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100 俺の姫プレイとご主人様
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<土曜日 11:17>
「…………あ」
「こんにちは」
秋葉原の電器屋の六階で、俺はまたナオキさんに会った。
人の多いこの街で、こんなに何度も会うものなのだろうか……?
雪森は偶然を装って俺に会いに来た。
その過去の経験が、俺の警戒を強める。
「偶然ですね。お買い物ですか?」
「ええ……まぁ……」
警戒しているのがバレバレなのか、ナオキさんはクスッと笑う。
「大丈夫ですよ。こんな場所で取って食ったりしません」
「えっ、あ、ええと……」
俺の考えていることなんて、お見通しだったようだ。
バツが悪くて、俺はナオキさんから目を逸らす。
なんとなく店内へ向けたその目が、とある人物を捕えた。
向こうも俺の存在に気づいたようで、こちらへ近づいて来る。
「トモ──」
「なんでお前がチヒロといる!?」
トモヤは俺の腕を掴んで引っ張り、その背に隠した。
温厚なトモヤが怒っている?
怒っている相手は、ナオキさん……?
「おや? もしかして、彼はトモヤ君のお友達でしたか」
「どういうつもり? 何を考えている?」
「何も。彼がキミの友達だと、今初めて気づいたんですよ? それだと何も出来なくないですか?」
「……本当に初めて気づいたのか怪しいね。とっとと去ったらどう?」
やり取りを見る限りだと、この二人は知り合い?
俺は二人の顔を交互に見比べた。
「すみませんねぇ~……もう少しキミとお話したかったんですけど、また今度……」
「今度なんてものは来ない。お前はチヒロに関わるな」
俺は背中側にいて、トモヤがどんな顔をしているのか分からないが、周囲にいるお客さんが小さくヒッと声を上げている。
「怖いですねぇ……なるほどね。この前言っていたのは、この彼ですか」
「……お前には関係ないだろ。さっさと行け」
ナオキさんは肩をすくめて、トモヤと俺の横を通って行く。
その時、すれ違い様に俺はスッと尻を撫でられた。
「ほあっ!?」
「またね。チヒロ君」
俺は尻を押さえ、ナオキさんは俺の尻を撫でた手をフリフリと振って去って行った。
俺の姿を見たトモヤが、何があったのか察する。
トモヤは俺の手を取ると、エスカレーターのある方角へとグイグイ引っ張って行った。
「チヒロ……除菌シートを買おう。あいつが触ったところ全部拭こう」
「ちょ……ちょっと待っ……!」
「あと、なんで君があいつを知ってるのか、今からじっくりゆっくり話を聞かせてもらうからね」
「ちょ! トモヤ……歩くの早いって!」
俺は前のめりになって転びそうになる。
そしてこの後、トモヤに説教されることになった。
知らない人から、物を貰ってはいけません。
俺はこの歳になってまで、そんなことを言われるとは思ってもみなかったのだった。
***
side ナオキ
電器屋で朋也君に会った数日後、仕事から帰宅した俺はすぐ自室へと向かった。
手に持った封筒の中身を取り出して、机の上にバサリと置く。
朋也君から頼まれた『お仕置き』を実行したその翌日から、俺はあることを知り合いに頼んでいた。
ある程度の情報がまとまったらしいので、今日それを受け取ったのだ。
『上月千尋』
彼に関する情報と数枚の写真。
俺はネクタイを緩めて、写真を手に取り、それを眺めた。
「……あんなに朋也君に想われている相手は、一体どんな人物なのかと思ってたんですが……彼だったんですねぇ」
元気な柴犬みたいな雰囲気の彼。
ペラッとめくった次の写真には、彼と朋也君が写っていた。
その写真の中の朋也君は、俺が見たことないような笑顔を浮かべている。
「いい顔だなぁ……」
またペラッと写真をめくった。
次に出てきたのは、超絶美形の男とチヒロ君。
「朋也君にあんなに想われているのに、他にも男がいるんですか……なかなか侮れない彼ですね」
写真の中の二人は、深くキスしていた。
超絶美形の彼が、かなりチヒロ君に熱を上げているように見える。
「あの首に散りばめられたキスマークはこの彼……? それとも朋也君も一緒に……? でも、チヒロ君と朋也君はセックスはしてないんですよねぇ……?」
腕を組んで顎に手を当て、ふーむと考える。
二人はチヒロ君を取り合っている三角関係?
それとも共有している……とか?
俺は写真を置いて、書類の方に手を伸ばした。
ペラペラとめくるが、さすがにそこまで詳しいことは分からないか。
「……三角関係だと仮定して、チヒロ君がこのイケメンの彼を選んでくれたら、朋也君は俺の元に来てくれますかねぇ?」
目を瞑れば、絶対零度の表情を浮かべた朋也君の姿が浮かぶ。
俺はネクタイをしゅるりと外し、ワイシャツのボタンもいくつか外して、その中に手を滑り込ませた。
乳首を引っ掻きながら、俺はご主人様のことを考える。
数年ぶりの連絡、そして数年ぶりのご褒美はとても良かった。
「……はっ……あっ……もっと」
足りない。これじゃ足りない。
ご褒美もあれだけじゃ物足りない。もっと欲しい。
久々に与えられた甘美な刺激が忘れられない。
チヒロ君を──彼のことを突っついたら、またご褒美がもらえるかな?
俺はスラックスをずらして、右手を伸ばす。
硬くなったソレを激しく扱いた。
「ふっ……うっ……んんっ……!」
また踏んで、俺を叱って。
腰が浮いて、ビクビクッと身体が震える。
まぶたの裏に浮かぶ朋也君に向けて、俺は精を吐き出した。
「…………あ」
「こんにちは」
秋葉原の電器屋の六階で、俺はまたナオキさんに会った。
人の多いこの街で、こんなに何度も会うものなのだろうか……?
