。

 宝蔵院流槍術は奈良は興福寺子院・宝蔵院の僧胤栄いんえいによって興された。
 宝蔵院流は十文字槍を得意とするが、胤栄が素槍に十文字の工夫を施したのは僧兵の得意とする薙刀なぎなたの反った刃からの発想にあり、刺突と同時に鎌刃を相手にかけて斬り殺す事にある。
 覚禅房かくぜんぼう胤栄は宝蔵院院主であり、僧兵であった。
 位は伊賀守いがのかみ、公家の中御門なかみかど家の出である。
 伊賀守は剣を上泉かみいずみ伊勢守いせのかみ秀綱に学び、同時に槍を大膳たいぜん太夫たゆう盛忠もりただに学んだ。
 更に柳生宗厳むねよしに代表される兵法家達の助力を得て、表九本、真位六本、計十五本の宝蔵院流槍術の式目を定めたという。
 胤栄は後に僧侶が武術に傾倒する事を戒め、嫡男禅栄房ぜんえいぼう胤舜いんしゅんにも武芸を禁じたとされている。
 しかし父胤栄が没すると、まだ若かった胤舜は遺命に反して父の高弟らと修行に励み、二十歳を過ぎる頃には奥義に達したそうな。
 その胤舜の云い分がこうである。

「吾が宝蔵院は釈子遺経のゆえに非ず。只先師胤栄槍術の故なり。吾その槍術を継がずんばあるべからず」

 つまり宝蔵院の基盤は釈迦の遺した仏教にあるのではなく、父胤栄の興した槍術にあると主張したのだ。
 また宝蔵院流の源流の一つである大膳太夫盛忠は槍の名人であるばかりか、流祖飯篠いいざき長威斎ちょういさい家直いえなおの神道流を初め兵法四十余流を学んだとされており、故に宝蔵院流には武芸百般の奥義が秘されているという。

「ぬう?」

 鎌刃がブリッツの首を狩り取る寸前、槍が引かれて刺突が鈍る。
 その隙にブリッツは後ろに倒れ、転がる事で難を逃れた。

「勝負に横槍を入れるのが聖女の流儀か?」

 見れば石突きに氷の蔦が巻き付いていた。
 ゲルダが四神衆を斃した事で解放された少女達の魂より授けられた能力で氷の蔦を操る『氷百足ひむかで』である。

「無礼は承知だがブリッツはガイラント帝国に必要な男でな。ワシが代わろう」

「聖女ゲルダの首か。良かろう。布教失敗の罪を購ってなお釣りがくるわ」

 だがその前に――延光が槍に札を貼る。

「ノウマク サンマンダ バサラダン センダンマカロシャダ ソハタヤ ウンタラタ カンマン!!」

 十文字槍が赤く輝いて氷の蔦を瞬く間に解かしてしまったではないか。

「ほう! あらゆる魔を焼き祓う不動明王の『火界咒かかいしゅ』でござるか!」

「如何にも! 不動明王に守られた愚僧にはあらゆる魔法は通じぬ! 『水』を司る聖女の力であろうとだ!」

「よもや本物の法力を見られるとは思わなんだわ。ありがたい事だ」

 前世では不動明王も信仰していたゲルダは合掌して延光を拝み出してしまう。
 まさか聖女に拝まれるとは想像だにしていなかった延光は流石に面喰らった。

「いや、拝まれても困るのだが……」

「惜しいな。そなたらがおぞましい儀式で転生武芸者を生み出すような組織でなければこうべを垂れ、『水の都』に招いて瘴気を浄化してもらうつもりであったのだがのぅ。これ程の力を持ちながら何故なにゆえ外法に手を染める?」

 途端に周囲の気温が一気に下がる。
 顔を上げ見開いた瞳は金から蒼銀へと変わっていた。

「孤月院延光殿。如何に素晴らしき法力を身に着けた高僧であろうと罪無き乙女を犠牲にして怪物を生み出すそなた達を許す訳にはゆかぬ。覚悟せよ」

 地面は凍り、建物には霜が降りている。
 僧兵達が突然の寒気に戸惑うその隙を逃すはずもなく、ゼルドナルやブリッツに斃され捕縛されていく。
 カイム王子はゼルドナル達の捕縛に特化した鮮やかな取手術とりてじゅつに驚かされる。
 敵を殺す事なく、捕らえる為の武術が存在するとは想像もしなかった事だ。
 騎士道を重んじるバオム王国とて時として罪人を捕らえずに斬る事もあるのだが、ガイラント帝国はまず捕らえ、公正な裁判の末にその罪に応じた罰を与える事を旨としている。また罪を犯すに至った経緯も裁判では考慮され、状況によっては罰を減ずる事もある事から『世界一命が重い国』とも呼ばれているそうな。

