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81 俺の姫プレイと汚れ
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<木曜日 23:37>
「う……」
真っ白な世界から、色のついた世界へと変わった。
パチパチとまばたきをして、自分が今まで寝ていたのだと知る。
むくりと起き上がると、そこはレンの家で、俺が借りている部屋だった。
「あれ……?」
いつここに来たんだっけ?
俺、あっちのマンションにいたんじゃなかった?
記憶が曖昧だ。えーっと……。
考え事をしていると、小さくコンコンと音がして、部屋のドアが開いた。
「あ、チヒロ。起きた?」
そう言って顔を出したのはトモヤ。手にはタオルが握られている。
「トモヤ……?」
「気分はどう? 気持ち悪いとかない?」
トモヤが手にしていたのは濡れタオルで、少しひんやりしていた。
俺の頬が少し腫れているから、冷やすために持ってきたらしい。
「あれ? ここ、レンの家……だよな? なんでトモヤがここに?」
「チヒロが心配で僕もついて来ちゃった」
いつものニコニコしたトモヤに見えるが、今日はちょっと眉が下がっている。
冷たいタオルを頬に当て、トモヤと会話をすることで、少しずつ頭がはっきりしてきた。
そうだった。俺、雪森に──
ブルッと身体が震える。思い、出した。
俺の顔色の変化に気づいたトモヤが、背中をさすって「もう大丈夫だよ」と声をかけてくれる。
背中に添えられた手と優しい声に、ほっと息を吐いた。
「……レンは?」
「キッチンにいるよ。チヒロが起きたときにすぐ食べれるようにって、何か作ってる」
そう言われれば、夕飯食ってないな……。
俺の気持ちと連動するように、腹の虫がグーと鳴った。
トモヤはクスクスと笑っている。
「立てる? 向こうに行けそう?」
「……行く。腹減った」
布団から出て立ち上がり、俺とトモヤはリビングへ向かった。
**
「レン。腹減ったぁ~」
リビングに入るや否や、俺は声をあげた。
いい匂いがする。
お腹の虫がぐーぐーと更に鳴った。
キッチンからレンが顔を出す。
「……起きたか……ん? チヒロ、ちょっと待て。お前、食べる前に風呂入れ」
「ええ~……なんで、俺めちゃくちゃ腹減ってるのに~」
「トモヤ、連れていけ」
「……わかったよ。ほら、チヒロ行くよ」
「何だよ~……拷問かよぉ」
トモヤに連れられて、洗面所へ行く。
俺は鏡を見て、レンが風呂へ行けと言った理由をそこで知る。
「……汚ねぇ」
服も顔もぐちゃぐちゃ。そりゃ先に風呂って言うわ。
トモヤが俺の着替えを持ってきてくれると言うので、お言葉に甘えた。
俺は服をポイポイと脱いで、浴室へ入る。
「いてて……」
シャワーの水圧が、口にあたって滲みる。
ピリピリとする痛みに耐えながら、頭を洗い、ゴシゴシと身体を洗った。
身体を洗った。
そしてまた、身体を洗った。
(まだ汚いな……)
俺は洗ったそこを、もう一度洗った。
***
「チヒロ~! 着替え、ここに置いておくよ~!」
チヒロの着替えを持ってきた僕は、そう声をかけた。
シャワーの音で聞こえないのか、返事がない。
「チヒロ~!」
僕はもう一度声をかけた。
またしても返事がない。
浴室のドアをコンコンと叩いてもう一度「チヒロ」と声をかける。
「……チヒロ。開けるよ?」
そう言って僕はドアを開けた。
チヒロは一心不乱になって、顔や首、胸をゴシゴシと擦っている。
僕は濡れるのも構わずに、中に入り、シャワーを止め、チヒロの腕をそっと掴んだ。
「チヒロ。どうしたの?」
「あ……トモヤ……汚れ、汚れが、取れなくて」
「汚れが取れないの?」
「うん。何でだろ……綺麗になった気がしないんだ」
「そっか。じゃあ、僕が確認するよ。一回、流してもいい?」
コクンと頷くチヒロ。シャワーをかけて、身体の泡を全部落とした。
頬と首、胸を中心に擦り上げすぎたのだろう。
皮膚が真っ赤になっている。
首回り、胸の辺りには、雪森がやったと思われるキスマークが至るところに散っていた。
「汚れてない。大丈夫だよ」
「で、でも」
鏡に映る自分の姿に、雪森の痕跡があることが気になって仕方ないらしい。
僕はそっとチヒロを抱きしめた。
「チヒロ……ねぇ、今、僕が怖い?」
「え? 怖くないよ?」
「抱きしめられても、嫌じゃない? 本当に?」
「う、うん」
チヒロの身体は震えもしないし、顔色も悪くなってない。
言葉の通り、怖がったり、嫌悪の感情はないようだ。
だったら、大丈夫……だろうか?