雪森は偶然を装って俺に会いに来た。
その過去の経験が、俺の警戒を強める。
「偶然ですね。お買い物ですか?」
「ええ……まぁ……」
警戒しているのがバレバレなのか、ナオキさんはクスッと笑う。
「大丈夫ですよ。こんな場所で取って食ったりしません」
「えっ、あ、ええと……」
俺の考えていることなんて、お見通しだったようだ。
バツが悪くて、俺はナオキさんから目を逸らす。
なんとなく店内へ向けたその目が、とある人物を捕えた。
向こうも俺の存在に気づいたようで、こちらへ近づいて来る。
「トモ──」
「なんでお前がチヒロといる!?」
トモヤは俺の腕を掴んで引っ張り、その背に隠した。
温厚なトモヤが怒っている?
怒っている相手は、ナオキさん……?
「おや? もしかして、彼はトモヤ君のお友達でしたか」
「どういうつもり? 何を考えている?」
「何も。彼がキミの友達だと、今初めて気づいたんですよ? それだと何も出来なくないですか?」
「……本当に初めて気づいたのか怪しいね。とっとと去ったらどう?」
やり取りを見る限りだと、この二人は知り合い?
俺は二人の顔を交互に見比べた。
「すみませんねぇ~……もう少しキミとお話したかったんですけど、また今度……」
「今度なんてものは来ない。お前はチヒロに関わるな」
俺は背中側にいて、トモヤがどんな顔をしているのか分からないが、周囲にいるお客さんが小さくヒッと声を上げている。
「怖いですねぇ……なるほどね。この前言っていたのは、この彼ですか」
「……お前には関係ないだろ。さっさと行け」
ナオキさんは肩をすくめて、トモヤと俺の横を通って行く。
その時、すれ違い様に俺はスッと尻を撫でられた。
「ほあっ!?」
「またね。チヒロ君」
俺は尻を押さえ、ナオキさんは俺の尻を撫でた手をフリフリと振って去って行った。
俺の姿を見たトモヤが、何があったのか察する。
トモヤは俺の手を取ると、エスカレーターのある方角へとグイグイ引っ張って行った。
「チヒロ……除菌シートを買おう。あいつが触ったところ全部拭こう」
「ちょ……ちょっと待っ……!」
「あと、なんで君があいつを知ってるのか、今からじっくりゆっくり話を聞かせてもらうからね」
「ちょ! トモヤ……歩くの早いって!」
俺は前のめりになって転びそうになる。
そしてこの後、トモヤに説教されることになった。
知らない人から、物を貰ってはいけません。
俺はこの歳になってまで、そんなことを言われるとは思ってもみなかったのだった。
***
side ナオキ
電器屋で朋也君に会った数日後、仕事から帰宅した俺はすぐ自室へと向かった。
手に持った封筒の中身を取り出して、机の上にバサリと置く。
朋也君から頼まれた『お仕置き』を実行したその翌日から、俺はあることを知り合いに頼んでいた。
ある程度の情報がまとまったらしいので、今日それを受け取ったのだ。
『上月千尋』
彼に関する情報と数枚の写真。
俺はネクタイを緩めて、写真を手に取り、それを眺めた。
「……あんなに朋也君に想われている相手は、一体どんな人物なのかと思ってたんですが……彼だったんですねぇ」
元気な柴犬みたいな雰囲気の彼。
ペラッとめくった次の写真には、彼と朋也君が写っていた。
その写真の中の朋也君は、俺が見たことないような笑顔を浮かべている。
「いい顔だなぁ……」
またペラッと写真をめくった。
次に出てきたのは、超絶美形の男とチヒロ君。
「朋也君にあんなに想われているのに、他にも男がいるんですか……なかなか侮れない彼ですね」
写真の中の二人は、深くキスしていた。
超絶美形の彼が、かなりチヒロ君に熱を上げているように見える。
「あの首に散りばめられたキスマークはこの彼……? それとも朋也君も一緒に……? でも、チヒロ君と朋也君はセックスはしてないんですよねぇ……?」
腕を組んで顎に手を当て、ふーむと考える。
二人はチヒロ君を取り合っている三角関係?
それとも共有している……とか?
俺は写真を置いて、書類の方に手を伸ばした。
ペラペラとめくるが、さすがにそこまで詳しいことは分からないか。
「……三角関係だと仮定して、チヒロ君がこのイケメンの彼を選んでくれたら、朋也君は俺の元に来てくれますかねぇ?」
目を瞑れば、絶対零度の表情を浮かべた朋也君の姿が浮かぶ。
俺はネクタイをしゅるりと外し、ワイシャツのボタンもいくつか外して、その中に手を滑り込ませた。
乳首を引っ掻きながら、俺はご主人様のことを考える。
数年ぶりの連絡、そして数年ぶりのご褒美はとても良かった。
「……はっ……あっ……もっと」
足りない。これじゃ足りない。
ご褒美もあれだけじゃ物足りない。もっと欲しい。
久々に与えられた甘美な刺激が忘れられない。
チヒロ君を──彼のことを突っついたら、またご褒美がもらえるかな?
俺はスラックスをずらして、右手を伸ばす。
硬くなったソレを激しく扱いた。
「ふっ……うっ……んんっ……!」
また踏んで、俺を叱って。
腰が浮いて、ビクビクッと身体が震える。
まぶたの裏に浮かぶ朋也君に向けて、俺は精を吐き出した。
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