「美しい…」

 殺さずに捕らえる技が美しかった事ある。
 しかし何より周囲を凍てつかせるゲルダの力から目が離せなかった。
 瞬時にしてブリッツの別荘を死の世界へと変えてしまったゲルダは恐ろしかったが、それ以上に美しかったのである。
 蒼銀の瞳を輝かせる姿は物語に登場する冥界の王を想起させた。
 亡者を無慈悲に、そして公平に裁く麗しき死の国の女王に似ているのだ。

「もはやこれまでか。ならば聖女よ! 貴様の首だけでも!!」

 延光が槍を頭上で振り回す。
 穂先や鎌刃のみならず石突きからも炎の尾が伸びてまるで炎の車輪だ。

「我が奥義『炎舞乱陣《えんぶらんじん》』を受けて見せい!!」

 元より槍の鋭さもあるが不動明王の炎が更なる截断力と貫通力を与えていた。
 更には炎の車輪はさながら灼熱の盾であり、まさに攻防一体の奥義である。

「こおおおおお……穿て! 『寒飛燕かんひえん』!!」

 ゲルダが独特の呼気の後に右手を前に翳すと掌より氷の礫が撃ち出される。
 これもまた四神衆の朱雀に捕らわれていた少女の魂を救った事で得た能力の一つで、氷の礫を自在に操る事が出来た。
 その威力は甲冑程度なら数発で砕け散り、しかもその速射能力は魔力の分配を考えなければ分間千発をも超えるという。

「無駄だ! 魔力で無理矢理作り出した氷如き降魔ごうまの炎の前では無力!」

 延光の言葉通り氷の礫は灼熱の盾に触れるどころか半間(約0・9メートル)にも届く事なく悉くが消滅してしまう。

「転生武芸者でなければ容易い相手だと思うたか? 嘗めるでない! 大僧正様から直接教えを賜った十大弟子が一人、孤月院延光…転生武芸者に引けを取らぬわ!!」

 十文字槍が突き出されればそれは最早刺突ではなく全てを焼き尽くす巨大なる焦熱の石火箭いしびやであった。
 躱し様に秘剣『なかご斬り』を放つが不動明王の加護の前に弾かれてしまう。
 それどころか炎が『水都聖羅』を伝ってゲルダに襲いかかってくるではないか。
 青いゴシックドレスの袖から水芸の如く大量の水が噴出するが炎の勢いは止まらないばかりか、ドレスの袖に燃え移ってきた。

「チッ!」

 ゲルダが念じるとドレスが消滅させて体への延焼を防ぐ。
 なんとドレスは実体ではなく魔力で構成されていたようだ。

「水でも消えぬ炎かえ。厄介な事だな」

 下着姿になってしまったが、それも一瞬の事ですぐにドレスを再構築する。
 だが今度のドレスは漆黒であった。

「さて百年前に魔界からの戦利品として得たものだがどうであるかな」

 胸元と背中が大きく開いたイブニングドレス風で防御力は低そうではあるが侮るなかれ、かつて女性だった先々代の魔王が愛用していた物で防御力に関して云えば下手な甲冑よりも上等であり、特に対魔法防御においてはゲルダが知る限り最強である。
 ちなみに本来はボディースーツ型であったのだが、内側が無数の触手で覆われており、その防御力を発揮するには触手を通じて魔力を供給する必要があったという。
 得体の知れぬ触手に愛娘の肌を蹂躙させてなるものか、とセイラによりドレスへと作り替えられ、魔力の供給は付属のチョーカーを通して行われるように改良された経緯があるそうな。

「魔王の装備であろうと、否、魔王の装備だからこそ通じぬと思えい!!」

 孤月院の槍は七尺と短くすることにより取り回しを向上させ、鎌刃を長くしたことで殺傷範囲を広げる工夫がされていた。
 延光は突き、払い、振り回し、時には腰だめに構えての突進を駆使してゲルダに襲いかかる。さながら炎の嵐と化していた。
 ゲルダはその攻撃を捌き、躱し、時には搔い潜って肉薄する。
 ドレスは攻撃に晒されるたびに斬り裂かれ、燃やされるがゲルダの身に傷を負わせる事はなく、しかも瞬時にして修復された。
 だが、それも直撃を避けた上での損傷である。
 まともに喰らえば致命傷は免れない。
 それでも近づく事が出来るようなったのだから魔界の王の身を守った装備というのは伊達ではないという事だろう。