そう思った僕は口を開く。
「──それなら、おいで。僕が消してあげる」
「う……」
真っ白な世界から、色のついた世界へと変わった。
パチパチとまばたきをして、自分が今まで寝ていたのだと知る。
むくりと起き上がると、そこはレンの家で、俺が借りている部屋だった。
「あれ……?」
いつここに来たんだっけ?
俺、あっちのマンションにいたんじゃなかった?
記憶が曖昧だ。えーっと……。
考え事をしていると、小さくコンコンと音がして、部屋のドアが開いた。
「あ、チヒロ。起きた?」
そう言って顔を出したのはトモヤ。手にはタオルが握られている。
「トモヤ……?」
「気分はどう? 気持ち悪いとかない?」
トモヤが手にしていたのは濡れタオルで、少しひんやりしていた。
俺の頬が少し腫れているから、冷やすために持ってきたらしい。
「あれ? ここ、レンの家……だよな? なんでトモヤがここに?」
「チヒロが心配で僕もついて来ちゃった」
いつものニコニコしたトモヤに見えるが、今日はちょっと眉が下がっている。
冷たいタオルを頬に当て、トモヤと会話をすることで、少しずつ頭がはっきりしてきた。
そうだった。俺、雪森に──
ブルッと身体が震える。思い、出した。
俺の顔色の変化に気づいたトモヤが、背中をさすって「もう大丈夫だよ」と声をかけてくれる。
背中に添えられた手と優しい声に、ほっと息を吐いた。
「……レンは?」
「キッチンにいるよ。チヒロが起きたときにすぐ食べれるようにって、何か作ってる」
そう言われれば、夕飯食ってないな……。
俺の気持ちと連動するように、腹の虫がグーと鳴った。
トモヤはクスクスと笑っている。
「立てる? 向こうに行けそう?」
「……行く。腹減った」
布団から出て立ち上がり、俺とトモヤはリビングへ向かった。
**
「レン。腹減ったぁ~」
リビングに入るや否や、俺は声をあげた。
いい匂いがする。
お腹の虫がぐーぐーと更に鳴った。
キッチンからレンが顔を出す。
「……起きたか……ん? チヒロ、ちょっと待て。お前、食べる前に風呂入れ」
「ええ~……なんで、俺めちゃくちゃ腹減ってるのに~」
「トモヤ、連れていけ」
「……わかったよ。ほら、チヒロ行くよ」
「何だよ~……拷問かよぉ」
トモヤに連れられて、洗面所へ行く。
俺は鏡を見て、レンが風呂へ行けと言った理由をそこで知る。
「……汚ねぇ」
服も顔もぐちゃぐちゃ。そりゃ先に風呂って言うわ。
トモヤが俺の着替えを持ってきてくれると言うので、お言葉に甘えた。
俺は服をポイポイと脱いで、浴室へ入る。
「いてて……」
シャワーの水圧が、口にあたって滲みる。
ピリピリとする痛みに耐えながら、頭を洗い、ゴシゴシと身体を洗った。
身体を洗った。
そしてまた、身体を洗った。
(まだ汚いな……)
俺は洗ったそこを、もう一度洗った。
***
「チヒロ~! 着替え、ここに置いておくよ~!」
チヒロの着替えを持ってきた僕は、そう声をかけた。
シャワーの音で聞こえないのか、返事がない。
「チヒロ~!」
僕はもう一度声をかけた。
またしても返事がない。
浴室のドアをコンコンと叩いてもう一度「チヒロ」と声をかける。
「……チヒロ。開けるよ?」
そう言って僕はドアを開けた。
チヒロは一心不乱になって、顔や首、胸をゴシゴシと擦っている。
僕は濡れるのも構わずに、中に入り、シャワーを止め、チヒロの腕をそっと掴んだ。
「チヒロ。どうしたの?」
「あ……トモヤ……汚れ、汚れが、取れなくて」
「汚れが取れないの?」
「うん。何でだろ……綺麗になった気がしないんだ」
「そっか。じゃあ、僕が確認するよ。一回、流してもいい?」
コクンと頷くチヒロ。シャワーをかけて、身体の泡を全部落とした。
頬と首、胸を中心に擦り上げすぎたのだろう。
皮膚が真っ赤になっている。
首回り、胸の辺りには、雪森がやったと思われるキスマークが至るところに散っていた。
「汚れてない。大丈夫だよ」
「で、でも」
鏡に映る自分の姿に、雪森の痕跡があることが気になって仕方ないらしい。
僕はそっとチヒロを抱きしめた。
「チヒロ……ねぇ、今、僕が怖い?」
「え? 怖くないよ?」
「抱きしめられても、嫌じゃない? 本当に?」
「う、うん」
チヒロの身体は震えもしないし、顔色も悪くなってない。
言葉の通り、怖がったり、嫌悪の感情はないようだ。
だったら、大丈夫……だろうか?
そう思った僕は口を開く。
「──それなら、おいで。僕が消してあげる」
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