「そりゃ!」

 大上段から叩きつけられる槍を避けると炎と刃が地面を容易く斬り裂いた。
 その隙に肉薄して斬り上げるがすぐさま槍が持ち上げられて防がれてしまう。
 槍を素早く持ち上げる延光の膂力も凄まじいが、不動明王の加護がある事も大きいのだろう。

「まだまだ!」

 延光は連続して槍を突き出してくる。
 その動きは人間離れをしており、まるで槍による速射砲だ。
 しかも槍の先端から小さな火球が撃ち出される始末である。
 ゲルダは連続突きと火球による波状攻撃にじりじりと後退させられてしまうが、それでも二刀を用いて捌いていく。
 しかし、その一撃一撃の重さに加えて槍によって灼熱地獄と化した場そのものにより体力は奪われてしまい、ついに幾度か鎌刃や炎がかすめていくようになる。

「ぐっ…このままでは……」

 その時、ゲルダの右目に何かが入り視界を奪う。
 何だ? 汗か? 血か?
 拭う事も出来ず狭まる視界の中でついに右腿を鎌刃がざっくりと斬り裂いた。

「あぐっ!」

 致命傷では無かったがゲルダは後ろに大きく跳んで距離を開けようとする。
 その隙を勝機と見た延光が槍を腰だめに構えた。

「せいりゃあああっ!!」

 地面に草鞋の痕を深く残す程に踏み込んで延光が突進する。
 彼の技の中にあって最大の破壊力を持つ一撃だ。
 十文字槍がゲルダを貫かんと迫るがゲルダは微動だにしない。

「ゲルダ先生!!」

 カイム王子が悲痛な叫びをあげる。
 それに応えるかのようにゲルダの下段斬りが穂先を斜めに斬り飛ばした。
 動けなかったのではなく、この一撃の為に力を溜めていたのだ。
 しかもゲルダは止まらない。延光もまた怯まない。
 『水都聖羅』の切っ先が虚空で返されて振り下ろされた。
 石突きが回されて炎を刃に変えてゲルダを焼き尽くさんと唸りを上げる。
 一瞬早く石突きが炎を纏ったまま飛んだ。
 
「けえええええええええええい!!」

 既に延光の手に槍は無く、背に隠していた刀を抜き付けていた。
 しかも鞘の中で降魔の炎を爆発させて加速までしている。
 それを抜きにしても神道流の祖、長威斎の流れも汲むだけに見事な一刀だ。
 槍を失った時の為に隠し剣『紅蓮ぐれん抜刀』を切り札にしていたのだ。

「げえっ?!」

 しかし振り下ろされた『水都聖羅』は再び刃を返して斬り上げが発動していた。
 敵を仕留めるまで攻撃をし続ける事を極意とし、獲物を素早く急降下して仕留める隼と弧を描いて滑翔する鳶を見て剣の振りの速さと勢いを殺さずに刃を返して敵に反撃する間を与えぬ工夫を凝らした秘剣『鳶隼えんしゅん返し』である。
 青龍に捕らわれていた少女トレーネを解放した際にゲルダは前世の友、風見かざみ六右衛門ろくえもんが編み出した小太刀の工夫を継承していた。
 青龍は冨田流とだりゅう小太刀術に転生武芸者となった事で得た怪力を組み合わせて斬撃の軌道を変える『飛龍』を編み出しており、ゲルダはその応用で飛燕の如き太刀捌きを工夫していたのである。
 ゲルダは青龍を翻弄した『花一輪』と『鳶隼返し』に加えて更に編み出した二つの秘剣を合わせて『花鳥風月』の秘奥義として定めていた。
 花のように泰然と構え、鳥のように敵を仕留め、風を友とし、月を斬る秘奥だ。
 『花一輪』が相手と呼吸を合わせる見切りの奥義とするなら『鳶隼返し』は戦闘終了まで攻撃を繰り返す制圧の奥義である。本来なら一体多の状況こそが本領を発揮するのであるが、一対一の戦いにおいても勿論威力を充分発揮した。
 ゲルダの新たなる秘剣は鳶のように優雅に弧を描き隼のように速く延光の右手を斬り飛ばしたのである。

「ふっ…ふふふ…流石は四神衆を退けただけはある。善くぞ愚僧を斬った」

 延光が不敵に笑った。
 右手を失い、僧兵を悉く捕らえられ、天狐てんこ地狐ちこも帰らぬと知りながら大した胆力である。しかも背後にはゼルドナルとブリッツが控えているのにだ。

「だが何事にも終わりはある…愉しい時間は終わりだ」

 既に槍や刀からは不動明王の降魔の炎が消えていた。
 しかも失血からか、精気に満ち溢れていた延光の顔には疲労が浮かび、血色が失せているではないか。
 だが脂汗を浮かせながらも自らの足ですっくと立っている様に一同は言葉を失う。

「不思議なものだ。隠し剣『紅蓮抜刀』までも駆使したのに聖女めには勝てなんだが少しも悔しいという気持ちが湧いてこぬ」

「それは孤月院殿が全力を出し切ったからではあるまいか」

「そうか、全力を出して負けたからこそ、これ程清々しい心持ちとなっているのか」

 ゲルダの指摘に延光は子供のように笑う。
 それが限界であったのだろう。老僧は腰が砕けたように座り込む。

「これは……仏のお導きか」

 延光の座り込んだ先に斬られた十文字槍の穂先があった。
 それを手に取るや延光は自らの腹に突き立てたのである。

「延光殿!」

「愚僧を生け捕りにして情報を得るつもりであったのだろうが、これでも十大弟子の一人…敵に有利な情報を与える訳にはいかん」

「くっ!」

 ゲルダは治療しようとするが、すぐに取り止めて首を横に振った。
 延光は穂先を回転させて臓腑を掻き回していたのだ。最早助かるまい。
 恐るべき精神力、畏るべき忠誠心である。
 ゲルダは治療の代わりに延光の痛覚を遮断する。
 あらゆる病を治す聖女と謳われているが、限界というものがある。
 流石のゲルダでも末期の癌や致命傷を負って余命幾許いくばくも無い者は救えない。
 ならば、せめて苦痛を取り除いて心安く旅立てるようにしてやるのだ。

「痛みが…聖女よ、そなたは敵である愚僧をも情けを持って送るのか…」

「僧侶に云う言葉ではないが、人は死ねば皆、仏ゆえな」

 延光は暫しの瞑目の後、目を開くと穏やかな表情を浮かべる。
 敵意も悪意も無い。まるで観音菩薩の様に優しげですらあった。

「天魔宗…」

「む?」

「寺院の裏で名乗っている組織の名よ」

「僧侶が天魔と?」

 天魔とは僧達の修行を妨げる悪魔の事である。
 仏教における天のうち、欲界の六欲天の最高位、他化自在天を指す。
 およそ僧侶が名乗るに相応しくない名であるといえよう。

「表向きは回向を施す寺院も裏に回れば転生武芸者を生み出す外道の集まり…むしろ我らにこそ名乗るに相応しかろう」

 延光は自嘲の笑みを浮かべてすらいた。

「我らはどこで間違えてしもうたのかな。無念の死を遂げた武芸者の魂を救済するという聞こえの良い言葉に酔って転生武芸者を生み出した事か。転生に少女を生贄にしていると知って尚、大僧正様をお諫めせなんだ時からか」

「大僧正とは何者か? 転生武芸者を生み出して何を企んでおる?」

「あの御方が最終的に何を求めておられるのか。それは分からぬ。だが回向寺として多くの弱者や貧者を救ってきたのは事実…愚僧もかつては救われた者の一人であった。だからこそ荒行にも耐え、力と知恵を蓄えてきたのだ。全ては大僧正様から受けた御恩に報いる為……ぐぼっ!」

 延光の口から大量の血が吐き出された。
 目も虚ろげで焦点が合っていない。

「大僧正様が何故、大勢の転生武芸者を生み出すのか…確実に云える事は彼らを戦力として頼みにしているのではないという事だ…」

「戦力ではない? どういう事だ?」

「ふふふ…愚僧の口から云えるのはここまで……聖女の慈悲への対価よ」

 延光は幽かに笑うと静かに目を閉じた。

「ゆめ油断せぬ事だ。残る十大弟子は愚僧の様に甘くはない。否、迷いがない。強敵が転生武芸者のみと思っておると足元を掬われるぞ」

「ご忠告痛み入る。なれど既に孤月院殿と戦った事で身に染みてござる」

「そうか……我が生涯最後の敵、ゲルダよ。強かったぞ。愉しかったぞ。そなたの武運長久を祈っておるぞ」

 それが孤月院延光の最期の言葉である。
 ゲルダは延光の右手を繋げて体を整えてやると、手を合わせて祈った。
 勝負が愉しかったのはゲルダとて同じである。
 もし出会い方が違ったなら友となれたかも知れぬとさえ思っていたのだ。
 ゲルダは宝蔵院流の名人へ祈り続けるのであった。
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